オレンジ法律事務所の弁護士が,法律に関する情報を紹介しています。

ソフトウェアメンテナンス契約が準委任に近い性質を有していたが黙示の合意により請負に近いものに変更された事例(東京地裁平成20年4月25日判決)

1 本件は,原告が,被告に対し,営業管理システムやソフトウェア・メンテナンス作業に係る当事者間の契約に基づき,業務の報酬を請求する事案である。  被告は,①本件個別契約は請負契約であるところ,被告による検収は未了であって,仕事は未完成であるから,報酬請求権は発生していない,②個別の業務をみても,そもそも発注していないもの(契約不存在型),業務の内容が不明であるもの(内容不明型),原告会社による見積金額を超過して請求がされているもの(見積金額超過型),二重請求がされているもの(二重請求型),そもそも発注にかかる仕事が完成していないもの(仕事未完成型),原告会社の仕事に瑕疵があるため,修補としてされたもの(瑕疵担保責任型)があるため,報酬請求権は認められない等と主張した。これに対し,原告は,①本

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弁護士による契約書の作成とチェックの仕方

                                  広報・営業 土肥  契約書を作成したり,チェックするのが,弁護士の大きな仕事の1つだと知っていましたか? 今回は,辻本先生にかなり細かく説明を受けながら,というより,難しいところは,辻本先生に書いてもらいました。契約書の作成とチェックについて書きたいと思います。 オレンジはどのような契約書が得意?  オレンジ法律事務所で,最近取り扱った契約書をざっと調べてみました。 契約書のタイトルを見ながら書いておりますが,膨大な種類の契約書があるということがわかります(私が見ている限りで,数多く契約書を作ったりしているものを太字にしました)。 ・アセットマネジメント契約・イメージキャラクター使用契約書・コンテンツ使用許諾契約書・システム

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弁護士が書く埼玉の中小企業のための秘密保持契約

1 秘密保持契約とは2 秘密保持契約の効果3 注意すべきポイント ①秘密保持の対象となる情報の特定 ②秘密情報の取扱・管理 ③知的財産権4 さいごに5 参考ひな形 弁護士 尾形 駿 1 秘密保持契約とは  情報社会とも評される現代では,企業の経営資源である人・モノ・金・情報のうち,情報の重要性は高まってきたことから,より一層情報の管理に力を入れる中小企業も増えてきた印象を抱く。そして,情報管理の一環として,企業は,従業員や取引先と秘密保持契約を締結することがある。 秘密保持契約とは,英語でNon-disclosure agreementと表記し,略して,NDA呼ばれることも多い。その名称からも分かるとおり,企業の秘密情報が第三者に外部漏洩したりすることを防ぐことを目的とした契約である。 弊所

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化合物をヒト結膜肥満細胞安定化の用途に適用する薬剤に関する特許発明に関して発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとした事例(最高裁三小令元年8月27日判決)

弁護士 辻本恵太 1 本件は,被上告人Yが,ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤に係る本件特許(特許第3068858号)につき,その特許権を共有する上告人Xらを被請求人として特許無効審判を請求したところ,同請求は成り立たない旨の審決を受けたため,同審決の取消しを求めた事案である。本件特許に係る発明の進歩性の有無に関し,当該発明が予測できない顕著な効果を有するか否かが争われた。  本件特許は,発明の名称を「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物」とし,ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤として,公知のオキセピン誘導体である本件化合物を,ヒト結膜肥満細胞安定化(ヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制)の用途に適用する薬

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刀剣の引渡請求訴訟において自白の撤回の可否が認められて時機に遅れた攻撃防御方法とはいえないとした事案(山形地裁令和元年8月6日判決)

主文事実及び理由第1 請求第2 事案の概要第3 当裁判所の判断第4 結論 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,いずれも重要文化財に指定されており,X告の評価によるといずれについても,少なくとも1振り8000万円程度の価値がある3振りの刀剣を所有していたと主張するXが,盗難にあった本件各刀剣を買い取ったYがこれを占有しているとして,Yに対し,所有権に基づき,本件各刀剣の引渡し及びその執行不能に備えた代償金の支払を求めると共に,Yが本件訴訟において本件各刀剣を占有している旨の自白を撤回したのは違法行為であるとして,不法行為による損害賠償請求をした事案である。 2 Yは,本件訴訟で,本件各刀剣を所有していたこと及び本件各刀剣を占有していることを認めていたことを認めていたが

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違法な仮差押命令申立てと債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなかったことにより喪失したと主張する逸失利益の損害との間に相当因果関係がないとされた事例(最高裁平成31年3月7日判決)

主文理由 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,上告人Xが,被上告人Yに対し,売買契約に基づき代金2813万8940円及び遅延損害金の支払等を求めるものであり,Yは,Xによる債権の仮差押命令の申立てがYに対する不法行為に当たるとし,これによる損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張するなどして,Xの本訴請求を争った事案である。 (1)上告までの経緯については,判決記載の通りであるが,Yは,日用品雑貨の輸出入及び販売等を目的とする株式会社であり,平成22年から平成27年までの年間売上高が26億円から57億円程度であり,同年9月当時,現金,預金債権及び売掛金債権だけでも16億円余りの資産を有しており,複数の大手百貨店との間で取引を行っていた。 Xは,Yに対し,印刷物等

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いわゆる機械学習を利用して生成されたアルゴリズムを適用して,入力された取引内容に対応する勘定科目を推測している会計処理製品が,発明の名称を「会計処理装置,計処理方法及び会計処理プログラム」とする特許権を侵害しないとした判例(東京地裁平成29年7月27日判決)

主文事実及び理由第1 請求第2 事案の概要第3 当裁判所の判断 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,発明の名称を「会計処理装置,会計処理方法及び会計処理プログラム」とする発明についての特許権を有するXが,Y製品の生産等,Y方法の使用が同特許権を侵害していると主張して,Yに対し,特許法100条1項及び2項に基づき,Yによる上記各行為の差止め及び被告製品の廃棄を求めた事案である。 2 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1,10,13及び14記載の各発明を「本件発明1」,「本件発明10」,「本件発明13」,「本件発明14」といい,これらを総称して「本件発明」という。  なお,本件発明13を構成要件に分説すると,次のとおりである。  13A ウェブサーバが提供するクラウド

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契約書に訴訟についての管轄合意しかない場合に調停についての管轄合意があったと解釈されないとされた事例(大阪地裁平成29年9月29日決定)

オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 基本事件は,X(相手方・基本事件申立人)が,Y(抗告人・基本事件相手方)との間でレンタル基本契約を締結した上,Yに対し建設機械等を貸し渡すなどしたにもかかわらず,Yが賃貸料等を支払わないとして,その支払を求めるというものである。  レンタル基本契約の契約書には,「合意管轄等」として,「この契約について訴訟の必要が生じたときは,大阪地方裁判所又は茨木簡易裁判所を管轄裁判所とすることに合意します。」との条項があるところ,Xは,本件条項における「訴訟」には「調停」も含まれるとして,茨木簡易裁判所に対し,調停を申し立てた。  これに対し,Yは,本件条項は,飽くまで,訴訟に関する管轄合意であって,調停に関する管轄合意ではないとして,基本事件の大津簡

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ある表示が商品の不正競争防止法の品質誤認表示といえるためには,その前提として,需要者の間において,当該表示が商品の品質や内容を示す表示であると一般に認識されることが必要であるとし,品質誤認表示該当性を否定した事例(大阪地裁平成29年3月16日判決)

主文事案及び理由第1 請求第2 事案の概要第3 争点に関する当事者の主張第4 当裁判所の判断 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,XがYに対し,Yがかばん,小物入れ(ポーチ)の帆布製品に「工楽松右衛門」及び「帆工楽松右衛門」の表示を付した商品(Y商品)を販売あるいは販売のために展示し,その説明書に「工楽松右衛門帆布」の表示を,その広告に同表示及び「工楽松右衛門帆布本店」の表示を用いているところ,これらのYの各表示が,Y商品の品質,内容及び製造方法を表示するものであって,不正競争(品質誤認表示)に該当するとして,Yの各表示の表示行為,並びにY商品の販売及び販売のための展示の差止め,Y商品等からのYの各表示の抹消,謝罪広告を新聞に一回掲載すること,不法行為に基づく損害賠

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特許法102条2項の推定覆滅について,製品に対する特許発明の実施部分の割合に基づく覆滅率を25%,その他の観点からの覆滅率を25%として損害賠償を認めた事例(東京地裁平成30年3月1日判決)

主文事実及び理由第1 請求第2 事案の概要第3 当裁判所の判断 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,発明の名称をいずれも「ブルニアンリンク作成デバイスおよびキット」とする2件の特許権を有するXが,①Y1おいて,Y製品を輸入し,販売し,販売のために展示し,又は販売の申出をした行為,②Y2において,Yの各製品を輸入し又は販売した行為が,いずれもXの上記各特許権を侵害していた旨主張して,不法行為に基づく損害賠償等を請求をした事案である。  なお,Yの各製品が特許権2に係る特許発明の技術的範囲に属すること,特許権2に係る特許が有効であることは当事者間に争いがなく,主たる争点は,Xの損害額である。 2 裁判所は,対象期間におけるY1,Y2の限界利益額を認定したうえで,Y製品全

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