ソフトウェアメンテナンス契約が準委任に近い性質を有していたが黙示の合意により請負に近いものに変更された事例(東京地裁平成20年4月25日判決)

1 本件は,原告が,被告に対し,営業管理システムやソフトウェア・メンテナンス作業に係る当事者間の契約に基づき,業務の報酬を請求する事案である。
 被告は,①本件個別契約は請負契約であるところ,被告による検収は未了であって,仕事は未完成であるから,報酬請求権は発生していない,②個別の業務をみても,そもそも発注していないもの(契約不存在型),業務の内容が不明であるもの(内容不明型),原告会社による見積金額を超過して請求がされているもの(見積金額超過型),二重請求がされているもの(二重請求型),そもそも発注にかかる仕事が完成していないもの(仕事未完成型),原告会社の仕事に瑕疵があるため,修補としてされたもの(瑕疵担保責任型)があるため,報酬請求権は認められない等と主張した。これに対し,原告は,①本件個別契約は準委任契約であり,かつ,②本件個別契約に基づく人員配置及び報酬の定め方について,平成19年3月22日,当事者間で合意内容の変更がされおり,③本件で原告会社がした業務内容は適正であり,被告が主張するような事由は認められないと主張した。

2 裁判所は,作業内容として,基本的にはソフトウェアのメンテナンス作業としており,仕事の内容を定めるのではなく,作業時間を定め,報酬を請負内容(作業時間のみならず,作業の難易度,要求されるスキルによって左右される。)によって定めるのではなく,稼働時間によって定めていたこと,作業について被告に原告会社社員が常駐させられ,被告の完全な指揮命令下に置かれ,作業において原告会社の裁量が認められなかったこと,請負であれば,当該月の作業内容・時間が大きく変動することが予想されるのに,月額メンテナンス料を299万2500円(消費税別)と定めていたこと,作業の有無にかかわらず月額メンテナンス料を支払うとされていたなどを理由に本件個別契約は,本来は準委任契約に近い性質を有していたものとみるのが相当であると判断した。
 他方,本件個別契約の契約書の作業内容には,本来,請負として把握するのが相当である「ソフトウェアの軽微な改変又は機能追加」が含まれていて,顧客が使用するには多くの開発が必要となっており,必ずしも軽微とはいえない改変又は機能追加も本件個別契約に基づいて行われていたと認められ,また,報酬支払いの前提として被告による「検収」を定めていること,実績工数を大きく下回る請求工数となることが常態化していたことなど理由に,その後の運用の実態において,本件個別契約の実質は請負に近いものとなっており,当事者間の黙示の合意により契約内容が変更されたものとみるほかないと判断した。

3 さらに,裁判所は,平成19年3月以降は,①の本件固定額合意は,もともと被告が作業の有無にかかわらず月額メンテナンス料を支払うとされていたことからすれば,当初の合意内容を一部復活させたものにすぎず,原告会社がしてきた業務のうち,請負的な部分を除き,かつ,原告会社が慢性的に赤字とならないような最低補償額として合意されたものとみられ,結果として,本件個別契約は,請負契約とも準委任契約とも割り切ることができない契約関係となったと認められると判示した。
 また,原告会社が見積工数を超えて作業した場合の取扱いについては,社会通念によってこれを決するほかなく,見積もりに応じて発注がされている以上,見積工数を超過する請求工数は原則として認められないと解すべきであるが,超過するに至った原因が被告による追加的な指示に起因するときは被告が負担すべきであると判断した。
 これらをふまえて,裁判所は,報酬請求の一部の支払いを認めた。

4 本判決は,ソフトウェアのメンテナンス契約が準委任契約か請負契約かが争われた事案であり,各契約条項の解釈を中心に当初の契約が準委任契約に近い性格としつつも,その後の運用の実態にかんがみて,黙示の合意により実質が請負契約に近いものに契約内容が変更されたとしたものであり,さらに,平成19年3月以降にした合意により,請負契約とも準委任契約とも割り切ることができない契約関係になったとしたものである。
 ソフトウェアのメンテナンス契約といっても,実際には,メンテナンス作業,カスタマイズ作業,軽微な改変又は機能追加作業,それを超えた開発業務が明確に区別されることなく行われる現状があり,かかる場合に,請負と準委任の本質をふまえていずれとも割り切ることができない契約関係であるとした点において,実務上,参考になる。

弁護士 辻本恵太

主文
事実及び理由
第1 請求
第2 事実の概要
第3 当裁判所の判断

主文

 1 被告は,原告に対し,305万4790円及びうち6640円に対しては平成20年3月1日から,うち70万9275円に対しては同年4月1日から,うち233万8875円に対しては同年5月1日から各支払済みまで年8.25パーセントの割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
 4 この判決は,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求

 被告は,原告に対し,626万5435円及びうち6640円に対する平成20年3月1日から,うち391万9920円に対する同年4月1日から,うち233万8875円に対する同年5月1日から,それぞれ支払済みに至るまで年8.25パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 本件は,原告が,被告に対し,営業管理システムやソフトウェア・メンテナンス作業に係る当事者間の契約に基づき,業務の報酬を請求する事案である。
 1 前提事実
 以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠により容易に認められる事実である。
  (1) 当事者
   ア 承継前原告株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・システムズ(以下「原告会社」という。)は,情報処理システムの販売,開発及び保守の受託等を行う株式会社であり,株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下「NTTデータ」という。)の子会社である。
 原告会社は,平成23年4月1日に原告と合併して解散した。
   イ 被告は,文具,事務用品等のオフィス用品全般の通信販売(無店舗販売)をしており,カタログやウェブサイトに商品を掲載し,インターネットやファックスで顧客から注文を受け,顧客に直接商品を届ける営業をしている。
  (2) 被告とNTTデータは,平成13年3月1日,被告がNTTデータに対して営業管理システム(NTTデータの営業管理システムであるSCAW営業管理SSS Ver 1を利用した受注及び発送等を一括管理するシステムである。以下「SCAW」という。)及びカスタマイズソフトウェアの開発やソフトウェア・メンテナンス作業を委託することを内容とする基本契約である「システム開発委託基本契約書」を締結した(以下「本件基本契約」という。)。(甲1,乙58)
 被告とNTTデータは,同日,SCAWの基本部分について,運用サポート契約を締結した。(甲24。なお,日付が「平成12年」となっているのは誤記と認められる。)また,NTTデータは,SCAWの基本部分をベースとして,被告独自のカスタマイズを行ってソフトウェアを開発し(以下,これを「被告カスタマイズ部分」という。),遅くとも平成13年4月1日までに引き渡した。(弁論の全趣旨)
  (3) 被告とNTTデータは,同年4月1日,本件基本契約に基づく個別契約として,下記内容の「個別契約書(ソフトウェア・メンテナンス)」を締結した(以下「本件個別契約」という。)。(甲2)
   記
   ア 作業内容―第2条
 ①障害の切り分け及び原因分析
 ②ソフトウェアに関する技術的な相談
 ③ソフトウェアの修補
 ④ソフトウェアの軽微な変更又は機能追加
 ⑤ソフトウェアに関するファイルの拡張,縮小又は修補
 ⑥ソフトウェアに関するテーブルの変更又は修補
   イ メンテナンス時間帯―第4条
 月曜日から金曜日まで,午前9時から午後5時30分
   ウ 稼働時間及びメンテナンス料―第8条
 月額メンテナンス料 299万2500円(消費税別)
 月の稼働時間 19日×7.5時間×3人
 被告は,「作業の有無にかかわらず」(第2条(5)項),月額メンテナンス料を支払う。
 NTTデータが上記メンテナンス時間帯以外にメンテナンスを行った場合,または,上記メンテナンス範囲を超えてメンテナンスを行った場合,被告は,上記月額メンテナンス料に,「別途定める単金」に当月の当該メンテナンスに要した時間及び技術者の数を乗ずることにより算出される額を加算した額をメンテナンス料として支払う。
   エ 交通費・支払期日―第10条
 被告は,当月分のメンテナンス料,交通費及びその消費税相当額を,翌月末日までに支払う。
   オ 遅延損害金―第11条 年利8.25%
   カ 契約期間―第18条
 平成13年4月1日から平成15年3月31日まで
 ただし,期間満了の1ヶ月前までに被告又はNTTデータから別段の意思表示がないときは期間満了日の翌日からさらに1年間有効に存続するものとし,以後もまた同様とする。
  (4) NTTデータと原告会社は,平成14年10月1日,本件基本契約,運用サポート契約及び本件個別契約上のNTTデータの契約上の地位を原告会社に移転させることで合意し,被告は,これを承諾した。(甲3,24)
  (5) 原告会社と被告は,平成15年4月1日,「ソフトウェア・メンテナンス契約の変更に関する覚書」を交わし,①,本件個別契約第2条1項(メンテナンス内容)に,「(7) 引渡完了日から起算して1年以上経過したソフトウェアの障害の修補。ただし,甲への重大な影響を与える障害の修補は除きます。甲へ重大な影響を与えるとの判断は,原則として,甲が当該障害について運用で対処することが可能かどうかで判断することとし,別途甲乙協議のうえ,決定することとします。」(以下「本件追加条項」という。)を加え,②本件個別契約第8条第2項の「別途定める単金」を,1人1時間当たり7000円(消費税別)とすることで合意した。(甲4)
  (6) 原告は,被告に対し,本件個別契約に基づく平成20年1月から同年3月分の報酬として,以下の請求をしている。
   ア 平成20年1月分(以下「本件1月分請求」という。) 

作業項目作業時間時間単金合計金額
各種問い合わせ対応(税抜)301人時7000円2,107,000円
五反田メンバー稼働(税抜)39人時7000円273,000円
保守月額メンテナンス料合計(税込)340人時2,499,000円
旅費(税込)29,880円
総計(税込)2,528,880円

 

   イ 同年2月分(以下「本件2月分請求」という。)

作業項目作業時間時間単金合計金額
各種問い合わせ対応(税抜)712.5人時7000円4,987,500円
五反田メンバー稼働(税抜)60人時7000円420,000円
保守月額メンテナンス料合計(税込)772.5人時5,677,875円
旅費(税込)31,770円
総計(税込)5,709,645円


   ウ 同年3月分(以下「本件3月分請求」という。)

作業項目作業時間時間単金合計金額
各種問い合わせ対応(税抜)300人時7000円2,100,000円
五反田メンバー稼働(税抜)40人時7000円280,000円
保守月額メンテナンス料合計(税込)340人時2,499,000円
旅費(税込)0円
総計(税込)2,499,000円

  (7) 原告による上記各請求に対し,被告は,平成20年1月分については252万2240円,同年2月分については178万9725円,同年3月分については16万0125円をそれぞれ支払った(別途,運用サポート契約に基づく保守料金は,すべて支払われており,本件では請求されていない。)が,その余の支払いを拒絶している。
  (8) 原告会社は,平成20年2月22日,被告に対し,同年3月31日をもって本件個別契約を終了する旨を通知した。
 2 争点及びこれに対する当事者の主張
 本件で,被告は,①本件個別契約は請負契約であるところ,被告による検収は未了であって,仕事は未完成であるから,報酬請求権は発生していない,②個別の業務をみても,そもそも発注していないもの(契約不存在型),業務の内容が不明であるもの(内容不明型),原告会社による見積金額を超過して請求がされているもの(見積金額超過型),二重請求がされているもの(二重請求型),そもそも発注にかかる仕事が完成していないもの(仕事未完成型),原告会社の仕事に瑕疵があるため,修補としてされたもの(瑕疵担保責任型)があるため,報酬請求権は認められない,五反田稼働として請求されているが,作業の実態がない等と主張する。これに対し,原告は,①本件個別契約は準委任契約であり,かつ,②本件個別契約に基づく人員配置及び報酬の定め方について,平成19年3月22日,当事者間で合意内容の変更がされおり,③本件で原告会社がした業務内容は適正であり,被告が主張するような事由は認められないと主張する。
  (1) 本件個別契約は準委任契約か請負契約か(争点①)
   ア 原告
 本件個別契約は準委任契約であり,仕事の完成は報酬請求権発生の要件ではない。なお,仮に,本件個別契約が請負契約の性質を有するとしても,報酬の定めについては,後記のとおり,「月々の最低補償額(2人月分)に,超過稼働工数に単価を乗じた金額を加算して算定する」という合意がある。
 (ア) 原告会社が受託する業務内容について,本件個別契約の契約書(甲2)では,「ソフトウェアのメンテナンス」とされ(第1条),作業内容も抽象的に列挙されているのみであって(第2条),特定の仕事の完成義務を定めた条項はなく,他方で,「メンテナンス時間帯等」(第4条)の指定があり,請負人がその裁量により仕事を進める請負契約の性質と異なる規定がされている。
 (イ) 本件個別契約の契約書(甲2)の第8条は,前記のとおり,原告会社従業員の稼働時間によって業務委託料が支払われることが定められており,これは,業務委託料が何らかの仕事の完成に対して支払われるものではないことを示している。
 (ウ) 原告会社がSES契約への変更を求めたからといって,本件個別契約が請負契約であったことにはならない。
 一般に,システム・エンジニアリング・サービス契約(以下「SES契約」という。)とは,特定のシステム・エンジニア(以下「SE」という。)を顧客の下に常駐させて開発作業等に従事させ,その作業時間等に応じて料金を課金する契約形態で,当該SEに対する指揮命令や労務管理等の権限の所在によって,準委任契約又は労働者派遣契約に分類される。これに対し,本件個別契約は,不特定のSEを被告の下で稼働させ,その作業時間に応じて(月額料金については作業の発生・不発生にかかわらず)料金を支払う契約形態である。
 そして,本件においては,被告の常務取締役であるC(以下「C常務」という。)が,原告会社の特定のSEを指名した上で,当該SEが被告に常駐することを強く要求し,原告会社がそれを拒絶できず,被告に原告会社のSEが常駐していたことから,実態としてSES契約となっていた。そこで,原告会社は,被告に対し,本件個別契約を労働者派遣型のSES契約に変更することを求めたのである。
 また,被告は,乙6の1ないし3を根拠として本件個別契約が請負契約であったとするが,この書面は,法律をよく知らない担当者が作業の指揮命令権のみに着目して作成したものにすぎず,これをもって本件個別契約を請負契約とみることはできない。
 (エ) 本件個別契約において行われていた「検収」とは,原告会社が被告に対して毎月提出する「作業実施報告書」の内容を被告が確認することを指しているにすぎない。
   イ 被告
 本件個別契約は請負契約であり,仕事の完成が報酬請求権発生の要件となる。
 (ア) 原告会社は,被告に対し,原告会社作成の平成16年10月26日付けの「今後の体制等について」と題する書面(乙1)において,「勤務条件や,御社にとってのSE的な役割として常駐をするのであれば,SES契約でのご契約をお願いしたいと存じます。」と申し入れ,本件個別契約がSES契約でないことを認めていた。
 (イ) 原告会社は,平成16年11月5日,被告に対し,「契約形態に関するご説明資料」(乙6の3)を交付した上で,「現状」として,「①形式的には請負であるが,実態はお客様の指揮命令下にある。」,「④現状の契約は請負でありますが,請負契約の主旨と実態が異なっている。」と説明し(乙6の2),本件個別契約が請負契約であることを前提としてSES契約に変更することを提案した。
 (ウ) 原告会社は,原告会社作成の平成16年11月25日付けの「フォーレスト様折衝議事録」(乙2)において,「■今回の打合せでの結論4.SES契約への契約変更について -SES契約への変更は了解頂けず。-納品物に対する完成責任を,フォーレスト様が負うことは出来ない。(D専務)」と記載しており,本件個別契約が請負契約であることを前提として,それをSES契約に変更しようと被告と折衝したが,被告の同意が得られなかったとしている。
 (エ) 原告会社は,平成19年3月22日付け「議事録」(甲5)において,「・現行の保守契約形態の運用を考えると,派遣契約か,SES契約でお願いしたい(E社長)」,「派遣契約はNG。F社では,PKGの責任が負えない。またドキュメント・ソースもなく不可。(C様)」と記載しており,本件個別契約が請負契約であることを前提として,その変更の可否について協議している。
 (オ) 被告は,原告会社による作業結果について,検収(納入品が要求した仕様に合致しているかの検査)を行っていたが,これは本件個別契約が請負契約であることを示している。
 これは「作業実施報告書」の単なる確認ではなく,例えば,平成19年3月30日付の原告会社のF部長からの「実請求工数は,646.0Hとなっております。」となっていたのが,検収書類のやりとりの結果,「不具合対処」等を理由として,621.5人時に請求工数が減らされるなどしており(乙9,10),実質的にも検収であった。
 また,原告会社が開発したソフトウェアを納入しても,被告がそれをリリースしない場合には,原告会社は稼働時間分の請求をしていないのであって(甲8,乙13の3),稼働時間に対してメンテナンス料が支払われるという形にはなっていない。
 (カ) 原告は,当事者間では何を仕事の完成とするかに係る合意はないとするが,原告会社が提供するSCAWシステムについて,例えば,「カード決済・カード売上請求機能」を組み込む機能の開発(乙7),「ホテル・旅館業者という限定的な顧客に対する業務用品の販売」のために,「これらの限定的な顧客からだけ注文を受ける機能」を組み込む機能の開発(乙8)として,特定の機能を明示して開発を発注しており,何を仕事の完成とするかについて合意があった。
  (2) 人員配置及びメンテナンス料についての変更合意の内容(争点②)
   ア 原告
 (ア) 原告会社の当時の代表取締役であるEは,平成19年3月22日,被告のC常務に対し,作業量にかかわらず毎月2人分のメンテナンス料を最低限支払うように求め,原告会社と被告は,本件個別契約の月額メンテナンス料を,下記のとおり,変更することで合意した。この合意は,本件個別契約の性質いかんによらず,したがって,仕事の完成の有無と関わりなく,報酬額が定めたものとみるべきである。
   記
 2人月(340時間)=7000円×340時間
 =238万円(消費税別)
 基本保守料金は,作業が340時間/月に満たない場合も上記固定額とする(以下「本件固定額合意」という。)。仮に保守作業が340時間/月を超過した場合は,上記固定額に超過時間分(1人1時間あたり7000円)を加算する。
 なお,被告は本件固定額合意はなかったとし,過去の支払実績を根拠とするが,それはC常務からの不当な値引き要求があり,原告会社としては,支払いを受けるためにやむを得ず被告が認める金額を記載して請求していただけであるし,本件固定額合意が成立した平成19年3月22日以降の支払実績についてみれば,340人時,238万円(税別)の支払がされてきている。
 (イ) 被告の主張する合意はなかった。被告のウェブシステムが半日間停止したことは認めるが,原告会社のミスに起因するものではないし,合意内容を左右するものではない。
   イ 被告
 (ア) 同日のやりとりは,被告が発注した管理システムの開発体制を2人にして良いとの合意ではなく,あくまでも,開発体制は3人(必ずしも3人常駐でなくともよいが,仕事の完成に必要がある場合には3人体制で臨むという趣旨である。)を前提としつつ,被告からの発注の仕事量を2人月分(340時間分の作業)とすることで合意したものである(以下「本件3人体制の合意」という。)。また,原告会社と被告の間の覚書(乙4)には,システムエンジニアの変更には被告の承諾を要することとされていた(以下「本件覚書3条」という。)。
 また,原告は,本件固定額合意があったとするが,否認する。原告会社による請求の実績(乙5の1ないし26)では,固定額の請求をしてこなかったのであり,上記の合意がなかったことは明らかである。
 (イ) 原告会社は,本件3人体制の合意をしたにもかかわらず,平成20年2月1日から,開発体制を3人体制から2人体制に一方的に変えてしまった。これは本件3人体制の合意に反するとともに,本件覚書3条に違反するから,債務不履行である。現に,この債務不履行により,同月11日,原告会社のミスによって被告のウェブシステムが半日間停止してしまい,受注当日に出荷し,顧客に届けることができなくなった。
  (3) 原告会社による平成20年1月から3月までに行った業務の内容に未完成等の支払拒絶事由があるか(争点③)
   ア 被告
 (ア) 見積金額超過型(管理番号:3122,3130,3066,3075)
 被告は原告会社の見積工数を前提として発注しているのであるから,見積工数を上回る請求については支払義務を負わない。すなわち,見積工数は,管理番号3122は14時間,管理番号3130は30時間,管理番号3066は121時間,管理番号3075は79時間であったのに,請求工数は,管理番号3122については27.5時間,管理番号3130は75.5時間,管理番号3066は151時間,管理番号3075は248.5時間であり,上記各見積工数を上回る部分については支払義務がない。
 (イ) 契約不存在型(管理番号:3103,3162,3197,3205,3207,3209,3212,3214)
 これらについては,そもそも業務を発注していない。
 管理番号3197,3205,3207,3209,3212の「設計図書を最新の状態に保つ作業」は,原告会社が請負契約を履行するために必要不可欠な前提作業ないし準備作業であって,被告は発注しておらず,原告会社もそれまでこの対価を請求したことはなかった。
 (ウ) 瑕疵担保責任型(管理番号:3160,3167,3168,3152,3183,3195,3210,3211)
 本件追加条項の趣旨は,①引渡完了日から起算して1年未満に生じたソフトウェアの障害の修補は,原告会社が無償で行う,②引渡完了日から起算して1年以上経過して生じたソフトウェアの障害の修補は,原告会社が有償で行う,③引渡完了日から起算して1年以上経過して生じたソフトウェアの障害でも,被告に重大な影響を与える障害の修補は,原告会社が無償で行うというものであった。
 管理番号3210の障害は,被告にSCAWシステムが納入されて以来存在するものであり,未だに解決できないでいた瑕疵への対応であるから,無償で行うべきである。
 管理番号3160,3167,3168,3183,3195,3211の障害は,引渡完了日から起算して1年未満に生じたものであるから,原告会社が無償で修補を行うべきである。また,管理番号3183,3195,3211の障害は,被告にとって極めて重大な障害である。
 管理番号3152の障害は,引渡完了日から起算して1年以上経過して生じたソフトウェアの障害であるが,「出荷指示日が正しく表示されない不具合」であるから(甲8),「被告に重大な影響を与える障害」に該当し,原告会社が無償で修補を行うべきである。
 (エ) 仕事未完成型(管理番号:3066,3094)
 3094については,発注内容は,「商品の原価がマイナス表示になる不具合を解消すること」であったのに,これを解消できていないから,仕事は未完成である。
 (オ) 内容不明型(管理番号:3169,3170,3182,3185,3187)
 管理番号3169について,原告会社は,作業報告書(甲8)において,「初期仕様としては問題無かった,もしくは,潜在バグであったものが,今回表面化したものと思われます。」としているが,当該不具合が新たな機能開発をした際に発生したものなのか,既存しシステムに発生した不具合なのか不明である。
 管理番号3170についても,同様に不明である。
 管理番号3182は,本来「ポイント率チェック除外品目」であるべきであったのに,原告会社のミスのため除外品目扱いしていなかった商品を除外品目に加えることである。このミスの発生原因,作業時間,作業内容が不明である。
 管理番号3185,3187は,作業時期や作業内容が不明である。
 (カ) 五反田稼働の「管理稼働」型
 平成20年2月,3月には機能開発や機能追加の作業はなく,管理稼働の余地はない。
 (キ) 五反田稼働の「打合せ」型
 平成20年2月,3月には機能開発や機能追加の作業はなく,そのための打合せもないから,稼働の余地はない。
 (ク) 五反田稼働の「その他」型
 その作業内容が不明である。
   イ 原告
 (ア) 見積金額超過型(管理番号:3122,3130,3066,3075)
 原告会社が見積工数を超えて作業をした場合でも,原告会社は被告に対して超過分を請求しない旨の合意がない限り,見積工数を超過していても請求が認められるべきであり,本件においては,そのような合意はない。本件個別契約では,規定の稼働時間を超える作業については,実績工数に基づき算出された金額を加算することが明確に規定されている(甲2・第8条)。
 また,実績工数が見積を上回ったのは,被告により作業内容が一方的に追加されたからである。
 (イ) 契約不存在型(管理番号:3103,3162,3197,3205,3207,3209,3212,3214)
 作業実施報告書(甲8),残案件状況一覧表(甲9)及び進捗表(甲10)に記載されている案件であって,発注されている。3103については,当事者間のメール(甲26の1,2)がこれを裏付けている。
 また,仮に作業依頼がなかったとしても,商法512条により請求できる。
 「設計図書を最新の状態に保つ作業」に費やした時間が,メンテナンス料の算定の対象から除かれるという合意はない。
 (ウ) 瑕疵担保責任型(管理番号:3160,3167,3168,3152,3183,3195,3210,3211)
  ① いずれもソフトウェアの仕様の変更であって,障害ではない。
  ② 本件追加条項の趣旨に係る原告の主張は否認する。本件追加条項の趣旨は,重大な障害の修補については,本件個別契約とは別枠として料金を含めて協議により決定するとの趣旨である。そして,原告会社と被告との間で,本件追加条項が定める「協議」や「決定」がされたという事実はない。
  ③ 被告が主張する障害は,いずれもソフトウェア(SCAW及び被告カスタマイズ部分)の引渡完了日(平成13年頃)から1年を経過した後に発生している。
 (エ) 仕事未完成型(管理番号:3066,3094)
 本件個別契約は請負契約ではなく,仕事の完成という概念はない。
 なお,被告が問題とする機能については,作業が完了してリリース済みである。
 (オ) 内容不明型(管理番号:3169,3170,3182,3185,3187)
 原告会社から被告に対して交付されていた作業実施報告書(甲8)に明記されており,被告からの作業依頼に基づき作業が行われ,被告にリリースされており,作業内容は明確である。
 (カ) 五反田稼働の「管理稼働」型
 これは個々の管理番号の稼働時間に計上されていない原告会社の部長のマネジメント稼働分であり,機能開発や機能追加の有無にかかわらず,発生するものである。
 (キ) 五反田稼働の「打合せ」型
 毎月の作業明細(甲6ないし8)に記載されているとおり,原告会社社内において,毎週1回各1時間,被告を担当する4人の社員により,メンテナンス作業に関する打合せを実施しており,当該稼働時間が発生している。
 (ク) 五反田稼働の「その他」型
 原告会社の被告に対する報告書の作成及び報告書の内容に関する被告との交渉や折衝に費やした稼働時間である。
  (4) 結論として,被告にメンテナンス料の未払があるか否か(争点④)
   ア 原告
 (ア) 平成20年1月分
 原告会社は,平成20年1月1日から同月末日までの間,本件個別契約に基づき,被告のために226人時(「人時」とは稼働人数と稼働時間数を乗じたものである。)の業務を行い,かつ,2万9880円の旅費を支出した。
 そして,当月分の作業時間が340人時に満たなかったため,原告会社は,当月の作業項目のうち,「各種問い合わせ対応」の作業時間を301人時とし,「五反田メンバー稼働」の39人時と合わせて,全体として前記の固定額である340人時となるように表示した上,本件1月分請求をした。
 (イ) 同年2月分
 原告会社は,平成20年2月1日から同月末日までの間に,本件契約に基づき,被告のために合計772.5人時の業務を行い,かつ3万1770円の旅費を支出したため,被告に対し,本件2月分請求をした。
 (ウ) 同年3月分
 原告会社は,平成20年3月1日から同月末日までの間,本件個別契約に基づき,被告のために303.5人時の業務を行った。
 そして,当月分の作業時間が340人時に満たなかったため,原告会社は,当月の作業項目のうち,「各種問い合わせ対応」の作業時間を300人時とし,「五反田メンバー稼働」の40人時と合わせて,全体として前記の固定額である340人時となるように表示した上,本件3月分請求をした。
 (エ) 被告は,原告の上記各請求に対し,平成20年1月分については252万2240円,同年2月分については178万9725円,同年3月分については16万0125円の合計447万2090円を支払ったが,同年1月分の残金6640円,同年2月分の残金391万9920円,同年3月分の残金233万8875円を支払わない。
   イ 被告
 否認ないし争う。

第3 当裁判所の判断

 1 争点①及び②について
  (1) 前提事実及び証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)によれば,以下の各事実を認めることができる。
   ア 原告会社は,平成16年10月26日,被告に対し,「今後の体制等について」と題する書面において,平成15年度及び平成16年度の被告との取引において赤字となっていること,月の請求工数が430人時を下回った場合には必ず赤字になっていることを告げた上,「勤務条件や,御社にとってのSE的な役割として常駐するのであれば,SES契約でのご契約をお願いしたいと存じます。併せて,単金の値上もお願いいたします。」と通知した(乙1)。
   イ 平成16年11月頃,原告会社のG常務取締役は,被告のD専務取締役及びC常務と今後の保守体制について断続的に協議した。その際,原告会社が作成した資料には,①原告会社に生じている赤字の原因として,被告からの値引き要請により,実工数と請求工数がかけ離れていること,事前のレビューや試験に必要な工数を認めてもらえなかったこと,被告の指示が文書によらなかったため,原告会社とのコミュニケーション不足が生じ,無駄な作業をしていたこと等を挙げており,現状の問題点として,「形式的には請負であるが,実態はお客様の指揮命令下にある。」,「価格(工数)及び作業内容についてのネゴが,常駐者レベルで行われており,価格(工数)の協議が双方納得のレベルになっていない」とし,本件個別契約をSES契約に変えるように提案した。そして,協議の結果,同月5日には,①被告がNTTデータの赤字の補填をする,NTTデータに赤字が出ないような稼働実態にする,②納品に対する完成責任を被告が負うことはできないことから,被告は本件個別契約をSES契約に変更することには応じない,③被告の下で常駐しているNTTデータのシステムエンジニアは2週間に1回は帰社させるという協議結果となった(乙2)。
   ウ 被告の依頼に基づく原告会社によるプログラム開発等は,下記のような流れで行われていた。(乙7,8,14ないし16,18ないし36,証人C,弁論の全趣旨)
   記
 (ア) 依頼から支払までの過程は,①開発検討依頼(被告),②機能仕様書等の作成(原告会社),③見積書作成(原告会社),④開発依頼(被告),⑤プログラムの制作(原告会社),⑥納品(被告のサーバへ納品物の格納),⑦納品物の検査(被告)と被告のシステムへのインストール(原告会社),⑧検収(被告),⑨請求書の発行,⑩支払(被告)というものであった。
 (イ) このうち,⑥ないし⑧の詳細は,原告会社が,完成したプログラムを被告のメインコンピュータの磁気媒体上に基幹システム(SCAW)の変更・追加という形で納品し(⑥。もっとも,原告会社のエンジニアは被告の社内に常駐し,被告の指揮命令下にあった。),ついで,被告において,試験用のサイトを用いて,機能確認試験(端末の画面上で,開発依頼した機能が実現されるか)及びデグレード試験(SCAWにプログラムの追加・変更をしたときに他の部分に不具合が発生しないか)を行い,問題がなければ,原告会社に依頼して被告のメインコンピューター上にインストールし,瑕疵があれば,定例(1か月に2回)の検収会議において,原告会社に伝えて修補させ,再度納品させる(⑦)。この会議においては,原告会社が「フォーレスト様機能追加一覧」を作成し,作業実施報告書とともに被告に交付していた。そして,双方の確認作業が終了したものついて,原告会社が検収書案(作業実施報告書が添付されている。)を作成し,被告が確認してこれに押印し,検収書が完成し,検収手続きが終了する(⑧)。
 (ウ) 定例会議において,作業工数についての協議も行われ,不具合の修補作業であるから請求工数に含むべきではない,あるいは原告会社のエンジニアのスキルが不足している等の被告のクレームにより,請求工数の削減が行われるなどしていた。
 具体的には,原告会社は,プログラムを被告のメインコンピューターに格納しても,被告による確認が未了のものは,請求対象としていなかったし(乙17),瑕疵(バグ)の修補に要した作業については,被告の求めに応じて請求工数から外し(乙18ないし20),被告による不具合の指摘があるときは,請求工数から外していた(乙21ないし34)。原告会社の担当者のスキル不足(ベテランのシステムエンジニアとの比較におけるスキル不足である。)との被告のクレームについては,当事者間の協議によって,請求工数の半分にしたり,ベテランの1.5倍にしたりするなどしていた(乙34,36)。
 このようなことから,最終的な請求工数が実績工数を大幅に下回り,原告会社は,被告との取引において慢性的に赤字となっていた。
   エ 平成18年3月27日,被告は,原告会社に対し,「基幹システム(SCAW)でクレジット会社への請求処理ができる機能を開発してほしい」と依頼し,同年8月16日,正式に被告から原告会社に対する開発依頼をし,原告会社は,機能仕様書を作成し,かつ,見積工数を提示した。このうち,「カード決裁 カード売上確定処理」と題する機能仕様書については,開発の内容を「1.カード払いの売上確定データ・・・をカードオーソリファイルに作成できること。2.既に売上確定済でかつ承認金額に変更が発生する場合には,再売上用のデータを作成できること。なお,再売上時には,売上削除データ+売上確定データを作成できること。」とし,見積工数を37.5人時としていた。また,「カード売上CSV作成機能」と題する機能仕様書については,開発の内容を「仕向会社へのカード売上確定用アップロードファイルの作成」とし,見積工数30人時としていた。そして,原告会社は,上記各プログラムの開発に着手し,同月22日には,被告のメインコンピューター(ストレージサーバEVA3000)に当該プログラムをインストールして納品した。そして,被告は,納品された上記各プログラムにおいて依頼した機能を備えているかについて検査し,同年12月,検収書を発行した。(乙7,14,15)
   オ 平成19年3月22日,原告会社のE代表取締役社長(以下「E社長」という。)及びH課長(以下「H課長」という。)は,被告のC常務と面談し,原告会社が作成した契約変更案及びソフトウェア・メンテナンス案を示した。そして,E社長は,C常務に対し,①現行の運用を考えると,派遣契約か,SES契約としたい,②現行契約の3人月のメンテナンス料を実態に合わせて2人月(340人時)に変更してもらいたい,③基本保守料金は,作業が340人時に満たない場合も2人月分固定とし,仮に通常メンテナンスの保守時間が340時間を超過した場合には,2人月固定分に超過時間分を加算させてほしい,④バグの修補については通常メンテナンスの中の請求工数に含ませてほしい,⑤特別メンテナンスについては,2人月分固定額以外の請求工数を請求したいと申し入れた。これに対し,C常務は,上記①は拒否し,上記②,③については応ずることとし,上記④については,現状のままでは認められないが,バグの発生率を縮小させる努力をし,メイン・基本となるDBとソースのドキュメント整備を原告会社が行うことと引き換えにし,3ないし10%の範囲であれば認める,上記⑤については,イベントチェック及びプリンタ設定は通常のメンテナンスに含めるべきであるが,それ以外の特別メンテナンスについては,同額の単金設定であれば2人月分固定額以外の別枠請求に応ずるなどと回答した。(甲5)
   カ 平成19年3月分について,同年3月30日,原告会社のF部長がC常務に検収書類を送付して646人時を請求工数として通知し,これに対し,同年4月2日,Cが不具合等がある作業について管理番号ごとに指摘したところ,同日,原告会社のHは,不具合については請求対象外とし(ただし,瑕疵修補の期間経過分を除く。),不具合への対処分を請求工数に含めていたことも謝罪した。そして,原告会社は,被告に対し,修正した「フォーレスト様機能追加一覧」及び「作業実施報告書(平成19年3月分)」を送付し,実績工数906.5人時のところ,621.5人時(五反田メンバー稼働分68.5人時)を請求工数とする旨を連絡し,被告は,それに応じた検収書を送付した。(乙9ないし12)
 また,その後も瑕疵修補については,納品後1年を経過していないものについては,無償(請求工数から除外すること)で行われていたが,1年を経過しているものについては,被告のクレームがあっても,原告会社は請求していた(乙9,34)。
   キ 原告会社の被告に対する支払実績は,別紙「支払実績一覧表」記載のとおりであり,平成19年4月以降は,本件個別契約に基づくメンテナンス料の支払額が本件固定額合意に基づく340人時分の238万円(消費税別)を下回ることはなかった(乙45の1ないし18,証人H)。
  (2) 前提事実及び上記認定事実に基づき,争点①及び②について判断するに,本件個別契約の契約書では,作業内容(契約書2条)として,基本的にはソフトウェアのメンテナンス作業としており,仕事の内容を定めるのではなく,作業時間(契約書4条のメンテナンス時間帯)を定め,報酬を請負内容(作業時間のみならず,作業の難易度,要求されるスキルによって左右される。)によって定めるのではなく,稼働時間によって定めていたこと,作業について被告に原告会社社員が常駐させられ,被告の完全な指揮命令下に置かれ,作業において原告会社の裁量が認められなかったこと,請負であれば,当該月の作業内容・時間が大きく変動することが予想されるのに,月額メンテナンス料を299万2500円(消費税別)と定めていた(契約書8条)ことが認められるのであり,さらには,被告が作業の有無にかかわらず月額メンテナンス料を支払うとされていた(契約書8条(5))のであるから,本件個別契約は,本来は準委任契約に近い性質を有していたものとみるのが相当である。しかし,本件個別契約の契約書の作業内容(2条)には,本来,請負として把握するのが相当である「ソフトウェアの軽微な改変又は機能追加」が含まれていて,かつ,SCAWを顧客が使用するには被告カスタマイズ部分のみだけではなく多くの開発が必要となっており,必ずしも軽微とはいえない改変又は機能追加も本件個別契約に基づいて行われていたと認められる。また,契約書の7条が報酬支払いの前提として被告による「検収」を定めており,被告からのクレームに押され,実績工数を大きく下回る請求工数となることが常態化していたから,その後の運用の実態において,本件個別契約の実質は請負に近いものとなっていた。このような実態に照らすと,当事者間の黙示の合意により契約内容が変更されたものとみるほかない
 そして,原告会社では,実績工数がかさんでも,不具合があったり,スキル不足がある等の被告のクレームにより,検収後に認められる請求工数が著しく削減され,慢性的に赤字となっていた。そこで,そのような状態を脱するため,原告会社は,再三にわたって被告に申し入れを行い,平成19年3月以降は,①メンテナンス料金は,作業が340人時に満たない場合も2人月分固定とする(本件固定額合意),②仮に通常メンテナンスの保守時間が340人時を超過した場合には,2人月固定分に超過時間分を加算する,③特別メンテナンス(実質的には軽微とはいえない請負の部分を指すものと推認される。)については,上記固定額以外にも請求できるが,被告による検収を経たものに限る,④バグの修補については通常メンテナンスの中の請求工数に含まれないとの運用(被告と原告会社との間における黙示の合意)がされてきたものと認められる。このうち,①の本件固定額合意は,もともと被告が作業の有無にかかわらず月額メンテナンス料を支払うとされていた(契約書8条(5))ことからすれば,当初の合意内容を一部復活させたものにすぎず,原告会社がしてきた業務のうち,請負的な部分を除き,かつ,原告会社が慢性的に赤字とならないような最低補償額として合意されたものとみられる。そして,結果として,本件個別契約は,請負契約とも準委任契約とも割り切ることができない契約関係となったと認められる。すなわち,機能仕様書ないしこれに類するものがある案件については,請負契約の性質を有するが,それ以外のものについても,被告の検収によって,請求工数が左右されることを原告会社が容認していた点において,準委任契約であるとしても請負的な要素を否定できない
 そして,原告会社が見積工数を超えて作業した場合(かつ,本件固定額合意を超える請求工数を請求する場合)の取扱いについては,明確な合意は認められない(乙34にも見積工数超過を理由とする支払拒絶はない。)から,社会通念によってこれを決するほかなく,見積もりに応じて発注がされている以上,見積工数を超過する請求工数は原則として認められないと解すべきである。ただ,超過するに至った原因が被告による追加的な指示に起因するときは被告が負担すべきである
 また,被告による瑕疵修補の請求が納品物(仕様変更・機能追加等の作業内容という意味におけるソフトウェア)の引渡(被告のサーバへのリリース)から1年以上を経過している場合については,通常の瑕疵であれば原告会社は責任を負わないが,被告への「重大な影響を与える障害」については,本件追加条項により,なお,原告会社に修補義務を負担させる(本件個別契約の業務内容に含める。)こととし,他方で,この修補義務のための業務もメンテナンス料支払いの対象に含まれるものとしたものと認められる(甲4,乙9)。
 さらに,不具合かどうかが争われる案件については,機能仕様書などで達成すべき機能等が明確となっているもの,あるいは,検収会議において不具合であることを原告会社が認めたものについては,請負契約と同様に,これを満たさないものは瑕疵と扱うべきであるが,これが明確となっていない場合には,準委任契約と同様に実績工数を請求できるものというべきである。
  (3) これに対し,被告は,2人月分340人時を最低補償することについての話し合いは,平成19年3月22日ではなく平成18年8月3日にされたものであると主張し,かつ,原告会社の3人のシステムエンジニアが常駐して担当することが2人月分を最低補償することの前提であった(本件3人体制の合意があった)ところ,原告会社はこれに違反したから,2人月分340人時を最低額として支払う義務はないと主張し,乙39(陳述書),証人Cはこれに沿う供述をする。しかし,①原告が平成19年3月22日付けの合意を主張した際に,いったんはそのような話し合いがあった事実を認めていること(被告の平成21年11月2日付け準備書面(1)の7ページ),②被告は原告会社のシステムエンジニアの常駐を継続的に希望していたが,必ずしもそれは実現されていなかったため,平成17年11月1日,原告と被告は,原告会社(正確には他社からSES契約で来ている。)のI(以下「I」という。)とJ(以下「J」という。)を本件個別契約に基づく業務に専従させる旨を合意して覚書まで作成しているのに対し,それとは別に3人体制を合意したとの書面がないこと(乙4,40),③3人体制がとられていないことを理由とする支払い拒絶があったとは認められず,かえって,Jが外れたことは上記覚書違反であるとし,3人体制がとられていないとしつつ,平成19年4月以降は最低でも2人月340人時の固定額以上を支払っていたことからすると,3人体制の維持が支払条件とされていたとまでは認められず,被告の主張を採用することはできない。
  (4) 他方,原告は,甲2は処分証書であり,これに反する主張は認められないとするが,長期間にわたって当事者の了解の下で甲2と異なる取扱いがされていた以上,この慣行を軽視することは相当でない。
  (5) 以上によれば,本件1月分請求及び本件3月分請求は本件固定額合意の範囲内であるから,理由がある。そうすると,本件固定額合意による金額249万9000円(340人時×7000円×1.05。消費税込み)を支払う義務がある。また,本件1月分請求については,旅費2万9880円(甲7)についても,理由がある。これに対し,被告が支払ったのは平成20年1月分252万2240円,同年3月分16万0125円であるから,これらを控除した同年1月分6640円,同年3月分233万8875円を被告は支払うべきである。
 なお,被告は,両月分について,るる支払拒否理由を主張するが,本件固定額合意の趣旨は,原告会社が慢性的に赤字とならないように,作業の有無,出来高いかんに関わらず,最低補償額を2人月340人時としたものであるから,その趣旨に反する被告の主張を採用することはできない。
 また,被告は,同年2月分についても,本件固定額合意の趣旨に照らし,少なくとも249万9000円の支払義務を負うことになる。
 2 争点③について
 本件2月分請求について,判断する。
  (1) 3066(見積金額超過型,仕事未完成型)について
   ア 証拠(甲7,乙61,62,証人Hの証言)によれば,平成19年9月10日に被告のC常務から業種別カタログのWebサイトを構築するとの作業依頼があり,平成20年2月11日に作業が終了して被告に納品されたこと,そして,被告側の上記各作業が終了したことが記載された「フォーレスト様機能追加一覧」は被告に送付され,被告側の確認作業の後も性能確認自体について異議は述べられていなかったことが認められるから,作業は完成していたと認められる。これに対し,被告はこれを否認するが,証人Cも,3066は行削除ボタンを押したときに一部の商品分類情報が残ってしまうという瑕疵があると認識していたものの,「検収はある条件の下ではやってますね」と述べているから,上記認定を左右するものではない。
   イ また,被告は,検収手続を終了していないから未完成であるとするが,作業依頼のあった作業内容がされているかどうかという観点からする本来的意義における検収は,上記のとおり,終了している(その結果として瑕疵修補請求がされている)ものと認めるのが相当であり,検収書に押印されていないのは,請求工数をどうするかという協議が終了していないからにすぎず,作業の未完成を意味するものとは認められない。
   ウ 工数について
 証拠(甲7,34の1,2,乙61,62)によれば,3066の見積工数について,平成19年10月2日付け「業種別カタログの作成について」は108人時としていたこと,その後,仕様が変更され,同月15日付け「業種別カタログの作成について」は121人時としていたこと,Cは,同年12月4日に「EM00800のスペック情報作成仕様の追加」等の仕様の追加・変更を指示したこと,請求工数は151人時であることが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
 そうすると,上記見積工数121人時が合意された後に被告による仕様の追加・変更がされたのであるから,請求工数によるべきであって,151人時とみるべきである。
  (2) 3075(見積金額超過型)について
   ア 証拠(甲7,乙63ないし65,証人H)及び弁論の全趣旨によれば,3075の作業内容は「FWとCCの統合」であり,平成19年9月13日に被告から作業依頼があったこと,その後,同年12月19日に最初の機能仕様書を提出したが,その後,被告の依頼によって2度にわたって仕様変更があったこと,それによって見積工数が17人時から42.5人時に増加したこと,平成20年2月11日に被告に納品されたこと,被告の試験の結果,問題は指摘されていなかったことが認められ,これに反する証拠はない。
   イ 工数について
 証拠(甲7,乙63ないし65)によれば,原告会社は,平成19年12月19日付け「FWCC統合(請求先変更)回収伝票入力の変更について」と題する機能仕様書において,見積工数を17人時としたこと(乙64),その後,被告の依頼によって仕様を変更し,それに伴って見積工数は42.5人時となったこと(乙65),さらに,被告の求めにより,新規画面の追加や既存画面のレイアウト変更を含む仕様の変更がされたが,この変更には仕様の追加ばかりでなく,「請求仮締め」仕様の削除も含まれており,見積工数は変更されなかったこと(乙63),請求工数は248.5人時であることが認められ,これに反する証拠はなく,その後に被告の要求によって仕様変更をしたと認めるに足りる証拠はない。
 そうすると,見積工数42.5人時を超える請求は認められない。
  (3) 3103(契約不存在型かつ仕事未完成型)について
   ア 証拠(甲7,9,17,26の1ないし3,35,乙57,66,証人H)によれば,3103は「オーダーメイドカタログ対応機能追加」であり,平成19年8月31日に被告から発注され,同年10月18日,同年11月15日,同月19日には,Cによって仕様の追加・変更がされたこと,同年12月4日には,原告会社のIから見積工数として30人時と通知されたこと,被告は作業を行い,同年12月26日に納品(リリース)したこと,被告に送付された平成20年1月11日付けの残案件状況一覧にも記載されていたこと,請求工数は252.5人時であることを認めることができ,これに反する証人Cの供述は採用できない。被告は,乙66をいったんは3103に係るものとして提出しながら,その矛盾を原告から指摘されると別の案件に係るものであると主張を変更しており,その主張を直ちに採用することはできない。
   イ 工数について
 同年12月4日付けの見積がされた後に仕様の追加・変更がされたと認めるに足りる証拠はないから,見積工数30人時を超える請求には理由がないと認められる。
 この点,原告は,乙57の見積工数のは,3103に属する作業のうち,甲36の「オーダーメイド新カタログ対応機能追加」に記載された作業のみを見積もったものに過ぎないから,原告が主張する実績工数を認めるべきであると主張する。確かに,3103全体の作業を見積もったにしては見積工数が少ないようにも思われるが,そのような誤解を生む見積工数を提示したことは原告側の落ち度であって,見積工数を252.5人時としていたなら,そのまま被告が作業依頼したとは限らないから,原告の主張を採用することはできない。
  (4) 3160(瑕疵担保責任型)について
   ア 証拠(甲7,乙16,証人C)によれば,3160の作業内容は「カタログ・チラシ明細M削除時の商品分類情報M」というものであって,3066は行削除ボタンを押したときに一部の商品分類情報が残ってしまうという瑕疵(EM00310のデータが削除されるのに,EM00311のみが残る事象)があったため,これが連動して削除されるようにするものであったこと,この作業は完了したことが認められ,これに反する証人Hの供述部分は採用できない。証人Hは,3066にカタログチラシ明細削除機能はあったが,いったん停止させており,3160はそれ(「行削除ボタン」)を復活させ,なおかつカタログチラシ明細マスターを削除するときに,それに連動して分類マスターも一緒に削除するように変更する作業を行ったものであるから,瑕疵修補でなく,仕様の変更であるとするが,カタログチラシ明細マスターを削除するときに,それに連動して分類マスターも一緒に削除されるべきことは当然であり,一部の情報のみを意味もなく残すことは瑕疵というほかなく,これを仕様の変更とみることはできない。
 この点,原告は,被告側のデータメンテナンス作業のミスによるものであるとも主張するが,これを認めるに足る証拠はなく,採用できない。
   イ そうすると,上記作業は,3066の瑕疵修補作業であるから,無償とするのが相当である。
   ウ なお,本件個別契約上,引渡完了日から起算して1年以上経過したソフトウェアに係る瑕疵について,原告会社は瑕疵担保責任を負わない。そこにいうソフトウェアがなんであるかについて,原告は,SCAWの導入に伴って作成したカスタマイズソフトを指し,平成13年には引渡済みであると主張するが,そうすると,それ以降の依頼に係る作業(その内容としてのソフトウェア)については,いかに瑕疵があっても責任を負わないという極めて不合理な結果となるのであって,採用の余地はない。作業依頼のあった各機能(仕様)ごとに引渡完了日(被告のサーバにリリースされた日)から起算すべきである。そうすると,上記瑕疵修補作業については,3066のリリースの日である平成20年2月11日から1年を経過していないというべきである。
  (5) 3167(瑕疵担保責任型)について
   ア 証拠(甲7,乙16,証人H)によれば,3167の作業内容は,「品目登録時の業種別分類コード必須化」であり,商品分類を大分類,中分類,小分類,細分類と4つに分類することを必須化するものであり,かつ,細分類に関しては,000をダミー入力することも許すというものであること,平成20年2月11日に被告に納品されたこと,上記商品分類が必須化されたことが認められ,これに反する証拠はない。
   イ 被告は,3167の作業内容は本来3066で実現されていなければならず,3167は瑕疵修補であると主張し,証人Cはこれに沿う供述をする。しかし,証拠(乙16,証人H)によれば,原告会社が平成19年10月15日付けで作成した3066の機能仕様書には,「商品分類情報M」の「新規追加」として,「大分類コード」,「中分類コード」,「小分類コード」,「細分類コード」を追加すること,「※必須チェック」として「大・中・小・細分類コード全てが設定されている」または「大・中・小・細分類コード全てが設定されていない」以外の場合をエラーとする旨が記載されており,商品分類を設定していなくともエラーとしないこと,したがって,顧客が注文において上記4分類の一つでも設定しないときにはエラーとなり,注文画面に商品が表示されず,注文できなくなることが前提とされていたとが認められるし,証拠(乙16,証人H)によれば,3066の品目登録を行う際には,「大分類コード」,「中分類コード」,「小分類コード」,「細分類コード」のそれぞれについて「存在チェック」を行う仕様となっていたから,「4つの商品分類の一部が設定されない」という事象が生じることはないと考えられる。また,3167は,細分類に関しては,「000というのをダミー入力することも許すようにする」という変更であったが,これによって支障が生じたと認めるに足りる証拠もない。
 したがって,原告会社の作業の瑕疵があったとか,それによって被告が主張するような不具合が生じたと認めるに足りる十分な証拠はなく,また,従前のデータからの変換作業(4つの商品分類の全てを設定する作業)に問題があった可能性も十分にあるから,直ちに被告の主張を採用することはできず,3167は3066の瑕疵修補としてされたものとはいえず,証人Cの供述は採用できない。
   ウ 工数について
 実績工数は8.5人時であり(甲7),特に不審な点もないことから,これを認めるのが相当である。
  (6) 3168(瑕疵担保責任型)について
   ア 証拠(甲7,17,乙16,証人H)によれば,被告のWebサイトについては,SCAWとは別のシステムであるから,もともと原告会社はその開発等に関与していなかったこと,3066の作業における被告の要望事項は,「「業種別カタログのWebサイトを構築」の基幹側機能の実現」であり,基幹システム(SCAW)と被告のWebサイトとの取引債情報登録をやりとりすることが予定されていたものの,作業内容はあくまでも「基幹側機能の実現」であること,これに対し,3168の作業内容は,「品目登録時の業種別分類コード必須化」であり,基幹システム側のカタログ・チラシ区分を「Web側に設定する作業」であること,同年2月11日に作業は終了して納品されていることが認められ,これに反する証拠はない。そうすると,3066の作業だけでは,まだ「業種別カタログを見ながらWebから注文できない」という状態であったとしても,3066の作業と別にWeb側の作業が必要なだけであり,3066の作業に瑕疵があったとはいえないから,3168を瑕疵修補作業とみることはできず,これに反する証人Cの供述は採用できない。
   イ 工数について
 実績工数は3人時であり(甲7),特に不審な点もないことから,これを認めるのが相当である。
  (7) 五反田稼働について
 証拠(甲7,証人H)及び弁論の全趣旨によれば,五反田稼働は,Iらによる作業が被告の社内で行われていたため,それを原告会社本社(五反田)において,打合せをし,管理する必要があったこと,原告会社本社においても被告に対する報告書を作成し,被告からのクレームに対する対応する必要があったこと,五反田稼働と称する費用はそれらに要する人件費部分であること,五反田稼働という名目で工数を請求することは平成15年9月から行われてきたが,当該名目で請求すること自体について被告から異論は述べられていないこと,平成20年2月分の実績工数は60人時であることが認められる。
 そうすると,実績工数は60人時を認めるのが相当である。
  (8) まとめ
 以上によれば,原告が主張する平成20年2月分の請求工数のうち,認められるのは,3066が151人時,3075が42.5人時,3103が30人時,3167が8.5人時,3168が3人時,五反田稼働が60人時であり,合計295人時となって,本件固定額合意の340人時を超えない。そうすると,2月分についても,本件固定額合意による金額249万9000円(消費税込み)が請求できるにとどまる。そして,被告は,平成20年2月分については,178万9725円を控除した70万9275円を支払う義務がある。
 3 被告が本件個別契約に基づいて支払うべき金額について(争点④)
 以上によれば,被告は,本件固定額合意に基づき,原告に対し,平成20年1月分6640円,同年2月分70万9275円,及び同年3月分233万8875円の合計305万4790円を支払うべきである。
 4 時期に遅れた攻撃防御方法の却下の主張について
 原告は,被告の追加主張(準備書面(10))及び証拠の提出(乙66,68,69)が時期に遅れた攻撃防御方法であり,却下すべきであると主張するが,当該主張及びそれに伴う証拠の提出は当裁判所の求釈明に応じてされたものであり,それによって訴訟の完結を遅延させたとは認められないから,理由がない。
 5 以上によれば,原告の請求は305万4790円及びうち6640円に対しては平成20年3月1日から,うち70万9275円に対しては同年4月1日から,うち233万8875円に対しては同年5月1日から各支払済みまで年8.25パーセントの割合による金員の支払いを求める限度で理由があるのでこれを認容することとし,その余の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条,仮執行の宣言につき同法259条1項を各適用して,主文のとおり判決する。