弁護士による契約書の作成とチェックの仕方

                                  広報・営業 土肥

 契約書を作成したり,チェックするのが,弁護士の大きな仕事の1つだと知っていましたか?
 今回は,辻本先生にかなり細かく説明を受けながら,というより,難しいところは,辻本先生に書いてもらいました。契約書の作成とチェックについて書きたいと思います。

オレンジはどのような契約書が得意?

 オレンジ法律事務所で,最近取り扱った契約書をざっと調べてみました。
 契約書のタイトルを見ながら書いておりますが,膨大な種類の契約書があるということがわかります(私が見ている限りで,数多く契約書を作ったりしているものを太字にしました)。

・アセットマネジメント契約
・イメージキャラクター使用契約書
・コンテンツ使用許諾契約書
システム開発委託契約書
・ソフトウェア等使用許諾契約書
・ビジネスマッチング業務委託契約書
・保証取引契約書
・フランチャイズチェーン加盟契約書
・業務提携契約書
業務委託契約書
・モデル専属契約書
・専属マネージメント契約書
・技術指導契約書
・共同開発契約書
特許ライセンス契約書
・ノウハウライセンス契約書
・商標使用件許諾契約書
・リース契約書
・レンタルスタジオ利用契約書
・ローン契約書
株式譲渡契約書
・合併契約書
・事業譲渡契約書
秘密保持契約書
建設工事請負契約書
建物賃貸借契約書
・不動産売買契約書
・債権譲渡契約書
・死後事務委任契約
・取次基本契約書
・出版契約書
・信託契約書
製造物供給契約書
・代理店委託契約書
・事業用定期借地権設定契約書
・抵当権設定契約書
・出資契約書
・匿名組合契約書
・独占販売店契約書
・労働者派遣契約書
など

 このように見ていると,相談される企業も業種も多いせいか,幅広い契約書の作成や,チェックが依頼されるみたいです。
 また,オレンジ法律事務所の先生に聞くと,そもそも典型的ではない契約書の作成を依頼されることも多く,ここに書いてあるように分類しやすい契約書ばかりではないです。

弁護士が契約書を作成する理由

 弁護士以外にも,行政書士の先生,司法書士の先生も契約書を作ることがあるようですが,弁護士が契約書を作成するメリットはなんでしょうか?
 辻本先生が,次のいくつかを挙げていましたのでご説明します(ちなみに,札幌弁護士会に弁護士と司法書士の違いと,弁護士と行政書士の違いを詳しく紹介してありましたので,興味がある方はご覧ください)。

1 紛争の果てを知るプロであること
 ビジネスをしている多くの企業は,できる限り,紛争を避けたいと思いますよね。
 その企業にとって不利益な条項に気づかず契約をしてしまったがため,後のビジネスに悪い影響があることも少なくありません。泣き寝入りをしなければならないときもあれば,その契約書条項が曖昧であったことが原因で大きな紛争になることすらあります。これは,契約の当事者双方にとって好ましいものではありません。
 すなわち,企業間の紛争の中には契約書の書き方によって発生してしまうものも少なくありません。
 弁護士は,権利義務の争いに関する交渉や裁判を業とする専門家であり,どのような契約書の書き方だと,どのような紛争が起き,最後,どう決着が着くのかということを日々,実践しています。 このような紛争の果てを知るプロフェッショナルであるから,最悪の事態を予測し,そうならないよう予防するための契約書の書き方が良く分かっているとのことです。

2 リーガルチェックをする
 契約内容によっては,必要な記載がなければ契約全体の効力が認められないこともあります。他方,契約条項の一部に問題のある条項が含まれていることで,契約全体の効力が認められないこともあります。
 たとえば,ある機械を購入したときに,毎月,売買代金の割賦金に一定の手数料を支払えば,機械が故障したときに,別途,修理費を支払わずに修理してくれるというオプションをつけるサービスを考えているので,その内容の契約書を作成してほしいと依頼されたとします。何も問題にならなさそうな気がして,契約書を作成しようとすると,実は落とし穴にはまったりするようです。
 場合によっては行政指導が入ったりもします。企業がせっかくの新規事業をしようと思ったのに,信頼ががた落ちになってしまうおそれもあります。
 日本の法令は,数えられないほど数多くあるようですが,少なくとも企業の法務を行う弁護士は,企業活動で問題となるような法律を押えています。その知識と勘所を頼りに法的調査をしっかりとすることで,クライアントの求めるような内容の契約書を作成しても本当によいのか,リーガルチェックをすることは,弁護士としての大きな仕事の一環です。

3 交渉のプロであること
 権利義務を得たり,失ったりすることの交渉は,原則として弁護士しか代理ができません。そういう意味で弁護士は,交渉のプロフェッショナルといえるでしょう。
 交渉においては,相手方とのパワーバランス,相手のウィークポイントなど色々なことを考慮していくみたいです。クライアントの企業に一方的に有利な契約書を作るのが,必ずしも良いわけではありません。
 あくまでクライアントの企業の代理人として,同企業の利益となることを考えつつも,ときにはバランスを取った契約書の作成が求められる場面も少なくありません。たとえば,相手方が作成した契約書案のチェックを依頼されて,クライアントに一方的に有利になるよう全面的に契約書案を修正すれば,最悪の場合,相手方が気分を害して契約の話が白紙になってしまうことだって,ありえます。
 色々な事情を考慮して,バランスを取ることが企業間の契約書を作成するうえでは,重要になることも多いでしょう。

4 経営判断,事業リスクなども検討する
 経営的な判断,事業リスクについては,オレンジ法律事務所が,クライアントから求められることが多いようです。
 契約書単体をチェックするのではなく,このスキームにおける落とし穴がないか,想定していなかった事業上のリスクなどについても,指摘させていただくことが多いようです。
 多くの企業,多くのやり方を見ているからこそ,クライアントにあった事業上のアドバイスができることもあるようです。
 弁護士は,僅かにでも分からないことがあれば,「法的にリスクがある」「法的にリスクがある」と,ついついリスクを大袈裟に口に出しがちです。
 たしかに,法的リスクを指摘すること自体,弁護士の重要な役割であることは間違いありません。どう考えても違法であるとしかいえないものについては,全力で,クライアントに諦めるよう説得します。
 ところが,あまりに度が過ぎて,自らの保身のために,何でもリスクがあると指摘してしまうのは,クライアントが真に求めているものではないと思います。だからこそ,オレンジ法律事務所は,日々の研鑽のもとで,とことん調査をして,正確に法的な判断ができるよう、しっかりとフィロソフィーが根付いているようです。

料金

 契約書作成及びチェックについては,次のとおり,主に,一定額の報酬となる①定額報酬方式,時間により報酬がチャージされる②タイムチャージ方式の2つがあります。
 なお,タイムチャージ方式って,不安ですよね?作業時間がどのくらいかかり,いくらくらいの報酬になるのか?そのような不安もあるので,担当の弁護士の先生に聞くと,いくらくらいになるのか,およその目処を教えてくれるようです。あくまで目処ですが,ぜひ,聞いてみて下さい。

  報酬額
①定額報酬方式作業時間にかかわらず,一定額の報酬が発生110,000円(税込。以下同様)~1,100,000
②タイムチャージ方式作成,チェックの作業時間に応じて報酬が発生1時間あたり33,000円~55,000円

オレンジにいる重鎮の猫。普段は,会議室の隅にひっそりとたたずんでいますが,ときどき,六法全書を黙読しているようです。

依頼して契約書が取り交わされるまでの流れ

 実際に依頼する場合,契約書を作成するまでの仕事もありますし,相手方との間で契約交渉をして契約書が取り交わされるまでの仕事もあるようです。

1 打ち合わせ日の日程調整等
 オレンジ法律事務所に電話,メール,Chatwork,Messenger,Slackその他でコンタクトをとり,どのような契約書を作成したいのかなどを簡単に説明していただきます。
 弁護士が簡単なヒアリングをしたうえで,打合せ日の日程調整を行ないます。なお,緊急度によっては,直ちに打ち合わせを入れて,事件の委任を受けて対応しなければならない場合もあります。
 このとき,打合せに必要な資料などをお願いすることがあるようです。
 また,打ち合わせは,事務所に来所してもらう場合と,Zoom会議などのテレカンファレンスで行う場合があり,最近は,Zoom会議などが多いようです。

2 打ち合わせ日
 打ち合わせは,事務所で対面ですることもあれば,Zoom会議などのテレカンファレンスですることもあります。
 打合せでどのような契約書を作成したいのかをより詳しくヒアリングをします。
 必要に応じて,会社の今の事業と今後の展開,契約相手との関係性,さらには,なぜこの契約書を弁護士に依頼しようとしたのかなどを聞いていきます。
 このヒアリングが弁護士に契約書の作成,チェックを依頼する大きな理由で,問診をしているようなイメージかもしれません。
 なお,打ち合わせにも1万円程度,弁護士費用がかかりますが,1時間から1時間30分程度になることが多いようです。
 最後に,今回の契約書作成,チェックに必要な弁護士報酬の説明をしたうえで,オレンジ法律事務所にこれらを依頼するということになれば,委任契約書を取り交わします。また,契約書の取り交わしも電子的に行うこともあるようです。
 なお,顧問契約をしていている企業は,繰り返し多くの案件の依頼を受けていたりしているため,あらかじめ考え方を理解していることも多く,すばやく的確にヒアリングをすることができますし,タイムチャージ等の報酬単価も安価になるメリットがあります。

3 打ち合わせ後から納品まで
 打ち合わせ後,ヒアリングをした内容にしたがって,契約書の作成等をしていきます。
 契約書作成中に,追加で情報等をうかがうこともあります。
 弁護士は,契約書案を作成したものは,メール,Chatwork,Messenger,Slack等でクライアントに送信して納品します。オレンジ法律事務所では,納品までに複数の弁護士がチェックをすることになります。
 クライアントに契約書案を確認してもらいながら,弁護士が内容を加筆したり,修正したりします。
 その後,クライアントが相手方に契約書の案を提案し,契約交渉が続きます。相手方の会社に顧問弁護士が背後にいて契約交渉をすることも多いようですが,弁護士自身が直接交渉の窓口にはならないことが多いようです。
 無事,両当事者が,契約内容について納得できましたら,契約書が取り交わされるということになります。

どのようなときに弁護士に依頼するべきか?

 契約書作成は,費用がかかりますので,どのようなときに弁護士に依頼するべきかは,迷いますよね。ただし,タイムチャージ方式で作成する場合,思ったよりも費用がかからない場合が多いかもしれません。前述したように,オレンジ法律事務所は,日々,バラエティー豊かな契約書を数多く,作成し続けていることも,1つの理由かと思います。
 いずれにしても,紛争の果てを知り,企業のステージや思想をふまえて経営判断に寄り添う形で,契約書を作成していきますので,ここぞという取引については,弁護士に契約書の作成を依頼すると,安心して事業を進められると思います。
 また,実際に,紛争が起きてしまい,その解決とともに,契約書関係の見直しを依頼されることも少なくありません。
 契約書全体の見直しは,企業のオーバーホールみたいなものなので,全く想像もしていなかったリスクに気がついて,紛争を回避できるかもしれません。