オレンジ法律事務所の弁護士が,法律に関する情報を紹介しています。

書面による通知が宛先に尋ね当たらないとして返送された場合であっても通知の到達を肯定した事例(前橋地裁高崎支部平成31年1月10日判決)

主文事実及び理由第1 請求の趣旨第2 当事者の主張第3 裁判所の判断 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 Xは,Yが,平成10年1月14日,群馬県群馬郡所在の当時の原告宅において,Xの両親及び祖母を殺害したと主張して,Xの両親及び祖母のYに対する損害賠償請求権を相続したとして,Yに対し,損害賠償請求をするべく提訴した事件である。 なお,Yは,被告は,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しなかった。 2 裁判所は,①民法724後段の法的性質,②同条による請求権を保存するために必要な行為,③所在不明者に対する通知の効力について判断をした。 この点,①民法724後段の法的性質については,除斥期間を定めたとする確立した判例(最高裁第一小法廷平成元年12月21日判決

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債務名義の執行力の向上(民事執行法改正)

弁護士 辻本 恵太 1 はじめに  「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律」(令和元年法律第2号)が令和元年5月17日に公布され,令和2年4月1日に施行となった。 この改正は,私たちオレンジ法律事務所の弁護士を含む,多くの交渉,訴訟に携わる弁護士にとって,心躍る改正であり,施行される令和2年4月1日を心待ちにしていた。判決などの債務名義の執行力の向上は,民事司法制度への信頼を飛躍的向上させることと期待している。 民事執行法改正は多岐にわたるが,一部を紹介したい。 2 裁判で勝つことと金銭を支払ってもらえることは同じではない  まず,①貸した500万円を返してもらえないので裁判を起こした(貸金返還請求訴訟)。②1年近く裁判をして勝訴判決

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コロナと案件の変化と裁判所の動向

弁護士 辻本恵太 事務所での依頼案件の変化 今,オレンジ法律事務所では,弁護士としての仕事として,通常どおり,共同開発,特許,その他知的財産の相談などは多い。企業側の相談業務が多く,BtoB,BtoCを問わず,オンラインサービスを提供している企業の相談も少なくない。各種業務委託契約書,共同開発契約,取引基本契約,NDAなど契約書のレビューも多い。他方,この数日間,例えば, 自宅待機,解雇などにまつわる労務問題や,早期に売掛金を回収してキャッシュフローを改善したいなどの交渉案件,強制執行など,性質上,緊急,切迫したものが多くなっている。 さらには,新型コロナウィルスの影響により,売上回復の目処が立たず,法人破産をするにいたるという相談案件も増えてきた。 裁判所の動向 そもそも, 政府の新型イン

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嗚呼「紅秀峰」(種苗法の話)<その1>

弁護士 片山輝伸 先日(平成30年7月頃),尾形大先生が私に向かって,「近日中に,親戚から超美味いサクランボが送られてくる。そんじょそこいらのサクランボではない。事務所に持ってきて食わせてやるから,楽しみに待っとけ。」とおっしゃいました(注1)。 ここだけの秘密なので口外禁止なのですが,私は,いつも喧しい尾形大先生のことが好きではありませんから,「ああ,そうですか。それは大変楽しみですねぇ。ええ。」と適当に聞き流していました(注2)。 数日後,尾形大先生が何やら立派な段ボール箱を持ってきて,その段ボール箱を開けるや,私に「ほれ。食べてみろ。」と,サクランボ様の物体を差し出してきました。そのサクランボ様の物体は,私が普段目にするサクランボよりも,色が鮮やかで,大きかったので,直ちにサクランボと

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空手の話(特許技術文献サーチ入門 FI検索編)

弁護士 片山輝伸 なにやら,先日空手の話をしていた兄弁の有馬弁護士は,たかだか石ころ如きを叩き割ることすらできないと聞きました。そんな軟弱な有馬弁護士でも叩き割ることができる空手用の瓦があるに違いありません。 そこで,特許実用新案の文献を探してみることにします。 今回は,FI(File Index)という,特許庁独自の技術分類をたどって探してみます(FI検索)。   まず,特許庁のHPに行き,右側のカラムの「特許情報プラットフォーム(J-PratPat)」をクリックします。 J-PratPatのページの左上の「特許・実用新案」にカーソルを合わせると,メニューが出てくるので,「4.パテントマップガイダンス」を選びます。 FI照会の(分類表)をクリックします。 セクションがAからHまで

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視線の先にあるもの(著作権法の話)

弁護士 片山輝伸 冒頭に貼り付けた動画は,YouTubeなる動画投稿サイトに投稿されている動画です。 この動画は,2011年頃,JR総武線の車窓から万世橋駅跡を俯瞰的に撮影され,編集されて作成されたものです。 私は,以前,埼玉県は大宮にあるオレンジ法律事務所で営業事務を担当しているという女性から,動画投稿サイトの動画を,埋め込み用タグを用いてブログ等ウェブページに貼り付けることは,当該動画をウェブページ上に複製(コピー)している(ウェブページデータが記録されているサーバに複製している)ことになり,動画の著作者の複製権(著作権法21条)を侵害しているのではなかろうかとの質問を受けたことがありました。 言われてみると,確かに,上に貼り付けた万世橋駅跡の動画は,このブログ(のサーバ)に複製されたも

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大宮の地理的強みと地理的表示(GI)

弁護士 辻本恵太 私が埼玉県大宮駅付近にオレンジ法律事務所を構えてからもうすぐ5年になる。 これまで,特許権,商標権等の訴訟,仮処分等の保全事件,証拠保全事件,無効審判申立事件等をしてきた。実は,あまり意識していなかったのだが,特許,意匠,商標等の経済産業省・特許庁や,著作権の文化庁以外にも,知的財産権を扱っている省庁があることを再認識した。 農林水産省である。 一つは,私は扱ったことがないが,種苗法。 そして,今回取り上げたいのが,「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」。いわゆる地理的表示法(GI法)だ。 平成27年6月1日から運用された新しい知的財産の一種である。 (登録番号3 神戸ビーフ) (登録番号4 夕張メロン) (登録番号6 江戸崎かぼちゃ) 農林水産省のホームページを引用

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