広報担当 秘書 田村司
皆さん,良くご存じのこととは思いますが,「転ばぬ先の杖」として役立てて頂きたいと思い掲載しました。
相続開始のときに,はじめて気づいて慌て,対策を講じれば良かったと後悔するのが
「連れ子」の相続のことです。
再婚や養子縁組のときに「連れ子」の将来に発生する相続問題に想いが及ばない場合や,財産目当ての結婚や養子縁組と思われる事を心配して相手に相続対策を言い出しにくいことがあるかと思います。
また,養子縁組しているので,「連れ子」が推定相続人になると勘違いしている可能性もあるようです。
養子縁組日から親族関係が生じますが,養親と「連れ子」は,直系卑属の関係にはならないのです。
養子縁組後に生まれた子は養親の直系卑属となり,養親が被相続人になったとき推定相続人(代襲相続)をもつのです。
気づいたときは,対策してくれる人はもうすでにこの世界にいないのです。
そのために生前に一緒にこのブログをご覧になり,役立てていただける事を期待しています。
そこで分かりやすく,事例を図で説明いたします。
事例1
前提条件・・・ 「AとB」は夫婦でありその実子Cと再婚者Dと婚姻した。Dには前配偶者との子Eがいた。婚姻後「AとB」を養親として,Dを養子とする養子縁組をした。
CとDの夫婦には,養子縁組後に子F が生まれた。
その後にAが死亡した。そのときの相続人はB(1/2),C(1/4),D(1/4)の3名となります。このときは連れ子Eの相続権は顕在化しません。 (相続人を黄色で色づけしています。)
事例2
同様の前提条件において,養親Aが死亡するまえに,養子Dは死亡していた場合は
養子Dの代襲相続人としてFがなります。 Dの子Eは代襲相続人になりません。
相続人はB(1/2),C(1/4),F(1/4)の3名になります。FはDの代襲相続人として登場しますが,Dの子Eは被相続人養親Aの代襲相続人にはなりません。 理由はFは被相続人Aの直系卑属にならないからです(民法887条2但書)。
事例3
同様の前提条件であるが,養親A(Cにとっては実親)が死亡前に,実子C,と養子Dが死亡している場合の相続人はB(1/2),とF(1/2)の2名となり,EはAの代襲相続人にはなりません。
事例4
同様の前提条件であるが,Aの死亡後(3か月以内)にDが権利行使する前にDは死亡して,再転相続となった場合は,Eが登場してきます。
相続人はB(1/2),C(1/4+1/8)F(1/16),E(1/16)の4名となります。
・・・C(Dの配偶者)F(Dの子)とE(Dの子)は被相続人Aの相続人Dの再転相続として権利行使(単純承認,限定承認,相続放棄)可能となります。
事例5
前提条件・・・「AとB」で婚姻した。Bには前配偶者Cとの子E,子Fの2名がいた。
AとBとの間には子Dができた。Aと「E,F」の間で養子縁組をしていなかった。
その後被相続人Aが死亡した場合の相続人は,B(1/2)とD(1/2)の2名になります。
E,FはAの相続人にはなりません。
事例6
前提条件は同様でありますが,被相続人Aが死亡後にBが死亡し再転相続となった場合は,D(1/2+1/6),E(1/6),F(1/6)となります。
事例7
被相続人Bが死亡した場合は,相続人は配偶者A(1/2),子D(1/6),子E(1/6),子F(1/6)になります。
事例8
前夫Cが死亡した場合は被相続人Cの相続人はE(1/2),F(1/2)の2名です。
事例9
事例1~4は「連れ子」が別な配偶者との間に生まれた「連れ子」を事例としましたが,今回の事例は,ちょっと違う部分があります。
前提条件・・・夫婦「AとB」の間に実子Cがいます。その実子CとDが結婚して子供Eが出来た。その後に,夫婦「AとB」はDと養子縁組をしました。養子縁組後にCとDの間にFが生まれました。その後養子Dは被相続人Aより先に死亡しました。相続人はB(1/2),C(1/4),E(1/8),F(1/8)の4名になります。
養子縁組の日から血族間と同一の親族関係を生じる(民727条)
養子縁組前の養子Dの連れ子Eには,通常,被相続人Aの親族関係を生じなく,代襲相続も発生しないが,この事例のようなときは,Eが直系卑属となり「代襲相続権あり」とされています。
理由としては,「実子Cを介して連れ子EはAの直系卑属である」と判示しています。
(大阪公判平成元年8月10日判夕708号222項)
なお,今の事例が第三順位相続となるような場合では「連れ子」が直系卑属として代襲相続権が発生するか,否かで,判断が難しいものもあります。事例にある通り直系卑属,再転相続などが複雑に関係するような特殊な事例の場合は必ず法律相談をお勧めします。
以前のブログ 田村が解説「推理小説・番組を何倍も楽しむ方法」副題「同時死亡・再転相続・代襲相続」をお読み下さい。前編 相続のお話 及び 後編 相続のお話 の2編も合せてお読み下さい。
オレンジ法律事務所は埼玉県では知的財産問題に強みを持ちます。複雑な遺産相続のご相談も頂いております。若い弁護士2名(尾形弁護士,根本弁護士)は精力的に活動を続けております。益々活気のある事務所になり,ご依頼人に寄り添える,力になる,信頼されるように努めています。
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参考文献
松原 正明『全訂 判例・先例 相続法 Ⅰ』日本加除出版(株)平成18年1月10日全訂版発行 P111,
熊田裕之著『民法の解説―相続法―』ネットスクール出版 2012.5.11 初版第1刷発行P55