広報担当 秘書 田村 司
いつもご愛読頂き誠に有難うございます。
私は,推理小説の刑事事件の娯楽番組を時々見ます。
その中で,犯人の動機は相続財産(含む知的財産,特許)が狙いであるケースがあります。そして,詳しい相続(動機)の解説がない場合があります。そしてその動機が理解出来ないままストーリー展開して終わります。
さらに,娯楽番組を注意して見ていないと,肝心要の動機(相続財産取得目的)が分からないことがあります。
以前,相続の「同時死亡の推定」を題材にした娯楽番組がありました。そして,娯楽番組で展開される相続の知識が当時はありませんでした。そこで,知識があれば,番組がもっと楽しめると痛感しました(笑い,呵呵)。
そこで「同時死亡・再転相続・代襲相続」などを理解できているとその動機となる事件の娯楽番組を何倍も楽しめます,そして,皆様の相続の実務で役立つようにと今回の題材にしました。
ご不幸にも,交通事故,飛行機墜落事故,居住用家屋火災で親Bと子Dが同時に死亡した場合を取り上げます。それは,3つのケースが想定されます。
1,BとDのどちらが先に死亡したか分からない
2,Bが死亡後にDが死亡の事実が分かった
3,Dが死亡後にBが死亡の事実が分かった
この3通りについてご説明致します。(相続人が変わるのです,)
事例1,「BとDのどちらが先に死亡したか分からない」場合は,
同時死亡の推定の規定(民法第32条の2)があります。
このときはDが死亡と推定されるのでFには代襲相続が発生するのです。
被相続人Bの相続人はCとDの子F(代襲相続)の2名となります。
被相続人Bの相続人にはDの配偶者Eは相続人にはなりません。
尚,被相続人Dの相続も発生しますので,相続人は配偶者Eと子Fになります。
「推定」ですから,死亡した時刻が証明できれば,死亡の順序が明確になり,権利関係もガラリと変わります。それが事例2,と事例3,になります。
犯人がどのようなケースを目論んで計画したかに関わらず,死亡の順序によって,
結果が変わります。
下の図をご覧ください(母Aは以前に死亡済)。
事例2,「Bが死亡後にDが死亡の事実が分かった」場合は,
被相続人Bの相続人はCとDの配偶者EとDの子Fの3名になります。
被相続人Bの相続人にはDの配偶者Eは相続人になります。
Dの再転相続として配偶者Eが相続人に登場することになるのです。
ここに相続放棄が絡んでくると,再転相続としては難しくなってきます。
父Bの死亡後(相続の開始を知った時から)3か月以内に単純承認,限定承認,相続放棄などをしないで子Dが死亡した。そしてDの子(Bの孫)FがDに代わって権利行使するようなケースを再転相続といいます。
もし,このようなケースで,Bには借金があり,Dには財産が沢山ある。Dの子Fは相続放棄をどのようにしたらよいか。被相続人Bの相続放棄をする。間違えてDの相続放棄をFが先にするとFはDの相続人ではなくなります。
そして,Dの財産をFはもらえなくなります。ご注意下さい。
このようなことで,事件の展開がガラリとかわります。
事例3,「Dが死亡後にBが死亡の事実が分かった」場合は,
被相続人Bの相続人はCとDの子F(代襲相続)の2名となります。
配偶者Eは相続人に入りません。
被相続人Dの相続人はEとFになります。
オレンジ法律事務所は埼玉県で知財に強みをもっておりますが,相続関係の取扱も増えてきております。今回は分かり易い事例としましたが,同時刻の死亡の証明(死亡診断書&死体検案書)や相続放棄と再転相続が絡んだ案件は,複雑でしかも間違いやすいのです。お困りの時はぜひご相談ください。
下手なイラストで申し訳ありません。少しでも,実務に役立ち,かつ,娯楽番組の楽しみに役立って頂ければ,それがわたしの喜びです。最後までお読み頂き誠に有難うございました。
参考資料
(弁護士)御器谷修/高橋修/石坂基/島津守/栗田祐太朗,税理士小林隆文 著
『Q&A 遺産分割の実務』清文社 2009.12.10 H21年11月改定,P10
北野俊充/北新居良雄/小磯治 著『詳解遺産分割の理論と実務』民事法研究会 平成28年8月25日第1刷発行 P9~10
熊田裕之著『民法の解説―相続法―』ネットスクール出版 2012.5.11 初版第1刷発行P2,P55