コロナと案件の変化と裁判所の動向

弁護士 辻本恵太

事務所での依頼案件の変化

今,オレンジ法律事務所では,弁護士としての仕事として,通常どおり,共同開発特許,その他知的財産の相談などは多い。企業側の相談業務が多く,BtoB,BtoCを問わず,オンラインサービスを提供している企業の相談も少なくない。各種業務委託契約書,共同開発契約,取引基本契約,NDAなど契約書のレビューも多い。
他方,この数日間,例えば, 自宅待機解雇などにまつわる労務問題や,早期に売掛金を回収してキャッシュフローを改善したいなどの交渉案件強制執行など,性質上,緊急,切迫したものが多くなっている。

さらには,新型コロナウィルスの影響により,売上回復の目処が立たず,法人破産をするにいたるという相談案件も増えてきた。

裁判所の動向

そもそも, 政府の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言及び埼玉県の 外出自粛要請等を踏まえ ,例えば,さいたま地方裁判所は,以下の通り,民事事件,行政事件について, 4月8日から5月6日 に予定されていた期日が 緊急性の高いものを除き取り消されている(2020年4月12日現在。https://www.courts.go.jp/saitama/news/index.html )。
東京,神奈川なども概ね同様の扱いのようである。

民事事件及び行政事件について 次の事件を除いて期日指定が取り消されます。新たな期日については,指定され 次第,担当部(係)から連絡があります。(中略)
・ 民事保全事件(行政事件の仮の救済手続を含む。)
・ ドメスティックバイオレンス事件
・ 人身保護事件
・ 民事執行事件のうち特に緊急性のあるもの
・ 倒産事件のうち特に緊急性のあるもの  」

刑事事件については,裁判員裁判事件の裁判員選任手続期日は変更され,公判期日のうち一部についても期日が変更されている。
家事事件については,児童福祉法上の一時保護事件,審判前の保全事件等急を要する事件,ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立て事件,子の監護に関する事件で,特に急を要する事件を除き,指定期日が取り消されている。
少年事件については, 原則として審判期日は取り消されている。

オレンジに求められること 

こんな状況化において,オレンジ法律事務所に求められることは何だろうかと考えたりする。
裁判所がしばらくの間,事実上,機能しにくくなっている状況下において,一概にそうであるとはいえないものの,いつも以上に,交渉のスピードが求められることが多いと思われる。

依頼者から受任するまでのスピード,交渉に必要な証拠資料を収集するスピード,法的調査のスピード,交渉の戦略を練るスピード,文書を起案するスピード,相手方からの主張等に対する対応するスピード。
一日でも早く,依頼者の権利を実現したり,義務から解放するのを目指したい。

大雑把に言えば,弁護士の仕事の本質の1つは,紛争をしかるべき方法であるべき妥当な解決に導くことであり,これにより,社会正義を実現することである。
これは,弁護士法1条1項に「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と規定されていることからも明らかである。

このあるべき妥当な解決,社会正義の実現というのが難しい。
特に,新型コロナウィルスが猛威をふるう今日において,一層悩ましい。
これは,別の機会に書こうと思う。

(了)