大宮の地理的強みと地理的表示(GI)

弁護士 辻本恵太

私が埼玉県大宮駅付近にオレンジ法律事務所を構えてからもうすぐ5年になる。

これまで,特許権,商標権等の訴訟,仮処分等の保全事件,証拠保全事件,無効審判申立事件等をしてきた。実は,あまり意識していなかったのだが,特許,意匠,商標等の経済産業省・特許庁や,著作権の文化庁以外にも,知的財産権を扱っている省庁があることを再認識した。

農林水産省である。

一つは,私は扱ったことがないが,種苗法。
そして,今回取り上げたいのが,「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」。いわゆる地理的表示法(GI法)だ。
平成27年6月1日から運用された新しい知的財産の一種である。

3fig1(登録番号3 神戸ビーフ)

4fig2(登録番号4 夕張メロン)

6fig1(登録番号6 江戸崎かぼちゃ)

農林水産省のホームページを引用すると,地理的表示保護制度とは,「地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物・食品のうち,品質等の特性が産地と結び付いており,その結び付きを特定できるような名称(地理的表示)が付されているものについて,その地理的表示を知的財産として国に登録することができる制度」らしい。

制度の概要は,以下のようである。
①生産者団体が「地理的表示」を「産品の基準」とともに登録申請。
②農林水産大臣が審査の上,地理的表示及び生産者団体を登録し,基準を満たすものに「地理的表示」及びGIマークの使用を認める。
③登録を受けた生産者団体が品質管理を実施。農林水産大臣が団体の品質管理体制を
チェック。
④不正使用があった場合は農林水産大臣が取締りを行う。

生産・加工業者の組織する生産者団体が登録申請を行うということが一つの特徴であり,登録申請するにあたっては,地域に呼びかけをしたり,品質管理体制を構築したり,産地戦略を立案する必要がありそうである。また,地理的表示の不正使用に対しては,国が取締りを行うため,訴訟等をすることなくブランドを守ることも期待しうる。

思えば,埼玉県で弁護士をするようになってから,農業に関する相談を受けることが多くなった気がする。
土壌改良,バイオマス,農作物の生成方法その他に関する特許権,共同開発契約等の相談が比較的多く,北関東や東北地方等,遠方からも依頼を受ける。
オレンジ法律事務所の最寄り駅である大宮駅が新幹線や在来線がいずれも東北地方と信越地方を結ぶ路線の分岐点に位置し,京浜東北線や高崎線,宇都宮線,湘南新宿ライン等10以上の路線が乗り入れるターミナル駅であることも一因と思う。

平成28年11月9日現在,GI法に基づく登録されている地理的表示は21件しかない。もっと活用されればと願う。あおもりカシス,吉川ナス,下関ふく等,登録産品一覧をみているだけで,美味しそうで,わくわくする。

大宮という土地を生かして,是非とも,これからも農業に関わりたいと強く思う,食いしん坊弁護士であった。それにしても,吉川ナス,本当においしそうだなぁ。

14fig1(登録番号14 吉川ナス)

弁護士 辻本恵太のプロフィール

埼玉県さいたま市大宮区にあるオレンジ法律事務所に所属。
現在,オレンジ法律事務所には5名の弁護士とスタッフ7名の合計12名が所属する。 事務所では主に特許訴訟等の知的財産事件,IT関係の企業法務等を担当する。

ストレスがたまると夜中にデッサンをする。
健康診断をするとふくよかになり,期せずしてコンタクトを重ね着したり,ここぞというときに日焼け止めを忘れることがある。
この夏,門番と太陽とスポンジのようなスタッフが加わり喜んでいる。
オレンジロゴ等を隠すのに力を入れ,吉川ナスに思いを馳せながら農業の仕事がこないかと願っている。