刀剣の引渡請求訴訟において自白の撤回の可否が認められて時機に遅れた攻撃防御方法とはいえないとした事案(山形地裁令和元年8月6日判決)

主文事実及び理由第1 請求第2 事案の概要第3 当裁判所の判断第4 結論 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,いずれも重要文化財に指定されており,X告の評価によるといずれについても,少なくとも1振り8000万円程度の価値がある3振りの刀剣を所有していたと主張するXが,盗難にあった本件各刀剣を買い取ったYがこれを占有しているとして,Yに対し,所有権に基づき,本件各刀剣の引渡し及びその執行不能に備えた代償金の支払を求めると共に,Yが本件訴訟において本件各刀剣を占有している旨の自白を撤回したのは違法行為であるとして,不法行為による損害賠償請求をした事案である。 2 Yは,本件訴訟で,本件各刀剣を所有していたこと及び本件各刀剣を占有していることを認めていたことを認めていたが

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「神は細部に宿る」と馬場弁護士

弁護士 辻本 恵太 1 神は細部に宿る 私の好きな言葉に,「神は細部に宿る」というものがある。私は,難しい局面を何とか突破しようと,頭をひねり続けることが大好きである。きっと,数学に狂い,プログラミングに明け暮れた学生時代から変わらないのかもしれない。 ところで,数学は,一発逆転の発想が突然に下りてくるように思えるが,そんなことはない。緻密にロジカルに発想を巡らせていたからこそのホームランなのである。 弁護士の仕事の中での裁判や交渉も,同様である。敗戦濃厚な局面でも何とか逆転できないか,頭をひねり続けるのが楽しい。とにかく冷静に,基本を大事に,細部にこだわる。細部の資料の検討,細部のリーガルリサーチ,細部の戦略検討。 裏を返すと,大ざっぱな事件の進め方が嫌いである。大ざっぱな資料の検討,大ざ

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前略 オレンジ様

営業秘書 田中真琴 こんにちは,現在育休中の秘書の田中です。オレンジ法律事務所で初めての産休・育休取得者となりました。産休・育休に関する手続等でご迷惑お掛けしておりますが,お陰様で,日々育児に専念できており,幸せな毎日を送っています。 さてこの度は,一旦仕事から離れてみて感じたことを書いてみたいと思います。 私のモットーのひとつに,「固定観念にとらわれない」というものがあります。 固定観念にとらわれている人は, 変化を恐れたり, 人からのアドバイスを素直に受け入れることができなかったり, できない理由を「○○だからしょうがない」と決めつけ改善を諦めたりする傾向がある ように思います。 このような仕事の仕方では,一緒に働く周りの人を困らせてしまうと思うので,固定観念にとらわれないで仕事をするよ

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アナロジー的な考え方と弁護士

弁護士 辻本恵太  今日の話もあまり,弁護士っぽい話はでてこない。 ただ,こういう日常を暮らしている,埼玉の一弁護士がいるのだなと思って読んでもらえればと思う。  先日,マイナスにマイナスを掛けるとプラスになるということが,姪が理解しにくいので,わかりやすく説明できないかと言われた。 マイナスにマイナスを掛けるとプラスになるなんて,言われてみれば,ちょっと浪漫を感じると,文学的な思いを馳せながら,姪への説明の仕方を考えてみた。 数が数直線上に表わされるという理由は,さておき,とりあえず数直線を使って説明するのがわかりやすいなと思って,次のように考えた。 (了)

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違法な仮差押命令申立てと債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなかったことにより喪失したと主張する逸失利益の損害との間に相当因果関係がないとされた事例(最高裁平成31年3月7日判決)

主文理由 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,上告人Xが,被上告人Yに対し,売買契約に基づき代金2813万8940円及び遅延損害金の支払等を求めるものであり,Yは,Xによる債権の仮差押命令の申立てがYに対する不法行為に当たるとし,これによる損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張するなどして,Xの本訴請求を争った事案である。 (1)上告までの経緯については,判決記載の通りであるが,Yは,日用品雑貨の輸出入及び販売等を目的とする株式会社であり,平成22年から平成27年までの年間売上高が26億円から57億円程度であり,同年9月当時,現金,預金債権及び売掛金債権だけでも16億円余りの資産を有しており,複数の大手百貨店との間で取引を行っていた。 Xは,Yに対し,印刷物等

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私の嫌いな時間

弁護士 辻本 恵太  嫌いな時間を2つ挙げてみた。 2つというのが,また,半端である。せめて3つにした方が印象が良いのは分っているが,無理に3つにしないところがご愛敬。 1 考えたいことと違うことを考えなければならない時間  正直,好き勝手,考えていたい。私は,とにかく考えることが大好きであるが,しばらくすると,考えていることは色々なところに展開していく。 私は,自分で,ある結論に向かって話をしているうちに,途中で,次々と新たに浮かんだことをはさんで話を展開し,気が付いたら,言おうとしていた結論自体を忘れてしまうなんてことがある。ひどい話だ。 私は,集中すると周囲が真っ白になるほど集中するのだが,反対に,相手の話が退屈だったり,ありきたりの話の繰り返しだったりすると,せめて頭の中だけは,別の

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つれづれなるオレンジ

弁護士 辻本 恵太 もう,折り返し? 気が付いたら,2020年も,折り返しにさしかかる。ここ数か月間は,本当に,頭をフル回転させ,つぎつぎ決断を迫られる期間だったと思う。きっと,他の法律事務所もそうだろうと思うし,他の企業も同様だと思う。 コロナの影響が出てくるまでは,秘書のリモートワークということは考えていなかったし,ペーパーレスもそれほど意識がなかったが,コロナは,まさに,それらにシフトするきっかけとなった。早々に,リモートワークが実現できたのは,いつもお世話になっている業者の協力と,オレンジ法律事務所の所属弁護士,その他の全てのスタッフのがんばりのおかげだとつくづく思う。 順風満帆? オレンジ法律事務所は,2012年に開所して以来,常に,順風満帆に思われているところがある。たしかに,お

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オレンジ法律事務所を支える事務局

秘書 松岡 こんにちは,秘書の松岡です。オレンジ法律事務所に入所して,1年が経ちました。担当する業務も増え,少しずつ周りをみて行動することができるようになってきました。 そこで,本日は私から見た事務局の働き方についてご紹介していきたいと思います。 オレンジ法律事務所では,2つの職種に分かれて対応しております。事件関係の業務を行うリーガル事務とパートナー弁護士の事件以外の業務を担当する営業秘書です。 リーガル事務では,事件管理や依頼者とのやり取り,資料作成等弁護士の先生方から依頼された業務を行っております。取り扱っている事件が多い分,リーガル事務の方の業務もとても多いですが,作業の一連の流れを整理したり,その日に担当する業務を分担するなどの工夫をし,日々多くのタスクをこなしております。 営業秘

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いわゆる機械学習を利用して生成されたアルゴリズムを適用して,入力された取引内容に対応する勘定科目を推測している会計処理製品が,発明の名称を「会計処理装置,計処理方法及び会計処理プログラム」とする特許権を侵害しないとした判例(東京地裁平成29年7月27日判決)

主文事実及び理由第1 請求第2 事案の概要第3 当裁判所の判断 オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 本件は,発明の名称を「会計処理装置,会計処理方法及び会計処理プログラム」とする発明についての特許権を有するXが,Y製品の生産等,Y方法の使用が同特許権を侵害していると主張して,Yに対し,特許法100条1項及び2項に基づき,Yによる上記各行為の差止め及び被告製品の廃棄を求めた事案である。 2 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1,10,13及び14記載の各発明を「本件発明1」,「本件発明10」,「本件発明13」,「本件発明14」といい,これらを総称して「本件発明」という。  なお,本件発明13を構成要件に分説すると,次のとおりである。  13A ウェブサーバが提供するクラウド

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契約書に訴訟についての管轄合意しかない場合に調停についての管轄合意があったと解釈されないとされた事例(大阪地裁平成29年9月29日決定)

オレンジ法律事務所の私見・注釈 弁護士 辻本恵太 1 基本事件は,X(相手方・基本事件申立人)が,Y(抗告人・基本事件相手方)との間でレンタル基本契約を締結した上,Yに対し建設機械等を貸し渡すなどしたにもかかわらず,Yが賃貸料等を支払わないとして,その支払を求めるというものである。  レンタル基本契約の契約書には,「合意管轄等」として,「この契約について訴訟の必要が生じたときは,大阪地方裁判所又は茨木簡易裁判所を管轄裁判所とすることに合意します。」との条項があるところ,Xは,本件条項における「訴訟」には「調停」も含まれるとして,茨木簡易裁判所に対し,調停を申し立てた。  これに対し,Yは,本件条項は,飽くまで,訴訟に関する管轄合意であって,調停に関する管轄合意ではないとして,基本事件の大津簡

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