私は,滋賀県で司法修習生をし,裁判官,検察官,弁護士,その他多くの方に大変お世話になった。勤務弁護士時代には,飯田秀郷先生,栗宇一樹先生,早稲本和徳先生をはじめ,多くの諸先輩弁護士に大変お世話になった。
7年前にオレンジ法律事務所を開所した際,法曹界への返せないほどの恩を,できるだけ多く,法曹界に後から入ってくるであろう後輩に返さなければと思ったことを良く思い出す。上から受けた恩を下に返すって,何だか学生のころの野球部みたいだ。
埼玉弁護士会の司法修習
ところで,オレンジ法律事務所には,毎年,埼玉地方裁判所に所属している司法修習生を2か月近く預る。そのため,オレンジ法律事務所で修習をし,東京,埼玉,神奈川などで弁護士になって活躍している人がすでに4人にのぼる。ここ数年,埼玉弁護士会に配属された60人以上もの全司法修習生全員を4班に分けて,泊まりがけで,事前に与えた民事弁護の課題の講評もしたりする。毎年,埼玉弁護士会所属の司法修習生全員と話ができるのは,幸せなことである。
知的財産や企業の相談などの「里子」制度
また,弁護修習が他の法律事務所に配属された司法修習生であっても,希望する者は,オレンジ法律事務所が1日,2日だけ預かったりする。埼玉弁護士会では,これを「里子」と呼ぶ。
オレンジ法律事務所が埼玉県では珍しく特許,商標などの知的財産に関する案件を取り扱うことや,顧問企業が多くて企業の予防法務や企業間の争訟が多いこともあり,オレンジ法律事務所への「里子」を希望する人がかなり多い。今年だけでも,15人くらいの里子を受け入れており,埼玉弁護士会の法律事務所の中でも,おそらく最も多いのではないかと思う。
知的財産の法律相談に一緒に入ったり,事業譲渡にまつわる訴訟等の企業間の訴訟の訴訟記録を見たり期日に同行したりする。オレンジ法律事務所へ里子を希望する人の傾向として,いわゆる渉外事務所と呼ばれる大きな法律事務所に内定が決まっている修習生や,裁判官を希望する修習生などが多く,好奇心だったりチャレンジ精神が強そうな修習生が多い印象がある。
法的なアドバイス < 経営的なアドバイス
企業の法律相談に立ち会った後に修習生に感想を聞くと,「あんなに経営面にまで入り込むのはびっくりしました」とか,「事業の内容,強みから,収支の中身,今後の事業計画などの話が新鮮でした」など,経営に関する助言をすることや,事業内容,スキームを素早く把握することに驚いている人が多く見受けられる。
企業の相談においては,相談された問題自体が,その企業の中でどのような位置づけなのかとか,どの程度重要なのかということが肝要であり,リーガルなアドバイスだけでは不十分で,自然と経営的な観点からのアドバイスになるのだと思う。
埼玉や大宮などの地元企業は,特に興味深く,弁護士としてできることは勿論,何か提供できるバリューはないかと,埼玉県民として,熱が出るほど頭を絞ったりする。
企業を通じて暮らしを豊かに
頭をひねりながら,何とか企業をリスクから救ったり,飛躍させようとしているせいか,修習生から,「法律相談なのに,暗くなくて前向きな感じがする」ということもよく聞く。
そう言われてみれば,私は,相談のとき,あまり神妙な雰囲気になりすぎず,ときに冗談を言ってみたり,一緒に頑張っていきましょうとクライアントに発破をかけたりして,できるだけポジティブな感じになれるようにする。もちろん,ときと場合は考えるが,必要以上に暗くならないように心がけている。
オレンジ法律事務所が顧問企業を助力し,その企業が埼玉県,日本国,ひいては世界の人々の暮らしにインパクトを与え,生活を豊かに変えることができれば,これほど楽しいことはない。オレンジ法律事務所を通じてそのような楽しく仕事ができることこそ,弁護士冥利に尽きるし,オレンジ法律事務所のスタッフにも,そのような感動を味わってもらいたい。
ことしの夏
毎年8月,この時期になると,慶應大学法科大学院からエクスターン生を毎年預かっていて,今年も,来る予定になっている。楽しみである。
何年かけても返せない法曹界への恩を今年は少しでも返せただろうか。
慶應志木高野球部の同期の集まりと,豊中野球部の同期の集まりがもうすぐある。
たまには上や下の学年の部員とも会って恩知らずだった自分を思い出したい。