田村のニュース紹介「元号と商標登録について」

広報担当 秘書 田村 司

いつもご愛読頂き誠に有難うございます。

ご存じの通り,オレンジ法律事務所は,埼玉県で,知的財産,ビジネス法務に強みを持っています。そして,ビジネス法務,一般民事など幅広い事件に携わって経験豊富な椿弁護士が着任いたしました。そして,顧問契約先へのニーズへの対応がさらに盤石となってまいりました。

さて,今回は,知財関係として,ニュースの「元号と商標」に焦点を当ててみました。

 

今の内に「新元号」や「平成」を商標登録しようと考えておられる方には残念ながら,商標登録を諦めなければなりません。実際の審査でも「昭和」,「大正」など過去の元号も商標登録は受け付けていないようです。

 

新聞記事によりますと次の通りです。

全ての元号 商標不可に  政府が新審査基準

政府は2019年5月1日の皇太子さまの天皇即位に伴う改元を控え,全ての元号の商標登録が出来ないよう審査基準を改める。菅義偉官房長官が2018年11月5日の記者会見で明らかにした。

19年2月をメドに商標登録できない対象を「現元号」から「元号」全般に見直す。改元前に公表予定の新元号や改正後に旧元号となる「平成」を利用した便乗商法を防ぐねらいだ。

特許庁は商標法に基づく商標審査基準で登録の要件を定めている。現行の審査基準は「平成」や「HEISEI」など「商標が現元号として認識される場合」は登録できないと規定する。実際の審査では現元号だけではなく「昭和」「大正」など過去の元号も商標登録は受け付けていない。例えば,明治ホールディングスや大正製薬のように世の中で広く認識されている企業名や商品名に限り,例外的に登録を認めている。これまでは明文化した基準がなかったが,現元号だけではなく全ての元号を商標登録できないと明確にする。・・・」日本経済新聞2018年11月6日(火)13版4

 

さて,「元号」とは何であろうか。あらためて調べました。元号制度は中国前漢(紀元前140年)で「建元」が使われ,日本では西暦645年「大化」と言われています。これは,権力者は,度量衡,通貨発行などの権限以外に,「時を支配する」という中華思想からはじまったようです。

そして,「時を支配」の形として「元号」を決めていたようです。

歴史を見てみると史書の編纂過程では,権力者の都合の良いように修正編纂されるようです。現在から将来には「元号」で支配,まさに時(過去,現在,未来)を支配する思想ですね。(呵呵)

ところで,忘れてはいけないものに,皇紀というものがあります。ご存じですか?馴染みがないと思われます。

神武天皇即位は西暦の紀元前660年と言われています。皇紀を計算するときは,2019年+660年=2679年になります。 今年は皇紀(神武天皇即位紀元)2679になります。

皆さんがご存じの「ゼロ戦」という名前は,2600年に命名した「零式艦上戦闘機」(海軍)というようです。「ゼロ戦」と並ぶものに「一式戦闘機」(陸軍)愛称「隼」,などや「紫電改」がありました。おとと! 話が脱線しました。

もう一つ,仏歴(仏滅紀元)があります。仏滅の年を起算に入れる方式(西暦紀元前544年)と翌年から起算する方式(西暦紀元前543年)があるようです。国により違いがあります。

最後に和暦以上に使われている西暦については,西洋諸国をはじめ世界で広く用いられている歴です。イエス・キリストが生誕したとされた年を紀元元年としているものです。

西暦を使うことに,キリスト教に「時を支配」された感がするのは私だけでしょうか。

 

先程の仏歴の起算で思い出しましたが,皆さん「数え年」の計算方法をご存じですか。

昔(私の子供の頃)は「数え年」で計算していました。生まれたときが1歳です。翌年元旦から2歳になるのです。生誕日を元年とする西暦の起算方法と似ていませんか?

生をうけて10月10日近く(約1年間)胎内に存在するので,生まれたら1歳とするのもうなずけるかな?そのように考えると,「数え年」はリーズネブルな計算方法かな?

なお,「年齢計算二関スル法律」と「年齢のとなえ方に関する法律」があり,「数え年」は使われないようになりました。しかし,明治,大正,昭和の初期の方々は「数え年」に馴染んでいます。「七,五,三」でも「数え年」で計算する場合もあるようです。

 

ふと頭に浮んだ一抹の不安・・・同じ漢字文化の中華人民共和国で「元号(和暦)」が商標登録されたものはどうなるのでしょうか? 「元号(和暦)」の商品が日本に輸入されたときはどうなるのでしょうか?当局は対処してくれるのだろうか?そのまま解決できないのかな?以前のブログ「私の好きな中国の商標登録」に掲載したように,日本酒の「南部美人」が中国で商標登録されていて解決まで10年の歳月を要したという事例がありました。

今回もお読み頂き有難うございます。皆様の知識に役立つこと,それが私の喜びです。

平成(和暦)生まれのお嬢様の和服のイメージイラストです。(深い意図ではありませんが,「和」繋がりでイメージ図と致しました。)

 

 

参考資料

 

商標登録,新元号も平成・昭和も出来ません 政府方針(朝日新聞)

https://www.asahi.com/articles/ASLC53TYRLC5UTFK009.html

 

元号に関する商標の取扱について(特許庁)

https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/gengou_atukai.htm

 

参考文献

小野昌延・三山俊司編「新・注釈 商標法 上巻 」(株)青林書院 2016年10月15日初版第1刷発行 p219

 

小野昌延・三山俊司編「新・商標法概説」(株)青林書院 2009年9月11日初版第1刷発行

P133

 

工藤 莞次著「実例で見る商標審査基準の解説 第八版」一般社団法人発明推進協会2015年9月15日第八版p121