情報の取捨選択と整理

弁護士 辻本恵太

新型コロナウィルスが猛威をふるい,緊急事態宣言が出されてから数日経つ。
安倍晋三首相は2020年4月11日、 首相官邸で開いた新型コロナウイルス感染症対策本部で 緊急事態宣言の対象7都府県の全事業者にオフィス出勤者を最低7割削減するよう要請した。
オレンジ法律事務所は,埼玉県さいたま市にあるので,対象7都府県の事業者としてオフィスへの出勤者の削減を日々続けているが悩みも多い。

誤った情報。振り回されない,ばらまかない

こういう状況下において,自宅で待機したりリモートワークを続ける国民にとって,重要な情報であるが,溢れんばかりの情報量の多さに,消化不良を起こしてる人も多いのではないかと思う。人々が不安になっているときに横行するのが,その不安をあおり,心の隙につけ込む詐欺等である。助成金の詐欺などには気をつけたい。

こういうときに,まず,気をつけなければならないのは,根拠のない情報に振り回されてしまうおそれ。もう一方で気をつけなければならないのが,根拠のない情報をばらまいてしまうおそれ

弁護士に求められる能力の1つとして,情報の信用性を判断することがあると思うので,基本的な考え方を述べたい。

誰が発信?

まず,情報の信用性を判断する上で,重要なのは,誰が情報を発信しているかである。官公庁が発信している情報であれば,一般的に信用性が高いであろう。また,コンプライアンスなどがしっかりしている企業等の情報も信用性が高いものが多い。

いつの情報?

次に重要なのは,その情報がいつ発信されたのかである。
普遍的な情報というものはあるかもしれないが,情報の価値は,刻一刻と変わる。今回の新型コロナウィルスにまつわる膨大な情報も,発信された時期によって,その価値が薄れていく。
そういう意味では,ここ最近,連日書いているこのブログも,後になれば,情報としての価値が薄れていくものもあるし,また,今回のブログのように,価値が残るものもあるといえよう。

その他,何のために発信されたのかどのような媒体で発信されたのか客観的事実と主観的な意見・評価が分けられているか,などは重要である。

弁護士らしいことを言うと,民事訴訟において,契約書のような文書を証拠として提出して書証の申出をするときは,作成者を明らかにした証拠説明書というものを裁判所に提出することになっている(民事訴訟法規則137条1項)。この規則が証拠説明書で明らかにすることを求めているのは,文書の標目,作成者及び立証趣旨であるが,裁判所としては,作成日も証拠説明書に記載することを求めている。 いつ,誰が作成した文書なのかが重要だからである。

(民事訴訟法規則)第百三十七条 文書を提出して書証の申出をするときは、当該申出をする時までに、その写し二通(当該文書を送付すべき相手方の数が二以上であるときは、その数に一を加えた通数)を提出するとともに、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目、作成者及び立証趣旨を明らかにした証拠説明書二通(当該書面を送付すべき相手方の数が二以上であるときは、その数に一を加えた通数)を提出しなければならない。・・・

情報源にあたれるか

このようなことを考えると,そもそも情報源にあたれるかということが重要であることがわかる。インターネット上の情報であれば,情報源のサイトに直接リンクが貼ってあれば,容易に情報源にあたることができる
他方,直接リンクが貼られておらず,テキストデータとして情報が発信されている場合は,要注意である。途中で一部が加工されて,情報が変容しているかもしれないからである。

そういう意味で,拡散希望などと書いて,テキストで情報がコピーされているようなものは,かなり注意が必要である。
知らず知らずのうちに,善意なる気持ちで,誤った情報を拡散しないよう気をつけなければならない。

調査と情報の整理

弁護士に求められる能力として,他に,各種調査をする能力と,情報を整理する能力がある。
これは,日々,弁護士業務の中でしていることである。
私は,理系であることもあってか,概念を整理したり,情報を整理することは,好きな方である。分類好きと良く言われたりする。
もっとも,世の中には,いまの新型コロナウィルスの情報を非常に合理的にまとめてくれるサイトがあり,そこから情報をアクセスするのが,効率的である。
また,情報量としては少ないかもしれないが,全体を俯瞰するのに役立つように,情報をコンパクトに整理しているサイトもある。
最後に,少しだけ,そのような素晴らしい情報整理をしているサイトを紹介したいと思う。

●新型コロナウイルス感染症 ご利用ください お役立ち情報(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/coronavirus_index.html
(1)ご自分やご家族の健康不安の解消策,(2)マスク、消毒用アルコール、トイレットペーパーの不足,(3)どのような薬を期待できるのか?また、それらの薬の開発、実用化の目途は?費用負担は?,(4)生活資金の枯渇、事業の売上の激減への対応策・・・。

●新型コロナウイルス対応関連情報(日本弁護士連合会)
https://www.nichibenren.or.jp/news/year/2020/topic2.html
相談窓口,全国各地の弁護士会の関連情報などのお役立ち情報。

● 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報(西村あさひ法律事務所)
https://www.jurists.co.jp/ja/news/covid19_links.html
基本情報,官公庁関係,業界関係。

◇新型コロナ対策支援カード(弁護士永野海 法律と防災のページ)
http://naganokai.com/c-card/
生活費・家賃,休業の支援,その他。

(了)