営業 秘書 田村 司
さいたま市大宮のオレンジ法律事務所に勤務し6か月経ちました。
娘と家内の会話に聞き慣れない言葉が出てきました。
埼玉県の言葉か?聞いたことは無い。
どこの国の言葉だろうか。「ヘーホンホヘホハイ」の意味がわからない。
国語辞典と英和辞典で調べたがやはり分からない。
私だけが家族から取り残された恐怖が襲ってきた。
とうとう認知症かな,言語中枢が狂ったかな,内耳器官がおかしくなったかな。
「ヘーホンホヘホハイ」を知らない。恥ずかしい!
聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥
そこで自尊心を捨て,恥を覚悟で,低姿勢で,家内に言葉の意味を質問しました。
(この時点ではことばの通訳かな?)
家内の回答・・・『これは揚げたての熱いベーコンポテトパイを口に頬張った状態で,「何を食べているの」と質問されて,答えた言葉が,「ヘーホンホヘホハイ」であり,それを商品としてコマーシャルしている。』とのことでした。
「そうか,そうなのか。」と安堵感に満たされました。
翌日,家内はマクドナルドさんで実物(論より証拠)の「ヘーホンホヘホハイ」を買ってきました。
冷めていましたので「ベーコンポテトパイ」と発音して食べました。
冷めても美味しかった(あくまでも個人の感想です)。
笑い話に,在る外国人が畑に入って芋を触っていたら,農家の者が怒った口調で「今何時だ。」と聞いてきた。外国人は時刻を答えたが,また再度「今何時だ。」と農家の者が聞いてきた。実際は何と言ったのか。
農家の者は「掘った芋弄くるな」と言ったのです。
あら不思議!!“What time is it now.” と聞こえます。
「だじゃれ」は日本の専売特許かなと思っていましたが,英語にもありますね。
「ice-cream」を「I scream」と言って会場を笑わせる場面がありました。
これからSerious storyになります。
寄席は言葉による笑いを稼業としていますが,笑いでは済まない言葉の通訳という職業もあります。
そこで,「法廷通訳人は大変な職業である。」についてお話します。
その前に,最初は,私の失敗談です。
大学の卒業論文作成(物理・光学)のため外国の文献を訳す必要があり,自力で訳したら,全体の文章が意味不明になったことがあります。
皆さん「Pencil」をどのように訳しますか。
私は,最初「鉛筆」と訳したのですが,論文が意味不明となりました。
再度,辞典を隅の隅までみたら,最後に「(光学)光束」とありました。
文献を「光束」で訳すと文章が理解できました。誤訳の苦い経験であります。
これも二目の実例です。私の前勤務先での話です。
通訳という高尚な話でなくとも,日常の会話の相手に意思が通じないことがあります。
月末に「急用」が出来て,休暇をとることになりました。同僚から,「どうしたの」と聞かれて,「急用」があるためと言ったが,『どうして「きゅうよう」で休むのか,忙しい月末に「きゅうよう」で休むのは理由にならない』と言う。
後で分かったことであるが同僚は「休養」と捉えて居たようであります。「休養と急用」で齟齬(食い違い)が起きていたのです。
このように,日本語でありながら,会話のなかで,お互いの意思が通じない事もあります。
三つ目の失敗談です。
「JK」は何かご存じですか? 私は,第35代アメリカ大統領 ジョン(F)ケネディと思って確認しましたら「女子校生」のことです。
これがGeneration gap かな?
法律専門用語でも,通常用語と違う意味をもっている場合もあります(例,善意,悪意)。
法律以外にも,被告人(外国人)の方言,なまり,文化,経験など色々なことが複雑に絡み,通訳は本当に大変と思われます。
そのような大変なお仕事を法廷通訳人はされていると思います。
毎月購入の『月刊弁護士ドットコム Vol 25』のP24の中に通訳の記載がありました(「2012法廷通訳の仕事に関する調査報告」静岡県立大学法廷通訳研究会)。
調査報告によると
通訳のとき,「わかりにくい話し方」として,
1,「難解な語彙を使う」
2.「法廷独特の言い回しを使う」
3,「発言の意図がはっきりしない」
4,「センテンスの構造がわかりにくい」
5,「ひとつのセンテンスが長い」
等との調査結果のようです。
「法廷通訳人が感じる心理的負担では,公の場で通訳するプレッシャーと誤訳に関するプレッシャーのふたつに多くの票が集まっている。他人の目に晒されながら,誤訳をして批判されるのではないかと不安になりながら,さらに誤訳をしてしまったら被告の人生を変えてしまうかもしれないというプレッシャーと戦いながら彼らは法廷に立っている。」
「あれから5年が経ち2017年にもう一度さらにブラッシュアップした内容のアンケート調査を実施したのですが,通訳人の高齢化が進んでいる現状が浮き彫りになりました。(高畑准教授)」
「このまま若い世代の新規参入が見込めず高齢化が進んでいった場合(特に少数言語),外国人の要通訳事件の法廷が開けなくなってしまう可能性すらある。」
「(現状の制度では)他の仕事に流れてしまいます。法廷通訳人専業では生活できず,兼業でしか携われません。そうなると層が厚くなりません。(杉山弁護士)」
以上,抜粋を「 」で表示しました。
翻って,日本人が海外での犯罪に巻き込まれた場合,自分の主張を通訳人が日本語をよく理解できないため,誤訳され,冤罪で服役することになったという新聞記事を読んだことがあります。
法廷通訳人はそれだけ大変で誤訳が許されないプレッシャーを持ちながら仕事をしています。
個人的提案ですが,誤訳防止策として,Buddy systemを提案いたします。
(バディシステムとは海兵実習などの安全管理法の一,常に二人が組になってお互いに助け合いながら行動し,事故を防ぐもの。)
これらは司法行政の問題と思いますので言及はここまでとします。
なお,当事務所も接見などで,法廷通訳人の方々にお世話になっています。
当事務所のパートナーの辻本弁護士は,他のアソシエイト弁護士へ,
上記のような分かり易い訴状の作成を日頃から徹底しています。
事務所の体制として,従来から,一件の事件に複数の弁護士で対応するなどの
バディ体制を実施しています。
今回のブログ作成にあたり,参考文献等の著作権について辻本弁護士,片山弁護士の指導を頂きました。両弁護士は経歴の通り知的財産を得意としています。
特許,商標等の知的財産でお困りのときは是非,ご相談ください。
あらためて,私は,法廷通訳人の方々に,敬意と謝意を申しあげます。
これからも,心からから応援しております。
このブログをお読み頂き,私の声援が届きましたらそれが私の喜びです。
最後まで,お読み頂き有難うございます。