誘惑に負けがち

弁護士 辻本恵太

 数回連続で裁判例の解説を書いたが,法律的な文章は書きやすい。
 ただ,そればかりだと,ちょっと味気ないので,私のオレンジ法律事務所での仕事や,自宅での過ごし方について紹介したい。大宮のとある法律事務所の仕事風景だと思って,気楽に読まれたい。

1 リモートワーク 

 ここしばらく,オフィスに行くことが週1,2回で,後はリモートワーク生活が続いている。秘書も半分近くがリモートワークなので,オフィスにいるのは,ほんの数人である。
 なお,リモートワークの際,外部からVPN接続で事務所内ネットワークに接続したり,やむを得ないときは事務所の端末にリモートログインをする。
 私は,仕事も生活圏も大宮なので,リモートワークをする必要がないように思えるし,事務所が居心地が良いので事務所に行きたくなるが,事務所という場所に縛られないことは,魅力ではある。

 そういえば,リモートワークで変わったものといえば,服装である。仕事時は,トラディショナルな格好が好きなので,紺のかちっとしたスーツで夏でもネクタイを外すことは殆どなかったが,自宅でのリモートワークになってから,私服で働くようになった。家でスーツは着たくない。ちなみに,わたしの私服は,特徴的だと言われることも多く,そう言われるのも,やむなしと思う。ビデオ会議で写る私服姿の私に,すかさず指摘を入れる顧問先の企業の方も少なくない。

2 事件記録の管理

 事件記録の管理は,完全に移行することはできていないものの記録のデータ化を進めている。
 これは,東京地裁では今年の2月から始まった裁判手続のIT化にも親和性があると思う。PDFファイルとして管理しているが,PDFファイルの編集ソフトの操作方法を熟知すれば,紙資料よりもスピーディーにデータにアクセスできるのではないかと思う。
 なお,後にでてくるRPA(Robotic Process Automation)を使って定型業務をオートメーション化するためにも,記録のデータ化は重要だと考えている。

3 スタッフ間・顧客とのコミュニケーション

 少なくとも現時点において,スタッフ間のコミュニケーションやプロジェクト管理には,主として,Slackを使い,顧問先企業とのコミュニケーションは,主としてchatworkを使っている。いずれも,音声通話,ビデオ通話を使い分けているが,音声通話で十分なことが多い。ただ,ファイルのちょっとした共有にしても,短いメッセージにしても,chatworkを使うと,私が,早く対応できる場合が多いぜひ,多くの関係取引先企業の社長,担当者とは,chatworkで繋がりたい

 そういえば,入力方法も,キーボードでの入力,フリック入力,そして音声入力の3種類を使っている。私は,プログラミングをしていたときのクセで,キーボード入力の方がフリック入力よりも,まだ速い。それでも,音声入力はかなり速いし魅力的であって,所内での報告やチャットにはオススメである。

 また,事務所内でのミーティングや,顧客との法律相談などのミーティングは,9割方,種々なWEB会議システムを利用して行っている。Zoom MeetingsGoToMeetingWherebyMicrosoft Teamsなどである。

 ちなみに,最近,弁護士やリモートワークをする秘書と一緒に,3時のおやつタイムオレンジ・ティータイムをすることがある。各々,飲み物やお菓子を用意して,30分くらい雑談をするのである。リフレッシュできるし,ふと仕事から距離を置く感覚は楽しくもある。先日,大宮のオレンジ法律事務所と,滋賀のミカン法律事務所と合同で,オレンジ・ティータイムをした。中野先生も大宮を懐かしんでいたと思う。

4 データベース,RPA等

 ここ数年,Microsoft Accessでデータベースを構築し,オレンジ法律事務所の営業管理事件管理,顧客管理費用管理をし,日々,アップデートされる数字を見ている。Microsoft Accessは,汎用的なリレーショナルデータベースのアプリケーションである。興味深い数字を見いだすべく,ときにはSQLを書いたりしながら,データーベースを毎月のように更新し続けている。
 私は生来,数字,割合,確率などを見ていること自体が好きである
 そういえば,イチローが現役のとき,微かな変化しかないイチローの生涯打率を,毎日毎日,見るのが楽しみだったのをを思い出した。

 また,Excelのマクロや,UiPathというPRA(Robotic Process Automation)を使って,定型業務の自動化し,業務効率化を図っている。私ではなく,誰かがこれらの業務の自動化のシステムを構築してくれる方が,オレンジ法律事務所全体にとって労働生産性が高まるということは私も分ってはいる。分ってはいるのだが,取り敢えず,自分でやってみたくなる。そして,深みにはまってしまう。

 だんだん趣味に近くなってしまう。
 大学の村井研時代の研究室仲間にあったときにUnityを勧められたのを思い出して,取り敢えず,自宅のPCにインストールしてみた。どうもUnityとは,IDEを内蔵するゲームエンジンのようである。大学時代,C言語が好きで,Visual C++などで開発をしていたが,Unityでは,Visual C#でコードを書く必要があるみたいである。C#は,オブジェクト指向プログラミング言語らしく,一度もコードを書いたことがないがやっぱり面白そう。もはや,完全に弁護士の仕事とは無関係で,無理矢理こじつけることも難しい。

デジタルの波に飲まれるイメージ

5 さいごに

 最後に,私は,元来,面倒くさがりで,仕事の環境を整えること自体は,それほど好きではないし,得意でもない。物理的なものを設置したり,設定するのは苦手意識もある。

 他方,プログラミングは,自分にとっては,やり始めると,ついついはまってしまう魔力がある。久しぶりにプログラミングをしてみても,はまっていく感覚が蘇る。

 ただ,弁護士の仕事というものは,交渉にしても,文書を起案するにしても,何十件も同時並行で進行することができるものではあるが,プログラミングは,できれば中断せずに連続して取り組みたいものであり,複数の案件を同時並行で進めるのは難しい性質のものだと思う。
 そういう意味で,弁護士にとって,私にとって,プログラミングは,まさに禁断な果実だと思う。

 それにしても,リモートワークは,誘惑が多い。
 誘惑に弱い私は,たやすく,誘惑に負けるが,悪い気はしない。
 のんびりブログを書いているうちに,本日,緊急事態宣言が全面解除が宣言された。
 働くということを否応なしに考えなければならず,色々な工夫をし続けた1か月半。
 この1か月半,オレンジ法律事務所の全スタッフが,ひたむきに,様々なことに対応してくれて,本当に感謝している。
 自分にとっても,人生にとって大切なものは何かとか,自分自身を顧みたりできた1か月半であったが,オレンジ法律事務所も新たなステージに進みたい。

(了)