元銀行員の田村が語る「通貨と仮想通貨」

広報担当 秘書 田村 司

いつもご愛読有難うございます。

元銀行員ということで,同僚から「仮想通貨」について時々聞かれます。

正直に言って分かりません。日本にも31社の仮想通貨交換業者があり,世界に1,000種類相当の仮想通貨が存在しますので,把握出来ていません。

その「仮想通貨」なるものの正体は聞かれても実体が掴めないので,判断が難しいのです。

その「仮想通貨」をしばらく,「仮装通貨」と思っていました(笑い,呵呵)。

 

そして質問者には「その『仮想通貨』なるものが,何によって担保(保証)されているか不明です。値上がりするということは,値下がりもありうる。リスクを考えると,個人的には,お勧め出来ない。」と銀行生活46年の経験上のアドバイスをしていました。

そして,金融機関等など,「信用」で成り立っている企業は,健全な経営をしていても,風評被害による信用毀損を起こす可能性もありますので,明確な回答は出来ませんでした。

金融庁・財務局の仮想通貨交換業者登録一覧を確認しましたら,「金融庁・財務局がこれらの仮想通貨の価値を保証したり,推奨するものではありません。(H30.1.17現在)」との注意喚起もありました。

次のような仮装紙幣を作りました。芸術品としての価値がでるかな?(笑い呵呵)

ところが,最近,大変な事件が発生したことが新聞報道されました。

仮想通貨交換業者の大手「コインチェック」から580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出したという事件です。

そこで,仮想通貨とはどんなものか,調べて見ました。詳細については専門家,参考文献,新聞記事を抜粋して後述してありますので,ご判断の資料にして下さい。

 

その前に元来の「通貨」について調べましたのでお付合い下さい。

 

通貨(貨幣)は元来,取引を簡素化するために考え出されたものです。

そして,その機能としては,①価値尺度のため,②価値の貯蔵手段,③交換手段があります。(貝塚,P19)

 

過去の江戸時代の通貨制度というと,金(小判,一分判),銀(丁銀,小玉銀)および銭(寛永通寶)の三貨制度で,両替の比率は変動相場であったようです。

 

その後,明治初期国立銀行条令に基づいて国立銀行がそれぞれ銀行券を発行していました。その後1882年に公布された日本銀行が中央銀行として定められ銀行券は中央銀行のみが発券できるようになりました。

皆さん日本銀行券だけ発券されたと思っていませんか,じつは,戦前に政府紙幣がありました(私の所有する古紙幣の中に政府紙幣がありました)。

しかも,近年,デフレ脱却のため,政府紙幣の発行が検討された時期がありました。

戦前の横文字は右から読んでいきます。(理由,縦書きが基本で,右から左に向かって書いたからです。)

180207 政府紙幣イメージ図

そして,戦前,金本位制度の時期に兌換券が発行されました(私の所有する「拾圓」札の中央に「此券引換 金貨拾圓 相渡可申候」とあります。その当時の壱圓貨は金1.5gのようです。今交換できたら75,000円(1g=5,000)相当になります。でも残念ながら今は金に交換してもらえません。額面の10円の価値しかありません。

通貨の原則論から言うと,「この通貨」は通貨の機能は果たしていないと思われます。

①貨幣価値が暴落しているので,変動する物差しで測ることは出来ない。

②貨幣価値が変わるから価値貯蔵にはならない。

③約束通り金貨に交換してくれない。

これは,通貨のみ所持せず,財産を「ポートフォリオ」で防衛しなければならない教訓です。

180207 兌換券イメージ図

実は通貨(紙幣)を発行せずとも,銀行による「信用創造」機能(森野・P24により,金が生み出されていることをご存じですか。通貨を発行しなくとも,銀行による「信用創造」により,経済が膨れあがったのです(銀行のもの凄い貸出し競争が発生)。日本の経済に米国は自己資本に規制(自己資本比率)をかけてきたのです。融資枠は減り貸しはがし,銀行の倒産,合併,債務超過に対する資本金の注入,などにより,ここから失われた20年が始まりました。異常といえば異常な経済でした。今まで経験のないデフレによる日本経済の縮小がその後,はじまり,現在にいたるのです。

現在は国際統一基準(BIS規制)で8%,国内基準4%となっています。

そして,通貨(マネー)は紙幣などとして発行したもの以外に色々な形態で存在します。

M1,M2,M3,広義流動性など4つの指標(マネーストック統計)があります。

 

「信用創造」には興味を持たれる方もいらっしゃるでしょうが,紙面の関係省略させて下さい。

このように,経済の血液の役目が「通貨」であり,銀行はその「血液たる通貨」を還流させる役目をしているのです。

 

そして,メガバンクも「仮想通貨」に参入又は構想を持っているようです。

みずほ・ゆうちょ・地銀が新仮想通貨「Jコイン」構想(2017.9.19日本経済新聞)。

Jコインの強みは決済データの活用として,Jコイン管理会社は利用者の買い物や送金の履歴をビックデータに蓄積する。それを匿名データに加工して,他の企業や銀行と共有して商品開発や価格戦略に活かすようです。決済ビジネスは世界基準を競い合う時代でもあり,グローバル戦略を考えた構想のようです。なお,Jコインは売買価格が変動するビットコインなどと違い円と等価交換できる仮想通貨のようです。なお同様のものとしてMUFGコインというものがありますが,Jコインとの統合は未定。

仮想通貨が通貨として機能しサービスが成り立つ上で非常に重要な技術といわれているのが「ブロックチェーン」のようです。ただし処理速度に難点があり,データを分散管理することや,リアルタイムでの処理が行えないため,即時決済を行うシステムでの活用が課題のようです。

しかし,世界の流れは「仮想通貨」の規制の方向で動いているようです。

 

今,オレンジ法律事務所は弁護士7名体制になっており,弁護士全員が刑事事件の対応が整っています。なおオレンジ法律事務所の辻本弁護士は,弁護士資格取得の前は。コンピュータのプログラミング(C言語,JAVA言語,ネットワークプログラミング)などを大学で手掛けて,得意とするところです。被害に遭われないと思いますが,万が一,お困りのことがございましたが,早めにご相談下さい。

 

 

 

 

もっと情報をお知りになりたい方はお読み下さい。

以下は参考文献と各専門家の「通貨」と「仮想通貨」の意見・考え方を掲載したものです。

 

カビール・セガール著者 小坂 恵理 訳者

『貨幣の「新」世界史』(株)早川書房 2016.4.20 初版 P234,244~247。

「金,そして時には現金まで,退蔵したがる傾向からは,価値の貯蔵手段という貨幣本来の役割が思い出される。」(カビール・P234)

「テクノロジーが貨幣の定義を作り変えている最も顕著な例のひとつがデジタル通貨のビットコインだろう。2008年の金融危機の後,中本哲史を名乗るひとり,又は複数の人物によって創造されたもので,P2P型の接続性を利用した分散型の通貨といえる。」(カビール・P244)

「ビットコインが通貨として,永続的な力を持つのか,あるいはほかの代替通貨のように消滅するのか,原時点では判断できない。価格変動はすでに経験している・・・ノーベル経済学賞を受賞したポール・クレーグマンはこの不定性に注目し,価値貯蔵手段としての信頼性に欠け,貨幣の本来あるべき姿からはかけ離れていると指摘している。(カビール・P245)

「2014.3 マウントゴックスがハッカー行為を受け,5億ドル近くの資産が失われた。

2013.10 シルクロードはオンラインの闇市場で書籍や違法薬物などの商品の取引をビットコインのみで行われ,ビットコイン財団の元副理事長がマネーロンダリングした罪で起訴された。

2014.3 IRS(内国歳入庁)が税金に関して,ビットコインを通貨ではなく,資産として扱うことを規定した。・・・

要するに,アメリカは貨幣に及ぼす支配力を武器にビットコインの使用を抑制・支配している。

2013.12 中国の中央銀行は支払いにビットコインを使わないように支払い処理業者に警告し,ビットコインの取引に関わった銀行を懲戒処分にすると脅した。」(カビール・P246)

「・・・ビットコインは単なる通貨ではなく,プロトコルである。従来,デジタル通貨は二重支払いの問題に悩まされてきた。・・・」(カビール・P247)

 

チャード・タウスウエイト著者 馬頭忠治,塚田孝三訳者

『貨幣の生態学』(株)北斗出版 2001.7 初版 P28,P83,P123,

「ほとんどの国の為政者は自らの発行した通貨を税の形態として使ってきた。」(リチャード・P83)

 

森野 英一監修 あべよしひろ・泉留維 共著

『だれでもわかる地域通貨入門』(株)北斗出版 2002.10.15 初版4刷 P17,P24

 

フェリックス・マーテイン著 遠藤真美 訳者

『21世紀の貨幣論』 東洋経済新報社 2014.9.26  P76,P91,P104

 

貝塚 啓明 著

『金融論』(財)放送大学教育振興会 1997.2 第2刷

 

黒田 明伸著『貨幣システムの世界』(株)岩波書店 2003.6  3刷 P19

一国一通貨の原則の歴史性はこの原則が,原則として普及したのは極めて現代的事象である。」(黒田・P179)

 

「率直に言って,ビットコインなどの仮想通貨をドルや円などの法定通貨と同列の『通貨』と認めることは出来ない。・・・『投機商品』の域を出ていない。・・・ビットコインはいとも簡単に分裂し,イーサリアムは過去に一時価値がほぼなくなった経緯がある。安心して取引され,強い信認を有するドルやユーロ,円にはほど遠い。宝飾,工業用の『実需』がある金とも違う。日銀,FBR, ECBも同じ考えだと思う。今後西アジアやアフリカの一部地域のように送金手段がない場所では自国通貨の補助手段として,使われるかも知れない。

『MUFGコイン』のように円との交換比率が固定され,安定性を高める仕組みには期待をもっている。『ブロックチェーン』の技術の応用で金融機関のコスト削減に寄与しそうだ。」(2017.10.5 日経新聞 渡辺博史・国際通貨研究所理事長談)

 

仮想通貨とは? 電子データ 世界に1,000種類

相場の上昇局面では仮想通貨で儲けた」という話がインターネット上で広がり一部の若者らの間でブームとなっている。リスクを深刻に考えずに大金を投じるケースも出ている。

(2018.1.28(日)讀賣新聞P2 13S)

 

仮想通貨 脆弱なバブル 「底値ゼロ」裏打ちなき決済手段

顧客からコイン価格の変動に即応した儲けを求められる交換業者は取引速度を速めるためハッキングの危険を知りながら,サーバーをオンラインに繋げているケースがある。・・・価格が乱高下する資産は決済手段として不適切だ。・・・儲けを狙う投機家にはうってつけだ・・・仮想通貨交換の「匿名性」は見直すべきだ。脱税や麻薬売買で違法な収入をうるのが簡単になる。経済制裁を受けている北朝鮮に資金が流れるかもしれず大問題だ。

(国際経済学者の竹森俊平慶應大学教授の解説)」(2018/02/02 讀賣新聞 P6 12版)

 

仮想通貨 世界で逆風 交換業禁止や規制強化進む 相次ぐ盗難 投機対象

インドのジャイトリー財務相は議会で「政府は仮想通貨を法定とは見なさない」とのべた。・・・中国人民銀行は2017.9 企業などが独自の仮想通貨やコインを発行して投資家から資金を集める「IOC」を全面的に禁止した。仮想通貨の交換自体も事実上禁止し,交換業者は閉鎖に追い込まれた。中国当局は金融市場への悪影響が理由としているが,海外への資本流出に歯止めをかけるためとの見方もある。インドネシア中央銀行は2018.1,仮想通貨の交換を認めない姿勢を示した。欧米も規制を検討している。・・・」(2018.2.3 (土)讀賣新聞 P3 13S)

 

「交換業者審査体制 強化へ 金融庁 コインチェック立入

改正資金決済法に基づく立入検査に着手した。コインチェックを除く31社の仮想通貨交換業者から顧客の資産をどのように管理しているか報告を受けた。・・・」(2018.2.3 (土)讀賣新聞 P1 13S)

問う 仮想通貨 交換業者 リスク丁寧に説明を  弁護士斎藤創 氏 44

・・・自主規制で対応が望ましい。交換業者に対する規制は①広告宣伝②情報開示③セキュリティ④マネーロンダリング(資金洗浄)の4点が考えられる。(2018/02/06(火)讀賣新聞 P7 13S)

 

「企業が独自の『コイン』などを発行して,事業資金を調達する「ICO」について国内の業界団体が自主規制に乗り出すことが分かった。IOCはインターネット上での資金調達手段の一つ。振興企業でも事業計画を示すなどすれば,世界中の投資家から資金を集められるとのふれこみで,各地で爆発的に流行している。だが投資家から集めた資金を持ち逃げするなど悪用される事例も多い。金融庁は昨年10月,利用者に注意喚起する文書を公表した。

(2018/02/06(火曜日)讀賣新聞P7経済13S。