営業 秘書 田村 司
また奇異に感じるテーマで申し訳ありません。自分の財産なのに,何故?
自分のものを取り返すのは何故だめなのでしょうか。通常,我々一般人は,だれのもの(所有権)という権利で物事を考えています。しかし,結論から申しあげます。自分の所有物であっても,力ずくで他人からとることは許されないのです。
裁判などの司法手続をとらず,実力で権利回復を図ろうとすることを自力救済(自救行為)といいます。
日本は法治国家であり,法秩序を乱す自力救済(自救行為)は許されないのです。
法律は占有と所有のどちらを優先保護しているのでしょうか。
占有権とは事実上の支配で,自己のための意思と物の所持が要件となります。
所有権は法令の制限内において,所有物と直接・全面的に支配して使用・収益・処分する権利をいいます。
法律は占有を優先していると思われます。理由としては,民法がまず,わざわざ「所有権」の保護規定の前に「占有権」の保護規定を置いていることです。
自力救済(自救行為)の原則禁止は,根拠となる法律条文がないのですが,その表れとして,刑法242条が,自力で権利を奪いとることを禁止し,法的手段として民法200条(占有回収の訴え)によるものと規定しています。もっとも,正当防衛(刑法36条)に準じる緊急性と必要性がある場合は自救行為が許される余地があると考えられており,それを認めた判例もあります。
なお,判例でも,自己の財物に対する他人の占有は,法律の正当な権限に基づくものであるかを問わないと判示しています(最判照34.8.28 刑集13-10-2906)。
ちなみに,紙幣(日本では日本銀行券)と貨幣の金銭については,所有権と占有権が一致すると考えられています。
物権を本権と占有に分けることができます。
本権とは占有を法律上正当づける権利(所有権,地上権,賃借権等)のことをいいます。
つまり,ある物を占有している場合,本権があれば,その占有は法律上正当な理由があることになります。
しかし,本権があるかどうかは外見上(外観上)判断がつきませんから,物を占有している状況があればその占有が本権に基づくことが法律上推定されます(民法188条)
その結果,不法な占有者からその物を買った者がその物の所有権を取得してしまうこともあり得ます(民法192条)。このときは自分の所有権が無くなってしまいます。
このように「自分のものを持っている他人」は,誰からか買取った結果,その物の所有権者となり,自分はその物の所有権を失ってしまっている可能性もあります。
これらの対応に関しては,最初から,弁護士に相談のうえ,対応を協議しながら進めるのがベターと思われます。第三者に売却処分されて,また占有者が代わって,交渉が難しくなる可能性もあります。
当オレンジ事務所では刑事事件,民事事件に関しては,弁護士全員が豊富な経験を持ち相談対応できます。自力救済をしないで,必ずご相談してください。
権利関係が複雑ですと,証明資料に基づいて判断の上交渉が必要になります。
今回のブログ執筆に関しては,片山弁護士に加筆・訂正などのご指導頂きました。
皆さんのお役に立ち,喜んで頂くことが,私の喜びであります。
最後までお読み頂き有難うございます。