弁護士 片山輝伸
冒頭に貼り付けた動画は,YouTubeなる動画投稿サイトに投稿されている動画です。
この動画は,2011年頃,JR総武線の車窓から万世橋駅跡を俯瞰的に撮影され,編集されて作成されたものです。
私は,以前,埼玉県は大宮にあるオレンジ法律事務所で営業事務を担当しているという女性から,動画投稿サイトの動画を,埋め込み用タグを用いてブログ等ウェブページに貼り付けることは,当該動画をウェブページ上に複製(コピー)している(ウェブページデータが記録されているサーバに複製している)ことになり,動画の著作者の複製権(著作権法21条)を侵害しているのではなかろうかとの質問を受けたことがありました。
言われてみると,確かに,上に貼り付けた万世橋駅跡の動画は,このブログ(のサーバ)に複製されたものであるかのごとく見えます。
私は,万世橋駅跡の動画を,撮影者(著作者)に無断で複製したあげく,配信してしまっている,つまり,著作者の複製権を侵害し,公衆送信権(著作権法23条1項)をも侵害してしまっているのでしょうか。やばいでしょうか。
そこで,判例を調べてみると,この質問に答えるような判例がありました。
大阪地裁平成25年6月20日判決は,ニコニコ動画という動画投稿サイトに投稿された動画を,他の記事を載せたウェブサイトに貼り付たことに関して,「本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる」と述べました。そして,この判決は,本件動画を送信した主体に関して,「『「ニコニコ動画』の管理者であり,被告(本件ウェブサイトの管理者)がこれを送信していたわけではない」と述べています。
つまり,動画投稿サイトに投稿された動画を他のブログ等ウェブサイトに貼り付けることは,当該動画をブログ等ウェブサイトのサーバーに複製する行為ではなく,公衆送信する行為でもないということになります。
言い換えると,私の視線の先にある万世橋駅跡の動画は,このブログ(のサーバ)にコピーされた動画ではなく,動画投稿サイト上の動画ということになりましょう。
私は,この万世橋跡の動画を,ぽっかりと開いた窓を通して直接見ているということでしょうか。
不思議な感じがします。
仮に,万世橋駅跡の動画がこのブログに複製されていると捉えると,私がこの動画を貼り付けた行為は,動画撮影者の複製権や公衆送信権を侵害していることになるのでしょうか。
なりません。
その理由は,この動画の作成(撮影・編集)者が・・・だからです。
なお,ここで挙げた判例は,後日,当事務所HPの「研究」のコーナーにて紹介いたします。
オレンジ法律事務所は,著作権,特許等知的財産関係事件にも力を入れておりますので,お気軽にご相談下さい。
弁護士 片山輝伸