交通事故の加害者の自白保険会社が独立当事者参加をした場合には交通事故の加害者の自白が効力を有しないとした上で,事故の発生が認められないとした事案

岐阜地裁平成 24 年 1 月 17 日判決

オレンジ法律事務所の私見・注釈

1 本件は,岐阜県関市の駐車場にて,Y1が駐車しようとしてバックさせたところ,不注意で,駐車していたXの車両に衝突してXの車両が損傷したという交通事故について, Xが,Y1に対し民法709条に基づき,車両を所有する会社Y2に対し改正前民法44条1項に基づき,損害賠償請求をしたのに対し,同Y1らが本件事故の発生及び同人らの責任を認めたところ(A事件),Y2との間で自動車保険契約を締結している保険会社Zが独立当事者参加を申し立て,X,Y1,Y2に対し,本件事故に関して上記保険契約に基づく保険金支払がないことの確認を求める事案(B事件),Xが,同人が自動車保険契約を締結している保険会社Y3に対し,本件事故について保険金の支払を求めた事案(C事件)である。


2本件裁判所は,A事件において,Y1及びY2は本件事故の発生について自白しているが,同事件について,保険会社ZがX及びY2,Y2を相手方として独立当事者参加しており(B事件),合一確定の要請により,当事者の一人がした訴訟行為は共同関係にあるとみなされる他の当事者に不利益になるものはその効力を生じない(民訴法47条4項,40条1項)から,上記自白の効力は生じないものと解されるとした。その上で,Xが本件事故現場である駐車場に駐車した経緯,本件事故態様,本件事故態様と原告車両の傷との整合性,Xが高級外国車である車両を本件事故の2か月余り前に購入したばかりであるのに,損傷程度や修理内容について関心を示さないこと等を判示した上で,これらを総合すれば,本件事故発生の事実は認められないというべきであると判断し,A事件,C事件のXの本訴請求を棄却し,B事件のZの本訴請求を認容した。


3民事訴訟法47条1項には,「訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は,その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として,当事者としてその訴訟に参加することができる」と規定されているが,同47条4項が準用する同40条1項によれば,「訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には,その一人の訴訟行為は,全員の利益においてのみその効力を生ずる」されており,本件Y1,Y2の事故発生の自白は,保険会社Zの不利益になるため,判示内容の通り,効力を生じないことになる。保険会社が独立当事者参加した事案として参考となる。