神戸地裁平成25年10月10日判決〔後遺障害14級9号の労働能力喪失期間の制限〕

【オレンジ法律事務所の私見・注釈】

1 本件は、B運転の自動二輪車が前方のC運転のタクシーの開放したドアに接触した際、B運転の自動二輪車に同乗中のXが、自動二輪車から転落して傷害を負ったとして、Cの使用者Yに対し、自動車損害賠償保障法3条、民法715条に基づいて、損害賠償とした事案である。

2 Xは、本件事故による傷害の後遺障害として右膝にケロイド状の瘢痕及び痛みが残り、自賠責保険により後遺障害等級14級9号に認定され、仕事の内容も制約されるなどしているため、後遺症逸失利益について、Xは、症状固定時の30歳から就労可能な67歳までの37年間にわたり5%の労働能力を喪失することとなったと主張した。

他方、Yは、仮に逸失利益が発生するとしても、Xの後遺障害の程度からして、労働能力喪失期間は3年程度が相当であると主張した。

3 この点、裁判所は、Xが後遺障害のために減収が生じたことは窺えないものの、右膝の痛み等のために立ち仕事や階段の上り下りが困難であるなどの状況にある中、痛みに耐えながら総合病院での業務に従事し、自らの努力で収入を維持していることが認められるとして、Xが本件事故に遭わなければ、就労可能な67歳までの37年間にわたり5%の労働能力を喪失したものと認めるのが相当であると判示した。

4 後遺症逸失利益については、自賠法施行令の後遺障害の認定に対応する労働能力喪失記載の喪失率を認定基準として採用することが多い。

そして、労働能力喪失期間については、67歳までの年数とするのが一般であるが、後遺障害14級9号の事案においては、5年以下に制限されるのが一般であると考えられている(大阪地裁平成26年4月24日判決、名古屋地裁平成24年11月21日判決、東京地裁平成20年 6月17日判決)。

本件は、自賠法施行令における労働能力喪失記載の喪失率である5%を採用しつつ、「右膝の痛み等のために立ち仕事や階段の上り下りが困難であるなどの状況にある」、「右膝打撲・挫創等により右膝にケロイド状の瘢痕が残ることとなり、原告の右膝の痛み等はこれに起因するもの」であること等を考慮し、これが3年程度で消失するものではないとして、67歳までの37年間の労働能力喪失期間を認めたものである。

後遺障害14級9号の事案において、労働能力喪失期間を制限しなかったケースとして、実務上、参考になろう。

■参考判例 大阪地裁平成26年4月24日判決〔後遺障害14級9号の労働能力喪失期間の制限〕

■参考判例 名古屋地裁平成24年11月21日判決〔後遺障害14級9号の労働能力喪失期間の制限〕

■参考判例 東京地裁平成20年 6月17日判決〔後遺障害14級9号の労働能力喪失期間の制限〕

【原文】

要旨

◆B運転のB車(自動二輪車)が前方のC運転のC車(タクシー)の開放したドアに接触した際、B車に同乗中の原告が、B車から転落して傷害を負ったとして、Cの使用者である被告に対し、自賠法3条、民法715条に基づいて、損害賠償を請求した事案において、右膝の圧痛・運動痛、右膝のケロイド状瘢痕、同ケロイド部の痛みが残ることとなり後遺障害等級14級9号の認定を受けた原告の逸失利益につき、原告は、同後遺障害のために減収が生じたことは窺えないものの、右膝の痛み等のために立ち仕事や階段の上り下りが困難である等の状況にある中、痛みに耐えながら総合病院での業務に従事し、自らの努力で収入を維持していることが認められることから、原告は、本件事故に遭わなければ、就労可能な67歳までの37年間にわたり5パーセントの労働能力を喪失したものと認めるのが相当であるとして、その逸失利益を算出する等し、原告の請求の一部を認容した事例

主文

 一 被告は、原告に対し二四一万〇四二九円及びうち二一九万〇四二九円に対する平成二三年六月三日から、うち二二万円に対する平成二二年三月一九日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

 二 原告のその余の請求を棄却する。

 三 訴訟費用は、これを七分し、その四を原告の、その余を被告の各負担とする。

 四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

  

事実及び理由

第一 請求の趣旨

 一 被告は、原告に対し、五二一万一一四四円並びにうち四七四万一一四四円に対する平成二三年六月三日から及びうち四七万円に対する平成二二年三月一九日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

 二 訴訟費用は被告の負担とする。

 三 仮執行宣言

第二 事案の概要

 本件は、B(以下「B」という。)運転の自動二輪車が前方のC(以下「C」という。)運転のタクシーの開放したドアに接触した際、B運転の自動二輪車に同乗中の原告が、自動二輪車から転落して傷害を負ったとして、Cの使用者である被告に対し、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条、民法七一五条に基づいて、損害賠償として五二一万一一四四円及びうち四七四万一一四四円に対する自動車損害賠償補償保険(以下「自賠責保険」という。)から保険金の支払を最後に受けた日の翌日である平成二三年六月三日から、うち四七万円(弁護士費用)に対する事故の日である平成二二年三月一九日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 一 争いのない事実等(争いがないか、掲記証拠により容易に認定できる事実)

  (1) 交通事故の発生(以下「本件事故」という。)

   ア 日時 平成二二年三月一九日午後八時四〇分ころ

   イ 場所 神戸市〈以下省略〉先路上

   ウ 原告車 B運転、原告同乗の自家用普通自動二輪車(登録番号〈省略〉)

   エ 被告車 被告所有ないし使用、C運転の事業用普通乗用自動車(登録番号〈省略〉)

   オ 態様 Cが客を乗せるため、被告車の左側後部ドアを開放したところ、左後方から進行してきた原告車がドアに接触したもの

  (2) 被告の責任

 Cは、道路を走行中ドアを開放するに当たっては、後方から進行してくる車両がないかどうか安全を確認すべき注意義務があるのに、これを怠って、漫然とドアを開放した過失により本件事故を惹き起こしたから、民法七〇九条に基づいて、原告に生じた損害を賠償すべき義務がある。

 本件事故は、Cが被告の業務に従事中惹き起こされたものであるから、被告はCの使用者として民法七一五条、また運行供用者として自賠法三条に基づいて、原告に生じた損害を賠償すべき義務がある。

  (3) 原告の傷害

 原告は、本件事故により右膝打撲・挫創、右大腿打撲、頸椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を負い、次のとおり、平成二二年三月一九日から平成二三年三月一六日まで(実通院日数九二日)通院治療を受け、平成二三年一月一九日症状固定の診断を受けた。

   ア a病院

 平成二二年三月一九日から同月二六日まで(実通院日数四日)

   イ b病院(以下「b病院」という。)

 平成二二年三月二七日から同年四月三〇日(実通院日数一三日)

   ウ c接骨院

 平成二二年三月二九日から同年七月一五日(実通院日数四五日)

   エ dクリニック

 平成二二年四月二〇日(実通院日数一日)

   オ e大学医学部附属病院

 平成二二年五月二五日から平成二三年三月一六日(実通院日数一二日)

   カ f接骨院

 平成二二年七月一六日から同年一〇月一五日まで(実通院日数二四日)

  (4) 原告の後遺障害

 原告は、本件事故による右膝打撲・挫創に起因する右膝圧痛・運動痛、右膝外傷性瘢痕ケロイド、同ケロイド部の痛みの後遺障害が残存し、自賠責保険において自賠法施行令別表第二の後遺障害等級一四級九号(以下「後遺障害等級一四級九号」という。)に該当するとの認定を受けた。

  (5) 損害の填補

   ア 原告は、被告から合計一三一万八二五八円の支払を受けた。

   イ 原告は、自賠責保険から平成二二年七月二九日に一三万一三六五円、平成二三年六月二日に一七八万一六九一円の支払を受けた。

 二 争点

 損害額

 三 当事者の主張

 (原告)

  (1) 治療関係費 一三二万八七五八円

 原告は、本件事故による傷害の治療費、薬剤費及び文書料として次のとおり合計一三二万八七五八円を要した。

   ア a病院(旧「a1病院」) 七万三一一六円

   イ b病院 六万五九四九円

   ウ c接骨院 六一万七四九〇円

   エ dクリニック 四万一六二八円

   オ e大学医学部附属病院 九万六〇一五円

   カ f接骨院 二三万五七八〇円

   キ g薬局 二万四二六〇円

   ク h薬局 一七万四五二〇円

  (2) 通院交通費 七万六〇四〇円

 次のとおり合計七万六〇四〇円を要した。

   ア a病院 八五六〇円

 実通院日数四日のうち、二日はタクシー代として三六四〇円、三三二〇円を要し、残る二日はバスと電車を利用して一六〇〇円(往復八〇〇円×二日)を要した。

   イ c接骨院 三万四四〇〇円

 実通院日数四五日のうち、転居後の二〇日につき、バス、電車及び地下鉄を利用して通院し、運賃として三万四四〇〇円(往復一七二〇円×二〇日)を要した。

   ウ dクリニック 八〇〇円

 実通院日数一日につきバスを利用して往復運賃八〇〇円を要した。

   エ e大学医学部附属病院 一万九三二〇円

 実通院日数一二日のうち、一日はバスを利用して往復運賃八〇〇円を要し、転居後一一日につき、バス、電車及び地下鉄を利用し一万八九二〇円(往復一七二〇円×一一日)を要した。

   オ f接骨院 一万二九六〇円

 実通院日数二四日につき地下鉄を利用して合計一万二九六〇円を要した(往復五四〇円×二四日)。

  (3) 休業損害 六一万八七〇〇円

   ア 原告は、平成二二年三月七日までi眼科に勤務していたところ、平成二二年一月一日から同年三月七日までに得た給与等から一日当たりの収入を算定すると六七二五円(四四万三八六六円÷六六日)となる。原告は、平成二二年三月一一日からb病院に勤務するようになったが、本件事故により同年五月一〇日に退職を余儀なくされたところ、同法人における収入日額も六七二五円を下回ることはなかった。したがって、原告は、本件事故に遭わなければ、日額六七二五円の収入を得ることができたところ、本件事故により九二日間の休業を余儀なくされたから、休業損害は六一万八七〇〇円となる(六七二五円×九二日)。

   イ 被告は、原告が現実に休業していない旨主張するところ、原告は、本件事故後、日々右膝の痛み等の症状に耐えながら業務に従事し、休日などを利用して通院をするなどの努力を強いられてきたのであるから、休業損害は認められるべきである。

 また、原告は、本件事故当時から平成二二年八月までBと同居して家事労働にも従事していたが、本件事故により家事労働に従事することができなかった。

  (4) 後遺障害による逸失利益 二八九万〇五三六円

   ア 原告は、本件事故による受傷のため後遺障害が残り、後遺障害等級一四級九号に認定され、症状固定時の三〇歳から就労可能な六七歳までの三七年間(三七年に相当するライプニッツ係数は一六・七一一三)にわたり五%の労働能力を喪失することとなった。また、原告の年齢からすれば、原告は将来において、賃金センサス平成二二年第一巻第一表産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者全年齢平均の年収三四五万九四〇〇円を得る蓋然性がある。

 したがって、原告の逸失利益は二八九万〇五五三円を下らない(三四五万九四〇〇円×〇・〇五×一六・七一一三)。

   イ 被告は原告に減収は生じていない旨主張するが、原告は、本件事故により転職を余儀なくされ、減収はあった。また、本件事故後、後遺障害である右膝の痛みのため立ち仕事が困難であるなど勤務内容に制約を受けている上、原告は日々痛みに耐えて業務に従事しているのであって、労働能力の喪失が生じていることは明らかである。

 また、原告の右膝の痛みは右脛骨高原内側の骨挫創が原因の複合性局所疼痛症候群(以下「CRPS(RSD)」という。)であり、短期間で消失するようなものではない。

 仮にCRPS(RSD)に該当しないとしても、右膝の頸骨高原骨挫創という器質的損傷により生じる痛みであるから症状改善の可能性は低く、労働能力喪失期間を制限するのは相当ではない。

  (5) 慰謝料 二六八万〇〇〇〇円

   ア 傷害慰謝料 一五八万円

   イ 後遺障害慰謝料 一一〇万円

  (6) 合計 七五九万四〇五一円

  (7) 損害の填補後の損害額 四七四万一一四四円

 前記(6)から被告において支払済みの一三一万八二五八円を控除すると六二七万五七九三円となるところ、その後受領した自賠責保険金を遅延損害金から充当すると原告の損害額は四七四万一一四四円となる。

  (8) 弁護士費用

 原告は、同訴訟代理人との間で前記(7)の損害額のほぼ一〇%に相当する四七万円の弁護士着手金・報酬を支払う旨の合意をしている。

 (被告)

 原告の損害は争う。

  (1) 治療関係費及び通院交通費について

 柔道整復師による施術については、転院を含めた通院の経過が不可解であるだけでなく、受傷の程度に照らして、施術部位やその内容に疑問があり、施術期間についても長期間にすぎるもので、施術の必要性、施術内容の合理性、施術期間及び施術料の相当性のいずれについても、これを認めることはできないから、施術費の全部ないし一部については本件事故との因果関係を認めることができない。

  (2) 休業損害について

 原告は休業損害を請求するが、現実に休業していない以上認められない。

 また、原告はBと同居して家事労働に従事していた旨主張するが、原告も正社員として勤務し、Bと同居していたのであるから、金銭評価が可能な他人のための家事労働を行っていたとは言い難い。

  (3) 後遺障害による逸失利益

   ア 原告には、本件事故後も収入の減少を生じていないことや後遺障害の程度からすると逸失利益は発生しない。

   イ 仮に逸失利益が発生するとしても、原告の後遺障害の程度からして、労働能力喪失期間は三年程度が相当である。

 この点、原告は、右膝の症状がCRPS(RSD)に該当する旨主張するが、同主張は争う。

   ウ また、逸失利益算定の基礎となる収入については、原告の転職歴やそれまでの収入からすれば、本件事故に遭わなかったとしても原告主張の年収を得られる蓋然性はないというべきであるから、本件事故前の収入を基礎とすべきである。

第三 当裁判所の判断

 一 本件事故により原告が被った損害は次のとおりである。

  (1) 治療関係費 一〇九万二九七八円

   ア 原告本人尋問の結果及び前記第一の一(3)によれば、原告は、本件事故日である平成二二年三月一九日まで(実通院日数四日)a病院で治療を受けた後、同月二七日から同年四月三〇日まで(実通院日数一三日)勤務先であるb病院で治療を受けていたが、痛みが続いたことや当時同居していたBの勧めもあって同年三月二九日から同年七月一五日まで(実通院日数四五日)c接骨院で施術を受けたこと、この間の平成二二年四月二〇日にはdクリニックを受診して治療を受け、平成二二年五月二五日から平成二三年三月一六日まで(実通院日数一二日)e大学医学部附属病院で治療を受けたことが認められる。

   イ また、証拠〈省略〉によれば、前記アの治療費として、a病院七万三一一六円、b病院六万五九四九円、c接骨院六一万七四九〇円、dクリニック四万一六二八円、e大学医学部附属病院九万六〇一五円、薬剤費としてg薬局二万四二六〇円、h薬局一七万四五二〇円を要したことが認められ、その合計一〇九万二九七八円となる。

   ウ ところで、原告は、平成二二年七月一五日まではc接骨院で施術を受けていたが、同月一六日からはf接骨院に転院し、同年一〇月一五日までf接骨院で施術を受けている(前記第一の一(3))ところ、当時、通院していたe大学医学部附属病院において柔道整復師による施術を受けることを指示された形跡はなく、c接骨院からf接骨院に転院した理由も不明である。また、f接骨院における施術内容は判然とせず、治療効果のあったことも認め難い。このようなことからすると、f接骨院における施術の必要性を認めることはできず、本件事故による損害と認めることはできない。

  (2) 通院交通費 六万三〇八〇円

   ア 証拠〈省略〉によれば、通院交通費として、a病院八五六〇円、c接骨院三万四四〇〇円、dクリニック八〇〇円、e大学医学部附属病院一万九三二〇円を要したことが認められ、その合計は六万三〇八〇円となる。

   イ なお、前記(1)のとおり、f接骨院における治療の必要性を認めることはできないから、その通院交通費についても本件事故による損害とは認められない。

  (3) 休業損害 認められない

 証拠〈省略〉によれば、原告は、e大学医学部附属病院において平成二二年六月一九日まで就業困難であるとの診断を受けたものの、本件事故当時勤務していたb病院に平成二二年五月一〇日まで勤務し、その後同年六月までj眼科に勤務しており、欠勤したことはないことが認められる。したがって、休業損害を認めることはできない。

  (4) 後遺障害による逸失利益 一七三万四三三二円

   ア 原告は、本件事故による傷害のため、右膝の圧痛・運動痛、右膝のケロイド状瘢痕、同ケロイド部の痛みが残ることとなり(前記第一の一(4))、平成二三年一月一九日(当時三〇歳)症状固定したとされ(同(3))、自賠責保険によって後遺障害等級一四級九号の認定を受けた(同(4))。原告は、同後遺障害のために減収が生じたことは窺えないものの、右膝の痛み等のために立ち仕事や階段の上り下りが困難であるなどの状況にある中、痛みに耐えながら総合病院での業務に従事し、自らの努力で収入を維持していることが認められる。

 このようなことからすると、原告は、本件事故に遭わなければ、就労可能な六七歳までの三七年間にわたり五%の労働能力を喪失したものと認めるのが相当である(したがって、被告の逸失利益は発生しない旨の主張は採用しない。)。逸失利益算定の基礎となる年収は、本件事故前年である平成二一年の原告の年収が約二〇〇万円であり、賃金センサス平成二一年第一巻第一表産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者二五歳~二九歳の平均年収の約六割であることから、賃金センサス平成二二年第一巻第一表産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者全年齢平均三四五万九四〇〇円の六割とする。中間利息をライプニッツ方式(三七年に相当するライプニッツ係数は一六・七一一三)で控除して原告の逸失利益の現価を算定すると一七三万四三三二円(三四五万九四〇〇円×〇・六×〇・〇五×一六・七一一三)となる(円未満切り捨て。以下同様)。

 なお、原告は、家事労働に従事していた旨の主張もするが、ともに職業を有する成人の男女が同居していたにすぎないから、経済的に評価できるような家事労働に従事していたということはできない。

   イ 被告は、原告の労働能力喪失期間は三年程度である旨主張するが、原告は本件事故により右膝打撲・挫創等により右膝にケロイド状の瘢痕が残ることとなり、原告の右膝の痛み等はこれに起因するもの(甲一〇の一、二、甲一一、証人Dに対する書面尋問の結果)であるから、CRPS(RSD)に該当するかどうかはともかく、三年程度で消失するものとは言い難い。したがって、被告の主張は採用できない。

  (5) 慰謝料 二三〇万〇〇〇〇円

   ア 傷害慰謝料 一二〇万円

 原告は、本件事故による傷害の治療のため症状固定日である平成二三年一月一九日までの約一〇か月間にわたる通院治療を余儀なくされたこと、この間膝の痛みなどのために転職せざるを得ない状況になったことなど諸般の事情を総合的に考慮すれば、慰謝料として一一〇万円を認めるのが相当である。

   イ 後遺障害慰謝料 一一〇万円

 原告は、本件事故による傷害の後遺障害として右膝にケロイド状の瘢痕及び痛みが残り、自賠責保険により後遺障害等級一四級九号に認定され、仕事の内容も制約されるなどしている。これらの事情によれば、後遺障害慰謝料として一一〇万円を認めるのが相当である。

  (6) 小計 五一九万〇三九〇円

  (7) 損害の填補後の残額 二一九万〇四二九円

 前記(6)から被告既払分一三一万八二五八円を控除すると三八七万二一三二円となり、自賠責保険から平成二二年七月二九日に受領した一三万一三六五円、平成二三年六月二日に受領した一七八万一六九一円を遅延損害金から各充当すると、別紙計算書のとおり損害額は二一九万〇四二九円となる。

  (8) 弁護士費用 二二万〇〇〇〇円

 本件訴訟の経緯に鑑み、弁護士費用は二二万円を認めるのが相当である。

  (9) 合計 二四一万〇四二九円

 二 結論

 以上のとおり、原告の請求は、被告に対し、二四一万〇四二九円及びうち二一九万〇四二九円に対する自賠責保険金の最終支払日の翌日である平成二三年六月三日から、うち二二万円に対する本件事故の日である平成二二年三月一九日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六四条本文、仮執行宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。