東京地裁平成26年6月19日判決〔FTTHサービス参入妨害差止請求事件(消極)〕

【オレンジ法律事務所の私見・注釈】

1 本件は、戸建て向けFTTHサービス(光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス)を提供するためにYらの設置する設備に接続しようとするXら(ソフトバンクテレコム株式会社、ソフトバンクBB株式会社)が、Yら(東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社)に対し、接続の単位を1分岐単位としOSU等をXらとYらが共用する方式での接続を、Yらが拒否したことは、電気通信事業法に基づく接続義務に違反するものであり、不当に原告らとの取引を拒絶し、又は被告らの優越的地位を濫用するものであるから、独占禁止法19条に違反する等と主張して、独占禁止法24条に基づき、主位的に、①8分岐単位での接続を強要しないこと、②1分岐単位での接続の申込みを拒否しないこと等を請求し、予備的に、被告らが、原告らに対し、①8分岐単位での接続を強要してはならない義務、②1分岐単位での接続の申込みを拒否してはならない義務等を負うことの確認を求める事案である。

2 戸建て向けFTTHサービスは、光ファイバ設備を用いた戸建て住宅向けの通信サービスであり、いわゆるブロードバンドインターネット接続サービスの一つである。FTTHサービスを提供するには、同サービスを提供する事業者が構築するネットワークと利用者の戸建て住宅との間に、パケットを送受して通信を行うための光ファイバの設備が必要であり、事業者は、自ら加入者光回線設備を敷設するか、他の事業者が敷設した加入者光回線設備に接続し、当該設備を利用する必要がある。Yらは、既に全国各地に加入者光回線設備を敷設し、平成21年度末時点におけるYらのカバー率は、それぞれ約92%、約89%である。

Yらの敷設する加入者光回線設備は、Yらの収容局から利用者の自宅内に設置されている回線終端装置(ONU)までの設備であり、収容局に設置されている終端装置(OLT)とONUの間の次のような設備で構成されている。

(ア) OLTには最大16個のOSUが収容されている。

(イ) OSUには、光ファイバが接続され、当該光ファイバは、収容局内の分岐装置(局内スプリッタ)を経て、4つの光ファイバ(主端末回線)に分岐している。

(ウ) 主端末回線は、地下トンネル等を経て、地上に出た後に、電柱に沿って配線される。

ある分岐装置(局外スプリッタ)を経て、8つの光ファイバ(分岐端末回線)に分岐し、各分岐端末回線が利用者宅へ引き込まれ、ONUに接続されている。

3 Yらが電気通信事業法33条2項に基づき定めた接続約款(総務大臣の認可を受けている)は、主端末回線単位の接続とし、接続する事業者が1分岐端末回線単位での接続を希望する場合であっても、分岐端末回線1回線に係る接続料に加えて、主端末回線1回線分等に係る接続料を支払わなければならず、複数の事業者でOSU及び主端末回線を共用することを前提とした上記の接続料より割安な接続料は定められていない。

4 本件の主たる争点は、主位的請求に係る作為命令が独占禁止法24条の対象となるか否か(争点①)、主位的請求と接続約款及び電気通信事業法32条(争点②)である。

争点①について、Yらは、独占禁止法24条所定の「侵害の停止又は予防」とは、その文言からすれば、相手方に対する不作為の給付命令を求めることを想定しているものと解され、作為の給付命令を求めることは含まれないと主張した。

また、争点②について、Yらは、現行の接続約款には、1分岐単位での接続を前提とする接続料及び接続条件の定めがないから、1分岐単位での接続を前提とする接続料及び接続条件を定めた接続約款を総務大臣が認可しなければ、1分岐単位の接続は認められない、電気通信事業法32条は、具体的な接続請求権を与えたものではなく、接続条件や接続料等について当事者の協議により合意内容が定まることを前提としているのであって、このような合意内容がない本件においては、Yらに接続を命ずる判決が出されても、その内容が履行できる程度に特定されているとはいえず、強制執行できないから、本件の主位的請求に係る訴えはいずれも不適法である等と主張した。

5 この点、本件裁判所は、争点①について、独占禁止法24条のは、不公正な取引方法に係る規制に違反する行為によってその利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者は、その利益を侵害し又は侵害するおそれがある事業者に対し、「その侵害の停止又は予防」を請求することができると規定しているところ、不公正な取引方法に係る規制に違反する行為が不作為によるものである場合もあり得ることから考えると、差止請求の対象である「その侵害の停止又は予防」は、不作為による損害を停止又は予防するための作為を含むと解するのが相当であるとして、作為命令が独占禁止法24条の対象となることを認めた。

次に、裁判所は、争点②について、Yらは、本件請求に係る接続をするためには、その接続料及び接続条件について接続約款を定め、総務大臣の認可を受けなければならず(電気通信事業法33条2項)、このような認可を受けた接続約款によらなければ、原告らとの間で、本件請求に係る接続に関する協定を締結してはならないところ(同9項)、本件接続約款には本件請求に係る接続に係る接続料及び接続条件の定めはなく、本件請求に係る接続に関する協定を締結するための総務大臣の認可を受けていない(同10項)以上、本件請求に係る接続をさせることはできない。接続約款の認可を受けずに原告らとの間で本件請求に係る接続に関する協定又は契約を締結すれば、刑罰法規の構成要件に該当することになる(同185条4号、33条9項)。

電気通信事業法による規制は、独占禁止法による規制を排除するものではなく、電気通信事業法に基づき総務大臣が認可した接続約款による接続が、具体的な事案において、独占禁止法違反の要件を満たす場合に、独占禁止法に基づく規制に服することがあり得ることは否定できない(最高裁第二小法廷平成22年12月17日判決)が、Yらは、本件請求に係る接続に関する接続約款等についての総務大臣の認可がない以上、電気通信事業法上、このような接続に応じてはならない義務を課されている状況にあるといえるのであって、にもかかわらず、独占禁止法により、このような接続をしなければならない義務を被告らに課すことは、被告らに相互に矛盾する法的義務を課すことにほかならないことを考えると、独占禁止法24条に基づき、被告らに対してこのような接続を請求することはできないと解される。

なお、裁判所は、協定の具体的な内容を定めた上で、独占禁止法24条又は電気通信事業法32条に基づき、被告らに対し承諾の意思表示を請求することができるかという点についても言及し、当事者の協議が調わない場合に、このような裁定の手続を経ないまま、一方の当事者が協定の具体的内容を定め、その承諾の意思表示を請求することにより、相手方にその内容を強制できるとする理由は見出し難く、このような事態は電気通信事業法32条の想定するところではないと判示し、Xらの請求をすべて排斥(主位的請求をいずれも棄却、予備的請求をいずれも却下)した。

6 本件は、独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」に作為命令が含まれるかについて判示するとともに、電気通信事業法と独占禁止法の関係についても判断をしたものであり実務上参考になる。

当事務所においても、独占禁止法に関連する相談内容が増えていることから、参考裁判例として掲載した。

独占禁止法に関しては、フランチャイズ契約に関して重要な裁判例が出ているが(東京高裁平成25年8月30日判決、福岡高裁平成25年3月28日判決)、連鎖販売取引 システムにより化粧品を販売する会社が、その傘下の販売会社との販売業務委託契約を解除したことが独占禁止法19条の趣旨に違反し著しく信義則に反するとしたノエビア化粧品事件(東京高裁平成14年12月5日判決)等が参考になろう。

主文

 1 原告らの主位的請求をいずれも棄却する。

 2 原告らの予備的請求に係る訴えをいずれも却下する。

 3 訴訟費用は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1 請求

 1 主位的請求

  (1) 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式(FTTHサービスを提供するために用いる1本の光ファイバ回線を最大32ユーザで共用する方式)でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続につき、8分岐単位での接続を強要するな。

  (2) 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続につき、1分岐単位の接続の申込みを拒否するな。

  (3) 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続につき、1分岐単位の接続が可能となる被告ら局舎内の光信号主端末回線収容装置(Optical Subscriber Unit、以下「OSU」という。)につき原告らと被告らの共用に応ぜよ。

  (4)ア 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Aでの接続に応ぜよ。

   イ 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Bでの接続に応ぜよ。

   ウ 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Cでの接続に応ぜよ。

   エ 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Dでの接続に応ぜよ。

 ((4)の請求は、アが主位的請求で、イ、ウ、エの順で予備的請求。)

 2 予備的請求

  (1) 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続につき、8分岐単位での接続を強要してはならないことを確認する。

  (2) 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続につき、1分岐単位の接続の申込みを拒否してはならないことを確認する。

  (3) 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続につき、1分岐単位の接続が可能となる被告ら局舎内のOSUにつき原告らと被告らの共用に応ずる義務があることを確認する。

  (4)ア 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Aでの接続に応ずる義務があることを確認する。

   イ 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Bでの接続に応ずる義務があることを確認する。

   ウ 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Cでの接続に応ずる義務があることを確認する。

   エ 被告らは、原告らに対し、原告らがシェアドアクセス方式でFTTHサービスを提供するために被告らに求める接続に関し、別紙1記載の接続希望箇所Dでの接続に応ずる義務があることを確認する。

第2 事案の概要

 1 本件は、戸建て向けFTTHサービス(Fiber To The Home、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス)を提供するために被告らの設置する設備に接続しようとする原告らが、被告らに対し、接続の単位を1分岐単位としOSU等を原告らと被告らが共用する方式での接続を、被告らが拒否したことは、電気通信事業法に基づく接続義務に違反するものであり、不当に原告らとの取引を拒絶し、又は被告らの優越的地位を濫用するものであるから、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)19条に違反する等と主張して、独占禁止法24条に基づき、主位的に、①8分岐単位での接続を強要しないこと、②1分岐単位での接続の申込みを拒否しないこと、③被告らが原告らとの間でOSUの共用に応じること、④被告らの設備を別紙1のAないしDの接続箇所で原告らの設備と接続することを請求し、予備的に、被告らが、原告らに対し、①8分岐単位での接続を強要してはならない義務、②1分岐単位での接続の申込みを拒否してはならない義務、③被告らが原告らとの間でOSUの共用に応じる義務、④被告らの設備を別紙1のAないしDの接続箇所で原告らの設備と接続する義務を負うことの確認を求める事案である。

 2 前提事実

  (1)ア 原告ソフトバンクテレコム株式会社は、音声伝送サービス、データ伝送サービス及び専用線サービス等の固定通信事業等を目的とする電気通信事業者であり、原告ソフトバンクBB株式会社は、ADSLサービス、FTTHサービス及びIP電話サービス等を目的とする電気通信事業者である(甲1、2)。

   イ 被告東日本電信電話株式会社(以下「被告NTT東日本」という。)は、日本電信電話株式会社等に関する法律に基づき、東日本地域における地域電気通信業務及びこれに附帯する業務等を目的とする電気通信事業者であり、被告西日本電信電話株式会社(以下「被告NTT西日本」という。)は、同法律に基づき、西日本地域における地域電気通信業務及びこれに附帯する業務等を目的とする電気通信事業者である(甲3、4)。

  (2)ア 戸建て向けFTTHサービス(以下「FTTHサービス」という。)は、光ファイバ設備を用いた戸建て住宅向けの通信サービスであり、いわゆるブロードバンドインターネット接続サービスの一つである。FTTHサービスを提供するには、同サービスを提供する事業者が構築するネットワークと利用者の戸建て住宅との間に、データの一群(以下「パケット」という。)を送受して通信を行うための光ファイバの設備(以下「加入者光回線設備」という。)が必要であり、事業者は、自ら加入者光回線設備を敷設するか、他の事業者が敷設した加入者光回線設備に接続し、当該設備を利用する必要がある。

   イ 被告らは、既に全国各地に加入者光回線設備を敷設し、平成21年度末時点における被告らのカバー率(被告らの収容局からき線点〔被告らの収容局からの通信回線が地中管から電柱に出る場所〕までの敷設割合)は、被告NTT東日本で約92%、被告NTT西日本で約89%である。

   ウ 被告らの敷設する加入者光回線設備は、被告らの収容局から利用者の自宅内に設置されている回線終端装置(Optical Network Unit、以下「ONU」という。)までの設備であり、収容局に設置されている終端装置(Optical Line Terminal、以下「OLT」という。)とONUの間の次のような設備で構成されている。

 (ア) OLTには最大16個のOSUが収容されている。

 (イ) OSUには、光ファイバが接続され、当該光ファイバは、収容局内の分岐装置(局内スプリッタ)を経て、4つの光ファイバ(主端末回線)に分岐している。なお、局内スプリッタは、データを振り分けるものではなく、局内の光ファイバから送信されたパケットをそのまま4つの光ファイバ(主端末回線)に送信するものである。

 (ウ) 主端末回線は、地下トンネル(とう道)等を経て、き線点で、地上に出た後に、電柱に沿って配線される。

 (エ) 主端末回線は、電柱上にある分岐装置(局外スプリッタ)を経て、8つの光ファイバ(分岐端末回線)に分岐し、各分岐端末回線が利用者宅へ引き込まれ、ONUに接続されている。なお、局外スプリッタの機能は、局内スプリッタと同じである。

   エ 総務大臣は、電気通信事業法33条1項に基づき、被告らの設置する加入者光回線設備を第一種指定電気通信設備に指定している。そして、被告らは、同条2項に基づき、次のとおりの接続約款を定め、総務大臣の認可を受けている(以下、被告らが定めているこの接続約款を「本件接続約款」という。乙36の1及び2)。

 (ア) シェアドアクセス方式(「第1 請求」の「1 主位的請求」の(1)を参照。)による接続方法として、次のとおり、被告らのOSU及び局内スプリッタを利用するシェアドアクセス方式①と、被告らのOSU等を利用しないシェアドアクセス方式②のみが定められ、これらの方式以外の接続方法は定められていない。

 (イ) シェアドアクセス方式①は、分岐端末回線の線端及びOSUを接続点(被告らの保有する設備と当該設備に接続を希望する事業者の設置する設備を接続する箇所)として、OSU、局内スプリッタ、主端末回線、局外スプリッタ及び分岐端末回線の利用を認める接続方式である。局内スプリッタには最大4つの主端末回線を収容することができ、1つの主端末回線には最大8つの分岐端末回線を収容することができる。

 接続料金は、上記の接続方式を前提に、OSU1台につき月額1483円(被告NTT東日本)又は1720円(被告NTT西日本)、局内スプリッタ1台につき月額261円(被告NTT東日本)又は229円(被告NTT西日本)、主端末回線1回線につき月額2835円(被告NTT東日本)又は2882円(被告NTT西日本)、分岐端末回線1回線につき月額273円(被告NTT東日本)又は301円(被告NTT西日本)とされている。

 (ウ) シェアドアクセス方式②は、分岐端末回線の線端及び主端末回線の線端を接続点として、主端末回線、局外スプリッタ及び分岐端末回線の利用を認める接続方式である。主端末回線には最大8つの分岐端末回線を収容することができる。この場合、OSU及び局内スプリッタについては、接続業者が自社の設備を用いることになる。

 接続料金は、上記の接続方式を前提に、主端末回線1回線につき月額2835円(被告NTT東日本)又は2882円(被告NTT西日本)、分岐端末回線1回線につき月額273円(被告NTT東日本)又は301円(被告NTT西日本)とされている。

 (エ) シェアドアクセス方式①及びシェアドアクセス方式②においては、接続した事業者が利用することができるOSU、局内スプリッタ、主端末回線、局外スプリッタ及び分岐端末回線を当該事業者のみが使用すること、すなわち当該事業者とFTTHサービスに係る利用契約を締結した利用者らのパケットのみが流れることが想定されており、OSU、局内スプリッタ、主端末回線、局外スプリッタ及び分岐端末回線を当該事業者と被告らで共用すること、すなわち当該パケットと被告らとFTTHサービスに係る利用契約を締結した利用者らのパケットが混在して流れることは想定されていない。そのため、接続する事業者が1分岐端末回線単位での接続を希望する場合であっても、分岐端末回線1回線に係る接続料に加えて、上記(イ)(ウ)の接続方式に応じてのOSU1台分及び主端末回線1回線分等に係る接続料を支払わなければならず、複数の事業者でOSU及び主端末回線を共用することを前提とした、上記の接続料より割安な接続料は定められていない。

 (オ) シェアドアクセス方式①及びシェアドアクセス方式②において、別紙1のAないしDはいずれも接続箇所とされていない。

   オ 加入者光回線設備は、従来は被告らの設置する地域IP網(帯域確保サービスを提供しないネットワーク)に接続していたが、被告らは、新たにNGN(Next Generation Network、帯域確保サービスを提供するネットワーク)を設置し、平成20年3月頃から、加入者光回線設備の一部をNGNに接続してFTTHサービスを提供し、現在は、多くの加入者光回線設備が、集線装置を経て、NGNに接続されている(乙27の3)。NGN内部においては、加入者光回線設備との間でパケットを送受信する収容ルータ及び帯域管理サービスを提供する帯域管理サーバ(SIP〔Session Initiation Protocol〕サーバ)等が設置されている。

   カ 被告らは、自ら、加入者光回線設備を用いて、FTTHサービスを提供しており、その利用料金は、月額5200円(被告NTT東日本)又は5400円(被告NTT西日本)である(乙8の1及び2)。

  (3) 原告らは、平成23年8月15日、被告らに対し、「接続についてのご請求」と題する書面を送付し、一つのOSUを複数の事業者で共用することを前提として、1分岐端末回線単位での接続を請求したところ、被告らは、同月29日、「『接続についてのご請求』(平成23年8月12月付)へのご回答」と題する書面を送付し、OSUを複数の事業者で共用をすると様々な弊害があり、1分岐端末回線単位での接続、すなわち1主端末回線未満での接続には応じられないとして、当該請求を拒絶する旨を回答した(甲の7の1及び2、8の1及び2)。

 3 争点

  (1) 主位的請求に係る作為命令が独占禁止法24条の対象となるか否か

   ア 被告らの主張

 本件の主位的請求は、次の(ア)ないし(エ)でみるとおり、作為の給付命令を求めるものであるところ、独占禁止法24条所定の「侵害の停止又は予防」とは、その文言からすれば、相手方に対する不作為の給付命令を求めることを想定しているものと解され、公正取引委員会の排除措置命令を定めた独占禁止法7条1項及び2項、20条1項の「必要な措置」や差止請求に係る不正競争防止法3条2項の「必要な行為」といった文言が用いられていないことから考えると、独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」には、作為の給付命令を求めることは含まれないものと解される。したがって、本件の主位的請求は、いずれも、独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」に当たらないから、その請求に係る訴えは不適法であり、却下されるべきである。

 また、本件の主位的請求は、次の(ア)ないし(エ)でみるとおり、1分岐単位での接続ができるようにするために必要な措置を求めるものであるところ、そのような措置(作為)の内容が特定されていないのであって、強制執行することができないから、これらの請求に係る訴えは不適法であり、却下されるべきである。

 (ア) 主位的請求(1)は、その文言上、不作為の給付命令を求めているように見えるが、そのような不作為自体は原告らにとって何の意味もないのであって、8分岐単位での接続を強要しないことは、1分岐単位での接続ができるようにするために必要な措置を求めることを意味し、本件の請求は、そのような作為を求める請求にほかならない。

 (イ) 主位的請求(2)も、その文言上、不作為の給付命令を求めているように見えるが、そのような不作為自体は原告らにとって何の意味もないのであって、1分岐単位での接続を拒否しないことは、1分岐単位での接続ができるようにするために必要な措置を求めることを意味し、本件の請求は、そのような作為を求める請求にほかならない。

 (ウ) 主位的請求(3)も、請求に係る共用及び1分岐単位による接続ができるようにするために必要な措置を求めるものにほかならない。

 (エ) 主位的請求(4)も、請求に係る接続ができるようにするために必要な措置を求めるものにほかならない。

   イ 原告らの主張

 独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」に作為命令を求めることは含まれないとする根拠はなく、かえって、同条の対象である不公正な取引方法の中には、共同又は単独の取引拒絶(独占禁止法2条9項1号、6号イ、不公正な取引方法〔昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号。以下「一般指定」という。〕1項、2項)という不作為の形態がある以上、その差止めとしての作為を命じることを独占禁止法24条は当然に想定していると考えられる。

 したがって、本件の主位的請求は、いずれも、独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」に係る請求であって、その訴えは適法である。

  (2) 主位的請求と接続約款及び電気通信事業法32条について

   ア 被告らの主張

 (ア) 本件の主位的請求は、電気通信事業者である原告らが、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者である被告らに対し、当該設備に係る接続を求めるものであるところ、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者は、原則として、当該事業者が定めて総務大臣の認可(同法33条2項)を受けた接続約款によらなければ、他の電気通信事業者との間において、その設置する第一種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更してはならないとされ(同条9項)、また、認可接続約款等により難い特別な事情があるときは、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者は、総務大臣の認可を受けて、当該接続約款等で定める接続料及び接続条件と異なる接続料及び接続条件のその設置する第一種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更することができるとされている(同条10項)。

 そして、被告らの現行の接続約款には、いずれも、1分岐単位での接続を前提とする接続料及び接続条件の定めがないから、1分岐単位での接続を前提とする接続料及び接続条件を定めた接続約款を総務大臣が認可し、または、現行の接続約款とは異なる1分岐単位での接続を前提とする接続料及び接続条件による協定の締結等を総務大臣が認可しなければ、原告らの主位的請求に係る1分岐単位の接続は認められないことになる。

 (イ) 原告らは、電気通信事業法32条を根拠に、総務大臣の認可がなくても、1分岐単位の接続を請求することができると主張する。しかし、電気通信事業法32条は、電気通信事業者は、他の電気通信事業者から当該他の電気通信事業者の電気通信設備をその設置する電気通信回線設備に接続すべき請求を受けたときは、同条各号に定める場合を除き、これに応じなければならないと定めているところ、この規定は、請求に応じて自己の電気通信回線設備との接続に関する協定を締結し、これを維持することを定めたものであって、接続という作為を義務付けるものではない。そして、ここでいう協定の締結は、接続料や接続条件等についての当事者の協議により内容が定まることを前提としているのであって、裁判所その他の第三者が一方的かつ一義的に定めることは予定されていない。電気通信設備の接続に関する命令等についての電気通信事業法35条は、協定に関する当事者の協議が調わなかった等の場合に、総務大臣が、当事者の協議の開始又は再開を命じ、また、協定の細目について裁定をすることができるとしているのであって、所管大臣である総務大臣ですらも、協定における当事者間の合意内容を一方的に定めて接続を命ずることはできない。

 したがって、電気通信事業法32条は、具体的な接続請求権を与えたものではなく、本件の主位的請求の実体法上の根拠とはならない。そして、電気通信事業法32条は、接続条件や接続料等について当事者の協議により合意内容が定まることを前提としているのであって、このような合意内容がない本件においては、被告らに接続を命ずる判決が出されても、その内容が履行できる程度に特定されているとはいえず、強制執行できないから、本件の主位的請求に係る訴えはいずれも不適法である。

   イ 原告らの主張

 (ア) 電気通信事業法32条は、電気通信事業者が他の電気通信事業者から自らの電気通信設備に接続すべき旨を請求された場合、法定の接続拒否事由がなければ、この請求に応じなければならないという接続応諾義務を定めているところ、当該義務の発生について総務大臣の認可は条件とされていないから、原告らは、総務大臣の認可なくして、同条に基づき、法定の接続拒否事由がない限り、被告らに対する実体法上の接続請求権を有していることになる。

 (イ) 電気通信事業法33条は、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者の義務を強化する趣旨で、接続に関する透明性、適正性を確保しその義務内容を詳細に明らかにする約款を定め(同条2項)、又は協定を締結するものとし(同条10項)、これらの約款や協定について総務大臣が認可することにより、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が他の電気通信事業者に対する優越的地位を濫用しないようにして、接続を請求する電気通信事業者の一層の保護を図っている。そして、電気通信事業法33条4項は、同条2項の約款又は同条10項の協定について、その内容が公正妥当であれば、総務大臣はこれを認可しなければならないと定め、実際にも接続約款は必要に応じて改定され認可されてきているのであって、総務大臣の認可は、認可に先立つ当事者間の協議、合意内容を変更する性質はなく、当事者間の合意の効力を補充してこれを完成させるものにすぎない。電気通信事業法施行規則23条の7が、電気通信事業法33条10項の協定の認可申請書に協定書の写しを添付することを定めていることからも、法が認可申請前に合意が形成されていることを前提としていることがうかがわれる。

 (ウ) なお、当事者間の協定についての協議が調わない場合における総務大臣による協議の開始等の命令及び協定の細目についての裁定(電気通信事業法35条)や電気通信紛争処理委員会によるあっせん及び仲裁(同法154条以下)は、当事者がこれらの手続を利用することができるとされているのであって、これにより接続請求権に関する裁判所に対する民事的救済が排除されることはない。

  (3) 確認の利益(予備的請求)

   ア 被告らの主張

 (ア) 独占禁止法24条は、差止めという給付請求権を定めたものであるところ、本件の予備的請求は、いずれも確認請求であり、独占禁止法24条の対象とはならないから、その請求に係る訴えは不適法である。

 (イ) 確認の利益は、原告らの権利又は法的地位に危険、不安が現存し、かつ、その危険等を除去する方法として確認請求に係る判決をすることが有効適切な場合に限られるところ、本件では、1分岐単位の接続を前提とする接続約款がなく、これを定めるには総務大臣の認可が必要であるから、確認判決をしても、総務大臣が認可しなければ、原告らの目的は達成されず、また、総務大臣の認可は、私人間の合意である接続の法律効果を補充し完成させる行政行為であり、認可がなければその法律効果が発生しないから、確認判決をしても接続の法律効果は発生しない。したがって、本件の予備的請求は、いずれも、紛争の全面的解決を導くものではないから、確認の利益がなく、その請求に係る訴えは不適法である。

   イ 原告らの主張

 (ア) 被告らは、独占禁止法24条に基づく確認請求はできないと主張するが、本件の予備的請求は、独占禁止法24条に基づく請求ではなく、電気通信事業法32条に基づく請求であるから、被告らの主張は失当である。

 (イ) 被告らは、確認の利益がないと主張するが、被告らが、電気通信事業法32条による接続義務を負うにもかかわらず、原告らの接続請求を拒絶していることから、確認の利益が認められる。

  (4) 被告らの原告らに対する優越的地位(独占禁止法2条9項5号)の有無

   ア 原告らの主張

 被告らは原告らに対し優越的地位にあるということができる。

 (ア) 独占禁止法上の優越的地位の濫用規制における優越的地位の有無は、原告らが被告らと取引せざるを得ない状況にあるか否か(取引の必要性)により判断されるべきであり、具体的には、原告らの被告らに対する取引依存度、被告らの市場における地位、原告らにとっての取引先変更の可能性、その他原告らが被告らと取引をすることの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮して判断すべきところ、全国的にFTTH網を整備しているのは被告らのみであって、原告らがFTTHサービスを提供しようとすれば必ず被告らとの間で光ファイバ網の接続に係る取引をしなければならず、他の取引先を選択する余地がないことから考えれば、原告らの被告らに対する取引依存度は100パーセントであって、被告らは原告らに対し優越的地位にあるというべきである。

 (イ) 被告らは、原告らが被告らと取引をしなくとも、原告らの事業全体をみて、事業経営上大きな支障を来すことはないと主張するが、本件で事業経営上大きな支障を来すか否かは、FTTHサービス市場への参入について判断すべきであって、被告らは、同市場において79.3パーセントのシェアを有している。

 (ウ) また、被告らは、原告らが自ら光ファイバを敷設することができると主張するが、単なる私企業である原告らが光ファイバを全国に敷設することは実際には不可能である。

   イ 被告らの主張

 被告らが原告らに対して優越的地位にあることは否認し又は争う。

 (ア) 原告らは、原告らの被告らに対する取引依存度が100パーセントであると主張する。しかし、原告らがFTTHサービス市場へ参入しようとする場合には、必ずしも被告らが有する光ファイバ回線設備に接続しこれを利用する必要はないのであって、自らの費用負担で光ファイバを敷設するなど、光ファイバ回線設備に係る設備の構築コストと投資リスクを自ら負担して独自に電気通信サービス事業に参入することは可能であり、現に被告ら以外にも多くの光インフラ事業者が事業を展開しているのであって、さらにいえば、原告らは、被告ら以外のこれらの光インフラ業者の設備に接続してFTTHサービス市場に参入することが可能である。

 (イ) 公正取引委員会による「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「ガイドライン」という。)によれば、優越的地位にあるというためには、相手方である原告らにおいて取引の継続が困難となることが事業経営上大きな支障を来すことが必要であり、その判断においては、原告らの特定の事業ではなく、原告らの事業全体をみることが相当であるところ、原告らは、いずれも、年間4億円前後の売上高を有する強固な経営基盤を有するから、被告らとの間で光ファイバ回線設備に係る取引をしなくても、自ら光ファイバ回線を敷設するか、他の光インフラ事業者と取引をするか、他の接続希望者とコンソーシアムを結成し共同で接続するか、あるいは、ADSL事業で更なる高速化を図るか、モバイル回線事業に注力するかを、自らの経営判断で選択できるのであり、被告らと取引をしなくても、事業経営上大きな支障を来すことはない。

 (ウ) ガイドラインによれば、優越的地位の濫用に当たって、原告らの被告らに対する取引依存度、被告らの市場における地位、原告らにとっての取引先変更の可能性、その他被告らと取引することの必要性を示す具体的事実を総合考慮することになるが、原告らと被告らとの取引はわずかであり、取引依存度は小さい。また、被告らの市場における地位についても、原告らが被告らと取引をすれば原告らの被告らに対する売上げが増加するという関係にはない。さらに、原告らと被告らとの間の取引はわずかであって、原告らは、前記(イ)のとおり、被告らと取引しなくても事業経営上大きな支障を来すことはないから、取引先変更の可能性も認められる。

  (5) 優越的地位の濫用行為(独占禁止法2条9項5号)の有無

   ア 原告らの主張

 被告らが1分岐単位での接続を拒絶したことは優越的地位の濫用行為に当たる。

 被告らは、取引を始めないことは濫用行為に当たらないと主張するが、本件では、被告らが8分岐単位での接続を強制していることが濫用行為になるのであって、また、取引の実施(独占禁止法2条9項5号ハ)には、濫用を受容しなければ取引しないという条件を提示し現に取引をしないことも含まれるのであって、被告らの主張は失当である。

   イ 被告らの主張

 被告らの濫用行為は否認し又は争う。

 優越的地位の濫用に係る独占禁止法2条9項5号イないしハは、いずれも、濫用行為として一定の取引行為を指しているのであって、本件のように、被告らが原告らとの取引を始めないことは、取引の相手方に対する行為ではなく、濫用行為に当たらない。また、正常な商慣習に照らして不当であること(独占禁止法2条9項5号)も争う。

  (6) 取引内容等の制限(独占禁止法2条9項6号、一般指定2項)の有無

   ア 原告らの主張

 被告らの接続拒否は、取引内容等の制限に当たる。

 (ア) 被告らの局内光ケーブルは、局内スプリッタで4分岐化され、さらにその1分岐が局外スプリッタで8分岐化され、最多で32加入分を収容できるのであって、1本の光ファイバが光学的に4分岐化されて1芯単位とされた後、さらにこれが8分岐化されるものであるから、光学的に8分岐化されたものの1つ(1分岐)を独立の取引対象とすることができる。したがって、8分岐単位の接続しか応じないのは、取引の内容等の制限に当たる。

 (イ) 被告らは、主端末回線は物理的に8分割できないと主張するが、原告らは、主端末回線を物理的に分割することを求めているのではないから、被告らの主張は失当である。

   イ 被告らの主張

 取引内容等の制限は否認し又は争う。

 (ア) 本件の接続の対象となる光ファイバは、1芯(1端末回線)が1本の光ファイバであり、物理的に分割できるものではないから、これを8分岐単位の接続であるとしても取引の数量又は内容を制限しているということはできない。

 (イ) 取引の内容等の制限が不公正な取引方法としての取引拒絶の一態様とされているのは、取引の数量や内容等の制限が取引の全面的な拒絶と同じ効果があることによるものであるが、被告らは、8分岐単位(1芯単位)での接続には応じるというのであるから、取引の全面的な拒絶と同じ効果は一切生じていない。

  (7) 公正競争阻害性(独占禁止法2条9項6号)の有無その1-参入を著しく困難にする効果の有無

   ア 原告らの主張

 被告らの接続拒絶は、公正競争阻害性が認められる。

 (ア) 被告らの接続拒絶は、被告らが、FTTHサービスを提供するに際して、原告らから1分岐単位の接続料の支払を受けてその要望に応えることができる場合であっても、原告らに8分岐単位での接続料を支払わなければならないようにして、8分岐単位での接続を強制することにより、光ファイバ接続市場における唯一の供給者としての地位を利用して、原告らにとって経済的合理性の見地から受け入れることのできない接続条件を設定し提示したものであって、被告らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点から見て正常の競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり、原告らのFTTHサービス市場への参入を著しく困難にする効果をもつものといえるから、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる(最高裁平成21年(行ヒ)第348号同22年12月17日第二小法廷判決・民集64巻8号2067頁参照)。

 (イ) 被告らは、KDDI株式会社が現行の接続方式で参入を果たしてシェアを伸ばしていると主張するが、同社がシェアを伸ばしたのは、電力会社の光ファイバ事業を買収したことが大きな要因となっているのであって、被告らの主張は失当である。

 (ウ) 被告らは、コンソーシアムによるOSUの共用が可能であるというが、共用を希望している事業者の営業地域は大きく異なっていることから、これらの事業者による共用は非現実的である。

 (エ) 被告らは、原告らに1分岐単位での接続を認めれば、被告らによる光ファイバ設備の構築コストと投資リスクを原告らが負担せずにFTTHサービス市場に参入することになると主張するが、原告らは、分岐端末回線当たりの利用するユーザー数に合わせた接続料を負担する用意があるし、また、被告らは、国営企業が民営化された企業であり、被告らが自ら構築したと主張する施設、設備は、国民の負担によって構築された設備を引き継いだものあるいはこれらの設備によって新たに構築することが可能となったものであり、被告らの主張は失当である。

   イ 被告らの主張

 原告らが主張する公正競争阻害性は否認し又は争う。

 (ア) 被告らは、平成13年8月、主端末回線1芯、分岐端末回線1芯による接続方式を接続約款で定め、その接続料を低廉化してきているのであって、平成24年において被告らが提供するFTTHサービスの料金は被告NTT東日本で5200円、被告NTT西日本で5400円であることから考えて、1分岐単位での接続料を設定しなくても、FTTHサービス市場への参入は十分に可能であり、実際にも、KDDI株式会社は、かつては原告らと同じく1分岐単位での接続を要求していたが、その後、現在の接続方式により参入し、市場のシェアは10パーセントに迫る勢いである。

 (イ) 原告らがOSU共用によるFTTHサービス市場への参入を企図するのであれば、参入を希望する事業者同士でいわゆるコンソーシアムを構成することによって、OSUを共用することが可能であり、実際にも、被告らの光ファイバを利用してOSUの共用を希望する事業者は原告ら以外にも多数存在する。

 (ウ) 被告らは、主端末回線と分岐端末回線を単位とする接続方式を接続約款で定め、被告らを含む電気通信事業者がこのような同じ条件で使用しているのであるから、平等な競争条件が確保されているのであって、公正競争阻害性がないことは明らかである。そして、原告らが求める1分岐単位での接続を認めれば、原告らは、被告らの光ファイバに係る設備の構築コストと投資リスクについて応分の負担をせずにFTTHサービス市場に参入し、また、主端末回線に収容する分岐端末回線を増やし1芯当たりのユーザー数を増加させるという営業努力をせずに低廉化された接続料で営業できることになり、かえって公正な競争を阻害する。

  (8) 公正競争阻害性(独占禁止法2条9項6号)の有無その2-電気通信事業法32条の接続拒否事由の有無

   ア 被告らの主張

 原告らが求める1分岐単位での接続については、次にみるとおり、電気通信事業法32条各号所定の接続拒否事由があるから、これを拒否することについて公正競争阻害性は認められない。

 (ア) OSUは、伝送速度を規定する機能を担い、その仕様は収容するユーザー数により最大速度や混雑時の最低速度が決まることから、原告らの求めに応じてOSUを共用すれば、基本的なサービススペックや混雑時に確保すべき通信速度について、共用する事業者の間で調整することが必要となって、その結果、それぞれの事業者が個性的なサービスを提供することが阻害され、サービスの均一化を招くこととなり、利用者が総合的かつ多彩なサービスの提供を受けることができるようにするために接続義務を定めた法の趣旨に反することになる。

 また、今後、サービス内容の向上や新たなサービスの提供のためにOSU等の変更が必要になる蓋然性が高く、現時点でOSUを共用することは、このような変更を困難にし、技術やサービスの向上を阻害するおそれがあり、消費者の利便性の向上を図るために接続義務を定めた法の趣旨に反する。

 (イ) 被告らは、地域IP網から、電話やデータのほか動画等の大容量データの送信に対応し多様な情報の特質に応じた電気通信サービスの品質を確保するために既存の地域IP網とは別に構築するネットワークであるNGN(Next Generation Network)に移行している。そして、NGNにおいては、OSU1台当たりの帯域(単位時間当たりのデータの送信量)が1Gpbsであるところ、帯域管理サーバが、帯域確保サービスにより、発信側のOSU、中継の各装置、着信側のOSU等の装置ごとに帯域がどれだけ使用されているのかを管理し、帯域確保サービスにより使用される帯域が各装置での利用可能な帯域を超えれば新規の通信要求の受付を拒否するという受付制御が行われ、例えば1台のOSUを経由する複数のパケットについて、収容ルータでその符号を参照し、優先符号の付されたパケットはベストエフォートサービスのパケットよりも先に送信され、そして、帯域確保サービスとベストエフォートサービスを合わせた伝送量の総和が1Gpbsを超えればベストエフォートサービスのパケットが廃棄されるが、帯域確保サービスのパケットが廃棄されることはない。しかし、NGNにおいて、原告らが被告らとOSUを共用すると、帯域管理サーバは、NGNのユーザーの帯域しか管理できず、原告らがサービスを提供する顧客であるユーザーの帯域を管理する機能を有していないため、受付制御が機能しなくなり、新規の通信要求が帯域容量を超え、被告らが顧客に保証する通信品質を保証できなくなる。また、原告らがこれまでの共用実験で使用した振分け装置には、優先制御の機能がなく、1Gpbsを超えると優先符号の有無にかかわらずパケットが廃棄される可能性があり、帯域確保サービスが維持できない。

 このように、NGNの下で被告らが原告らとOSUを共用すると、被告らが顧客に提供する帯域確保サービスが維持できなくなるから、接続拒否事由である電気通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれ(電気通信事業法32条1号)があるといわなければならない。

 (ウ) 被告らにおいて新たに装置やソフトウェアを開発し導入すれば、NGNの下で被告らが原告らとOSUを共用しても帯域確保サービスを維持できる可能性はないとまではいえない。しかしながら、現存しないこれらの装置等を研究開発し導入するためには、開発に少なくとも2年から3年、導入に少なくとも6か月を要するものと予想され、その費用も合計で数千億円程度が必要となる。具体的には、別紙1のA及びBで接続する場合には、現行収容ルータでは混在する通信の振分け機能が実装されていないことから、送信元のユーザーのIPアドレスを見てそのユーザーが契約している電気通信事業者のネットワークへパケットを伝送するソースアドレスルーティング機能付き収容ルータへの置換えが必要となり、併せて、大容量のトラヒック(通信等の流れの総体)やセキュリティー上問題のあるトラヒックが収容ルータへ流入し他のサービスに影響を与えることを防ぐため、他の事業者との接続点に、SNI事業者向け収容ルータ(多様なアプリケーションを提供する事業者のサーバとNGNを接続する箇所に設置されている装置)と同程度の機能を有するゲートウェイルータを設置する必要があり、さらに、これらの装置の研究開発のための費用も数百億円規模で必要となる。別紙1のC及びDで接続する場合にも、混在するパケットを被告ら原告らのそれぞれのネットワークに振り分ける機能及び優先制御機能を備えた優先制御機能付き振り分け装置を整備する必要があり、その研究開発等のための費用も数百億円規模で必要となる。

 このような費用は、その全額を接続料で回収できるわけではなく、被告らが最終的にその全額を負担する可能性もあるから、接続拒否事由である電気通信設備の接続に応ずるための電気通信設備の設置又は改修が経済的に著しく困難である(電気通信事業法32条3号、同法施行規則23条2号)といわなければならない。

 (エ) 被告らにおいて、前記(イ)(ウ)のような弊害を招かないように地域IP網に接続しこれを維持しなければならないとすれば、顧客が見込めない地域IP網の維持のコストを負担し続けなければならず、莫大な投資をして進めてきたNGNへの移行が阻害され、また、地域IP網とNGNでサービス内容が均一化しサービス競争が減退することになるから、接続拒否事由である被告らの利益を不当に害するおそれ(電気通信事業法32条2号)があるといわなければならない。

 (オ) OSUを複数の事業者が共用すると、故障対応のための作業手順について事業者間で連絡や連携をしなければならない分、共用していない場合と比べて故障復旧に必要な時間が長くなり、緊急連絡のために通信サービスを利用する場合などでは故障対応サービスの致命的な劣化を招くことになるから、接続拒否事由である電気通信役務の円滑な提供に支障を生ずるおそれ(電気通信事業法32条1号)があるといわなければならない。

 (カ) 原告らは、被告らのアンバンドル義務を主張するが、電気通信事業法にはこのような義務を定めた規定はなく、また、平成8年12月19日電気通信審議会答申「接続の基本的ルールの在り方について」におけるアンバンドルの考え方は、技術的に可能か否かだけで判断されるものではなく、経済的負担にも留意することが指摘されている。

   イ 原告らの主張

 被告らが主張する接続拒否事由は否認し又は争う。

 (ア) 被告らは、その設備のうち他の事業者が必要なもののみを細分化して使用できるようにするいわゆるアンバンドル義務(電気通信事業法33条4項1号ロ、平成8年12月19日電気通信審議会答申「接続の基本的ルールの在り方について」)を負っているところ、1分岐単位での接続は技術的に可能であって、原告らがOSUの専用を強要される理由はない。

 (イ) 被告らは、OSUを共用すればサービスの均一化を招くと主張するが、ユーザー宅内の機器(ONU)の改良等によって事業者ごとにサービス内容を差別化することができるのであって、また、サービスの均一化が直ちに価格競争の減殺を招くものではない。

 (ウ) 被告らは、OSUを共用すれば帯域確保サービスを維持できなくなると主張するが、その根拠はない。

 (エ) 被告らは、OSUを共用する場合に帯域確保サービスを維持するためには新たな装置等の研究開発導入に相当程度の費用が必要となると主張するが、その根拠はない。別紙1のA及びBでの接続については、必要なゲートウェイルータの機能はSNI事業者向け収容ルータほど高機能なものは必要がなく、また、現在のNGN上の収容ルータにはソースアドレスルーティング機能が備わっていると考えられるから、ソースアドレスルーティング機能付きルータへの置換えも必要ない。

 (オ) 被告らは、OSUを共用すれば、設備の改良が遅れる、故障対応サービスが劣化すると主張するが、いずれも根拠はない。

第3 当裁判所の判断

 1 争点(1)及び主位的請求の適法性について

  (1) 本件の主位的請求(1)は、その文言上は、接続の際に8分岐単位での接続を強要しないという不作為を請求するものであるように読めるが、これを合理的に解釈すれば、8分岐単位でない方式による接続という作為を請求するものと解する余地もある。また、本件の主位的請求(2)も、その文言上は、接続の際に1分岐単位の接続を拒否しないという不作為を請求するものであるように読めるが、これを合理的に解釈すれば、1分岐単位の接続という作為を請求するものであると解する余地もある。主位的請求(3)(4)は、その文言からも、作為を請求するものであることが明らかである。

  (2) 独占禁止法24条は、不公正な取引方法に係る規制に違反する行為によってその利益を侵害され又は侵害されるおそれがある者は、その利益を侵害し又は侵害するおそれがある事業者に対し、「その侵害の停止又は予防」を請求することができると規定しているところ、ここでいう不公正な取引方法に係る規制に違反する行為が不作為によるものである場合もあり得ることから考えると、差止請求の対象である「その侵害の停止又は予防」は、不作為による損害を停止又は予防するための作為を含むと解するのが相当である。この点、被告らは、独占禁止法24条に基づき作為命令を求めることはできないと主張するが、上記に判示したところに照らし、被告らの主張は採用できない。

  (3) そして、本件の主位的請求に係る行為の内容は、前記(1)でみたところによれば、いずれも、強制執行が可能な程度に特定されているものと解される。すなわち、主位的請求(1)については、これを不作為を求める請求であると解する場合にはその内容に疑義はなく、また、これを作為を求める請求であると解しても、8分岐単位でない接続自体は抽象的であるが、8分岐単位でない接続として具体的にどのような接続をするのかは被告らの選択に委ねられているものとして、その強制執行は可能であると解される。主位的請求(2)も、これを不作為を求める請求であると解する場合にはその内容に疑義はなく、また、これを作為を求める請求であると解しても、1分岐単位の接続自体は抽象的であるが、1分岐単位の接続として具体的にどのような箇所で接続するのかは被告らの選択に委ねられているものとして、その強制執行は可能であると解される。主位的請求(3)も、作為の内容である共用自体は抽象的であるが、具体的な共用の態様等は被告らの選択に委ねられているものとして、その強制執行は可能であると解される。主位的請求(4)も、厳密にいえば、作為の内容である接続に係る接続箇所であるA、B、C及びD自体はその具体的な場所等が特定されているわけではないものの、これも被告らの選択に委ねられているものとして、その強制執行は可能であると解される。

 被告らは、本件の主位的請求は、いずれも、1分岐単位での接続を請求するものであり、被告らがこれに応じる前提となるべき接続料や接続条件等が特定されていないから、不適法であると主張するが、上記で判示したとおり、請求に係る行為それ自体は強制執行が可能な程度に特定されているというべきであって、被告らの主張は採用できない。

 2 争点(2)について

  (1) 本件に関連する電気通信事業法の規定は、別紙2のとおりである。

  (2) 前記第2の2の前提事実によれば、原告ら及び被告らは、いずれも、電気通信事業法上の電気通信事業者に当たり、また、被告らの設置する加入者光回線設備は、同法上の第一種指定電気通信設備に当たるから、本件請求に係る接続は、同法33条2項所定の接続に当たると認められ、また、本件請求に係る1分岐単位でOSUを共用することによる接続の接続料及び接続条件が電気通信事業法33条3項所定の総務省令で定める認可を要しないものに該当するとは認められない。そうすると、被告らは、本件請求に係る接続をするためには、その接続料及び接続条件について接続約款を定め、総務大臣の認可を受けなければならず(同法33条2項)、このような認可を受けた接続約款によらなければ、原告らとの間で、本件請求に係る接続に関する協定を締結してはならないところ(同条9項)、前記第2の2の前提事実によれば、被告らの現行の本件接続約款には本件請求に係る接続(1分岐単位によるOSUの共用による接続)に係る接続料及び接続条件の定めはない。また、本件請求に係る接続について、本件接続約款により難い特別な事情があるといえるときであっても、被告らは、原告らとの間で本件請求に係る接続に関する協定を締結するためには、総務大臣の認可を受けなければならないところ(同条10項)、このような認可がされたことは認められない。そうすると、被告らは、電気通信事業法33条2項の接続約款の認可又は同条10項の接続に関する協定の認可を受けていない以上、本件請求に係る接続に関する協定を締結するなどして、このような接続をさせることはできないのであって、接続約款の認可を受けずに原告らとの間で本件請求に係る接続に関する協定又は契約を締結すれば、刑罰法規の構成要件に該当することになる(同法186条4号、33条9項)。

 もとより、電気通信事業法による規制は、独占禁止法による規制を排除するものではなく、電気通信事業法に基づき総務大臣が認可した接続約款による接続が、具体的な事案において、独占禁止法違反の要件を満たす場合に、独占禁止法に基づく規制に服することがあり得ることは否定できない(前記最高裁平成22年12月17日第二小法廷判決参照)。しかしながら、前記のとおり、被告らは、本件請求に係る接続に関する接続約款等についての総務大臣の認可がない以上、電気通信事業法上、このような接続に応じてはならない義務を課されている状況にあるといえるのであって、にもかかわらず、独占禁止法により、このような接続をしなければならない義務を被告らに課すことは、被告らに相互に矛盾する法的義務を課すことにほかならないことを考えると、独占禁止法24条に基づき、被告らに対してこのような接続を請求することはできないと解される。

  (3) 原告らは、電気通信事業者の接続義務を定める電気通信事業法32条を根拠に、被告らに対する接続請求権があると主張する。しかしながら、同条は、接続という行為義務自体を定めたものではなく、接続に関する協定を締結しこれを維持しなければならないことを定めたものであると解される。そして、前記のとおり、第一種指定電気通信設備に関する接続については、総務大臣が認可した接続約款等によらなければ協定を締結することができないとされ(電気通信事業法33条9項)、また、総務大臣は、接続約款の認可に際しては、情報通信行政・郵政行政審議会に諮らなければならないとされていること(同法169条1号)から考えると、第一種指定電気通信設備に関する接続の協定は、接続約款等についての総務大臣の認可があって、初めて当事者間に法的効力が生じると解するのが相当である。そして、本件においては、前記(2)のとおり、接続約款についての総務大臣の認可がないというのである。また、本件接続約款により難い特別な事情があるといえるとして、これによらずに協定を締結する場合であっても、総務大臣の認可を受けなければならないとされているところ(同法33条10項)、このような協定も、総務大臣の認可がなければ、当事者間に法的効力は生じないと解するのが相当である。そして、本件においては、前記(2)のとおり、このような認可もない。そうすると、協定の法的効力として、本件の請求に係る接続という行為の給付請求権が発生すると解する余地はないのであって、原告らの上記の主張は採用できない。

  (4) 総務大臣の認可がない場合であっても、原告らが、被告らに対し、協定の内容についての承諾の意思表示を求める請求権が発生し得ると解する余地があるかも問題となり得るところであり、このような請求の可否について検討する(本件の主位的請求(2)は、接続に関する協定の内容についての承諾の意思表示を求めるものと解する余地がないではない。)。

 接続に関する協定は、接続料及び接続条件(電気通信事業法33条2項)によりその具体的な内容が定められるものであって、本件の請求に係る接続の単位等のみでは、協定の内容が具体的に定められているとはいえないといわざるを得ない。そして、協定の内容についての承諾の意思表示をすべきことを命ずる判決は、その判決の確定の時に意思表示をしたものとみなされ(民事執行法174条1項)、これにより当事者間で当該協定の内容に係る合意が成立したこととなるから、その前提として、請求する意思表示に係る協定の内容が具体的に定められている必要があるところ、本件では、上記のように、その内容が定まっているとはいえないから、このような請求は理由がないというほかない。

 なお、本件で、仮に原告らが、協定の具体的な内容を定めた上で、独占禁止法24条又は電気通信事業法32条に基づき、被告らに対し承諾の意思表示を請求することができるかを検討するに、まず、独占禁止法24条については、同条に基づく差止めとして意思表示を命じることができるか否かはともかくとして、接続の単位についてのみ不公正な取引方法に当たるとして独占禁止法上の救済を与えるべき場合に、このような接続の単位を超える協定のその他の具体的な内容を被告らに強制すべき理由はないから、同条に基づく請求としては失当であるといわざるを得ない。また、電気通信事業法32条についてみると、同法は、同法32条により接続に関する協定を締結し維持しなければならない場合であるにもかかわらず、当事者間の協議が調わない等により、協定の具体的な内容が定められない場合に、総務大臣は、電気通信紛争処理委員会(以下「委員会」という。)への諮問、委員会の答申を経て(同法144条、160条1号)、その協議の開始又は再開を命ずることとし(同法35条1項)、さらに、当事者の申請に基づき、総務大臣は、委員会への諮問、委員会の答申を経て(同法144条、160条1号)、接続料又は接続条件その他協定の細目について裁定をし(同法35条3項、4項)、この裁定があったときはその裁定の定めるところに従い当事者間に協議が調ったものとみなし(すなわち裁定の内容が協議の内容となり当事者間に法的効力が生じる。)(同条7項)、また、この裁定に不服のある者は当事者訴訟(同条8項)や行政上の不服申立て(同条10項)をすることができることとしている。このように、電気通信事業法は、同法32条により接続に関する協定を締結し維持しなければならない場合であっても、当事者間に協議が調わなかったときには、総務大臣の裁定により協定の具体的内容を定めることとし、これにより同条の規定を担保することとしたものと解されるのであって、当事者の協議が調わない場合に、このような裁定の手続を経ないまま、一方の当事者が協定の具体的内容を定め、その承諾の意思表示を請求することにより、相手方にその内容を強制できるとする理由は見出し難く、このような事態は電気通信事業法32条の想定するところではないと解されるから、同条に基づく請求としても理由がないというほかはない。

  (5) 以上によれば、原告らの主位的請求は、いずれも理由がない。

 3 争点(3)について

 前記1でみたとおり、原告らの主位的請求はいずれも適法である。そして、本件の予備的請求は、いずれも、主位的請求権にかかる給付義務の確認を求めるものであるところ、給付を請求する訴訟が適法に提起できるときは当該給付に係る義務の確認の訴訟については確認の利益がないと解されるから、原告らの予備的請求は、いずれも確認の利益がなく、不適法である。

第4 結論

 以上の次第で、原告らの主位的請求は、いずれも、その余の点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却し、原告らの予備的請求に係る訴えはいずれも不適法であるからこれを却下することとし、主文のとおり判決する。

 (裁判長裁判官 氏本厚司 裁判官 櫻井進 裁判官 西澤健太郎)

 

 

 別紙2

 第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

  1 電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。

  2 電気通信設備 電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備をいう。

  3 電気通信役務 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。

  4 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(放送法(昭和25年法律第132号)第118条第1項に規定する放送局設備供給役務に係る事業を除く。)をいう。

  5 電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて、第9条の登録を受けた者及び第16条の第1項の規定による届出をした者をいう。

  6 電気通信業務 電気通信事業者の行う電気通信役務の提供の業務をいう。

 第32条 電気通信事業者は、他の電気通信事業者から当該他の電気通信事業者の電気通信設備をその設置する電気通信回線設備に接続すべき旨の請求を受けたときは、次に掲げる場合を除き、これに応じなければならない。

  1 電気通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれがあるとき。

  2 当該接続が当該電気通信事業者の利益を不当に害するおそれがあるとき。

  3 前2号に掲げる場合のほか、総務省令で定める正当な理由があるとき。

 第33条① 総務大臣は、総務省令で定めるところにより、全国の区域を分けて電気通信役務の利用状況及び都道府県の区域を勘案して総務省令で定める区域ごとに、その一端が利用者の電気通信設備(移動端末設備(利用者の電気通信設備であつて、移動する無線局の無線設備であるものをいう。次条第一項において同じ。)を除く。)と接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであつて、その伝送路設備の電気通信回線の数の、当該区域内に設置されるすべての同種の伝送路設備の電気通信回線の数のうちに占める割合が総務省令で定める割合を超えるもの及び当該区域において当該電気通信事業者がこれと一体として設置する電気通信設備であつて総務省令で定めるものの総体を、他の電気通信事業者の電気通信設備との接続が利用者の利便の向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に欠くことのできない電気通信設備として指定することができる。

  ② 前項の規定により指定された電気通信設備(以下「第一種指定電気通信設備」という。)を設置する電気通信事業者は、当該第一種指定電気通信設備と他の電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、当該第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が取得すべき金額(以下この条において「接続料」という。)及び他の電気通信事業者の電気通信設備との接続箇所における技術的条件、電気通信役務に関する料金を定める電気通信事業者の別その他の接続の条件(以下「接続条件」という。)について接続約款を定め、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

  ③ 前項の認可を受けるべき接続約款に定める接続料及び接続条件であつて、その内容からみて利用者の利便の向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に及ぼす影響が比較的少ないものとして総務省令で定めるものは、同項の規定にかかわらず、その認可を要しないものとする。

  ④ 総務大臣は、第2項(略)の認可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、第2項の認可をしなければならない。

   1 次に掲げる事項が適正かつ明確に定められていること。

 イ 他の電気通信事業者の電気通信設備を接続することが技術的及び経済的に可能な接続箇所のうち標準的なものとして総務省令で定める箇所における技術的条件

 ロ 総務省令で定める機能ごとの接続料

 ハ 第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者及びこれとその電気通信設備を接続する他の電気通信事業者の責任に関する事項

 ニ 電気通信役務に関する料金を定める電気通信事業者の別

 ホ イからニまでに掲げるもののほか、第一種指定電気通信設備の接続を円滑に行うために必要なものとして総務省令で定める事項

   2 接続料が能率的な経営の下における適正な原価を算定するものとして総務省令で定める方法により算定された原価に照らし公正妥当なものであること。

   3 接続条件が、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者がその第一種指定電気通信設備に自己の電気通信設備を接続することとした場合の条件に比して不利なものでないこと。

   4 特定の電気通信事業者に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと。

  ⑤ (略)

  ⑥ 総務大臣は、第2項の認可を受けた接続約款で定める接続料が第4項第2号に規定する原価に照らして不適当となつたため又は当該接続約款で定める接続条件が社会的経済的事情の変動により著しく不適当となつたため公共の利益の増進に支障があると認めるときは、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者に対し、相当の期限を定め、当該接続約款の変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。

  ⑦ 第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者は、その設置する第一種指定電気通信設備との接続に関する接続料及び接続条件であつて、第3項の総務省令で定めるものについて接続約款を定め、その実施前に総務大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

  ⑧ 総務大臣は、前項(略)の規定により届け出た接続約款で定める接続料又は接続条件が公共の利益の増進に支障があると認めるときは、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者に対し、相当の期限を定め、当該接続約款を変更すべきことを命ずることができる。

  ⑨ 第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者は、第2項の規定により認可を受け又は第7項(略)の規定により届け出た接続約款(以下この条において「認可接続約款等」という。)によらなければ、他の電気通信事業者との間において、その設置する第一種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更してはならない。

  ⑩ 前項の規定にかかわらず、認可接続約款等により難い特別な事情があるときは、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者は、総務大臣の認可を受けて、当該認可接続約款等で定める接続料及び接続条件と異なる接続料及び接続条件(第2項に規定する接続料及び接続条件に該当するものにあつては、第4項各号(第1号イ及びロを除く。)のいずれにも適合しているものに限る。)のその設置する第一種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更することができる。

  ⑪~⑱ (略)

 第35条① 総務大臣は、電気通信事業者が他の電気通信事業者に対し当該他の電気通信事業者が設置する電気通信回線設備と当該電気通信事業者の電気通信設備との接続に関する協定の締結を申し入れたにもかかわらず当該他の電気通信事業者がその協議に応じず、又は当該協議が調わなかつた場合で、当該協定の締結を申し入れた電気通信事業者から申立てがあつたときは、第32条各号に掲げる場合に該当すると認めるとき及び第155条第1項の規定による仲裁の申請がされているときを除き、当該他の電気通信事業者に対し、その協議の開始又は再開を命ずるものとする。

  ② 総務大臣は、前項に規定する場合のほか、電気通信事業者間において、その一方が電気通信設備の接続に関する協定の締結を申し入れたにもかかわらず他の一方がその協議に応じず、又は当該協議が調わなかつた場合で、当該一方の電気通信事業者から申立てがあつた場合において、その接続が公共の利益を増進するために特に必要であり、かつ、適切であると認めるときは、第155条第1項の規定による仲裁の申請がされているときを除き、他の一方の電気通信事業者に対し、その協議の開始又は再開を命ずることができる。

  ③ 電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、当事者が取得し、若しくは負担すべき金額又は接続条件その他協定の細目について当事者間の協議が調わないときは、当該電気通信設備に接続する電気通信設備を設置する電気通信事業者は、総務大臣の裁定を申請することができる。ただし、当事者が第155条第1項の規定による仲裁の申請をした後は、この限りでない。

  ④ 前項に規定する場合のほか、第1項又は第2項の規定による命令があった場合において、当事者が取得し、若しくは負担すべき金額又は接続条件その他協定の細目について、当事者間の協議が調わないときは、当事者は、総務大臣の裁定を申請することができる。

  ⑤ (略)

  ⑥ 総務大臣は、第3項又は第4項の裁定をしたときは、遅滞なく、その旨を当事者に通知しなければならない。

  ⑦ 第3項又は第4項の裁定があつたときは、その裁定の定めるところに従い、当事者間に協議が調つたものとみなす。

  ⑧ 第3項又は第4項の裁定のうち当事者が取得し、又は負担すべき金額について不服のある者は、その裁定があつたことを知つた日から6月以内に、訴えをもつてその金額の増減を請求することができる。

  ⑨ 前項の訴えにおいては、他の当事者を被告とする。

  ⑩ 第3項又は第4項の裁定についての異議申立てにおいては、当事者が取得し、又は負担すべき金額についての不服をその裁定の不服の理由とすることができない。

 第144条① 総務省に、電気通信紛争処理委員会(以下「委員会」という。)を置く。

  ② 委員会は、この法律、電波法及び放送法の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。

 第160条 総務大臣は、次に掲げる事項については、委員会に諮問しなければならない。ただし、委員会が軽微な事項と認めたものについては、この限りでない。

  1 第35条第1項若しくは第2項の規定による電気通信設備の接続に関する命令、同条第3項若しくは第4項の規定による電気通信設備の接続に関する裁定(略)

  2 (略)

 第169条 総務大臣は、次に掲げる事項については、審議会等(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第8条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものに諮問しなければならない。ただし、当該審議会等が軽微な事項と認めたものについては、この限りでない。

  1 (略)第33条第2項の規定による接続約款の認可(略)

  2~4 (略)

 (注)法第169条の審議会等で政令で定めるものは、情報通信行政・郵政行政審議会とする(電気通信事業法施行令第9条)。

 第186条 次の各号のいずれかに該当する者は、2百万円以下の罰金に処する。

  1~3(略)

  4 第33条第9項(略)の規定に違反して協定又は契約を締結し、変更し、又は廃止した者

  5 (略)