福岡地裁平成23年9月15日判決〔コンビニエンスストアのデイリー商品の再販売価格の拘束(独禁法違反)〕

【オレンジ法律事務所の私見・注釈】

1 コンビニのフランチャイジーであるXが、フランチャイザーであるYに対し、独禁法違反等を理由として、債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償等を請求した事案である。

2 Xは、Yに対し、①競合店を出店させたことが債務不履行及び不法行為に当たる、②ロイヤリティの算定に関する説明を怠ったことが債務不履行及び不法行為に当たる、③米飯・チルド等の商品(以下「デイリー商品」という。)について再販売価格を拘束したことが不法行為に当たるなど、債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償等を求めた。

裁判所は、①については、本件加盟店契約上、YがXとの競合店を出店しないとの義務を負担することはないが、Yが競合店を出店させることによる本件店舗の売上げやXの生活に与える影響の程度、それに対するYの認識ないし認識可能性の有無によっては、競合店の出店が信義則(民法1条2項)に反するものとして債務不履行を構成する場合や不法行為を構成する場合もあり得るとした上で、Yが競合店を出店させたことが、Xとの関係で信義則に反し違法であるということはできないとした。また、②Yは、加盟店契約に付随する信義則上の義務として、ロイヤリティの算定に関する説明義務違反があるとし、③Yは、Xに対し、デイリー商品の販売価格を標準小売価格に維持するため、自由な決定を拘束し、独禁法19条に違反するものであるとした。

また、Xの損害については、説明義務違反による損害は認められないとしつつ、デイリー商品の販売価格の拘束により、廃棄ロスを減らすことができず、差額分の損害を被ったとして、民法248条を適用して損害賠償を認めた。

3 コンビニエンスストアのフランチャイザーが、フランチャイジーに対し、デイリー商品の販売価格を拘束したことが独禁法19条に違反し、民法248条を適用して損害賠償責任を容認したものとして参考となる。

主文

 一 被告は、原告に対し、二二〇万円及びこれに対する平成二〇年六月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

 二 原告のその余の請求を棄却する。

 三 訴訟費用はこれを一二分し、その一一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

 四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第二 請求

 被告は、原告に対し、二六三八万六六八二円及びこれに対する平成二〇年六月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第三 事案の概要

 本件は、コンビニエンスストアのフランチャイジー(以下「加盟店」という。)であった原告が、フランチャイザー(以下「本部」という。)である被告に対し、競合店を出店させたことが債務不履行及び不法行為に当たる、ロイヤリティの算定に関する説明を怠ったことが債務不履行及び不法行為に当たる、米飯・チルド等の商品(以下「デイリー商品」という。)について再販売価格を拘束したことが不法行為に当たる、仕入先からの仕入代金に一定金額を上乗せした金額を原告から取得したことが不当利得に当たると主張し、上記債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償請求並びに不当利得に基づく返還請求として、合計二六三八万六六八二円及びこれに対する民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 一 前提事実(証拠を掲げない事実は当事者間に争いがない。)

  (1) 原告は、平成二年一〇月から平成九年二月までの間、ファミリーマート店を営んでいた個人である。

 被告は、フランチャイズ事業によるコンビニエンスストアの経営に関するサービス業等を目的とする株式会社である。

  (2) 原告は、平成九年一月四日、被告との間で、加盟店基本契約(以下「本件契約」という。)を締結した。

  (3) 原告は、同年四月一八日、本件契約に基づき、セブン―イレブンa町店(以下「本件店舗」という。)を開店した。

  (4) 本件店舗の近隣に、平成一四年にセブン―イレブンb店が、平成一五年にセブン―イレブンc町店が、平成一七年一月にセブン―イレブンd町店(以下「d町店」という。)が、それぞれ出店された。

  (5) 平成二〇年一月一〇日、原告は、本件店舗を閉店した。

 二 争点

  (1) 被告がd町店を出店させたことが債務不履行ないし不法行為に当たるか

  (2) 被告はロイヤリティ算定方式について説明義務を怠ったか(債務不履行及び不法行為の成否)

  (3) 被告はデイリー商品について再販売価格を拘束したか(不法行為の成否)

  (4) 被告は仕入先からの仕入代金に一定金額を上乗せした金額を原告から取得したか(不当利得の成否)

  (5) 損害ないし不当利得の有無及び額

 三 争点に関する当事者の主張

  (1) 争点(1)(被告がd町店を出店させたことが債務不履行ないし不法行為に当たるか)について

 (原告の主張)

   ア 競合店を出店させない義務の存在

 フランチャイズ契約は、本部が、加盟店に対し、営業に関するノウハウを伝えるなどしてその営業を支援し、それに対して加盟店がロイヤリティなどの名目による対価を支払うことを基本とする契約であり、この契約関係自体、本部に対して、加盟店の営業を妨害するようなことはしてはならないという信義則上の義務を課していることは明らかであり、商圏を侵害すること、すなわち、加盟店店舗の売上げの減少を招くことが予想される競合店の出店が、上記信義則上の義務に違反することは明らかである。本件契約においても、契約条項の前文で、原告及び被告は、「相協力して事業の繁栄をはかる」旨謳っており、この趣旨を明らかにしている。

 さらに、本件の場合は、原告は、以前契約していた株式会社ファミリーマート(以下「ファミリーマート本社」という。)が原告の店舗の近隣に競合店を出店させたことから、その経営のあり方に疑問を感じて被告と交渉することになったものであり、被告も上記経緯を知っていたこと、原告は、被告と交渉を始めるに当たって、被告の福岡地区の責任者に対し、競合店を出店させることはないか確認したところ、同人は、加盟店に無断で出店することはなく、出店させるときは必ず加盟店の承諾を得る旨回答していたこと、原告は、契約締結以前、被告担当者との打合せの際、資金計画表を作成し、原告の得られる利益が九四万三〇〇〇円でなければ、生活が成り立たないことを確認し、当該金額を割り込むような形で競合店を出店させないよう伝え、被告担当者はこれを了解したこと、原告と被告担当者は、契約締結後も、複数回にわたり特約内容を確認したことからすれば、原告と被告との間で、原告の利益が九四万三〇〇〇円を下回るような競合店を出店させないとの特約があった。

   イ 被告の義務違反

 平成一七年一月、被告は、d町店を出店させたところ、同年の本件店舗の総売上額は一億五八六七万〇四六三円で前年対比約一六%の減少、当期利益は八三八万九七二一円で前年対比約二二%の減少となった。このような激減は、よほど顕著な要因がなければ考えられないところ、その要因は、コンビニエンスストアの収入源である酒、煙草の顧客をd町店に取られたこと以外には考えられない。

 また、平成一六年一二月と平成一七年一二月の公共料金振込手続委託者数の分布を見ると、d町二丁目、同三丁目、e町一丁目、f町二丁目、同三丁目(以下「d町二丁目ほか四丁」という。)の利用者数は九三名から三四名と六三%も減少している。顧客全体に占めるd町二丁目ほか四丁の顧客の割合は一〇%強であるから、全体として顧客数は六・三%減少したことになる。これを平成一七年の上記総売上額で計算すると、九九九万六二三七円の売上減少となる。

 以上のとおり、被告のd町店の出店によって、原告の売上げが減少したことは明らかであり、同店の出店は、本件店舗の商圏を侵害するものであったことが明らかである。

   ウ 被告の主張に対する反論

 原告は、商品の欠品や売り切れを起こしたことはない。被告が根拠とするデータは平成一九年一二月のものであるところ、原告は、当初、同月末日に閉店する予定であったから、欠品率が高いのは当然である。

 また、被告自身も、その指示により加盟店にクーポンによる値下げ販売をさせることがあり、このことはクーポンによる値下げ販売により顧客の信頼性を低下させないことの証左である。

 酒類販売免許規制の緩和は平成一五年九月に行われたところ、原告は、上記規制緩和により既に売上げが落ち込んだ平成一六年の当期利益と比較した場合の、平成一七年以降の当期利益の減少分を損害として主張しているから、原告の主張する損害と上記規制緩和は何ら因果関係がない。

 また、都市高速道路の開通や歓楽街の風俗店の一斉摘発は、原告の売上げの減少にどの程度寄与したのか具体的な指摘はないから、考慮すべきではない。

 (被告の主張)

   ア 競合店を出店させない義務がないこと

 原告と被告との間に、原告の利益が毎月九四万三〇〇〇円を下回ることになるような競合店を出店させてはならない義務があったことは否認する。被告が、他の加盟店と異なり、例外的に、原告との間でのみ、当初の資金計画表の月次固定費の金額を保証するために競合店を出店させない旨の合意をすることはあり得ない。

   イ d町店の出店により原告の売上げが減少したものではないこと

 原告は、本件店舗の商圏について、排他的、独占的権利を有するものではないとともに、被告においても、本件店舗の売上げに対する影響を配慮した上で他の店舗を出店している。

 d町店に隣接する地区には、町内ないし隣接する町内にセブン―イレブン店以外のコンビニエンスストアやスーパーマーケットが営業しており、本件店舗までの距離や、本件店舗までの間に幅員の広い道路を複数横断する必要があること、同地区住民の生活動線からすれば、同地区の住民は本件店舗の顧客であったとは考えにくいし、また、本件店舗の閉店によってもd町店の売上げ及び客数に大きな変化はなく、このことからも商圏が重なっているということはできないから、d町店の出店と本件店舗の売上減少との間には因果関係がない。

 原告は、被告の経営カウンセリングを受け入れずに、顧客のニーズに合った商品・サービスの提供を積極的に行わずに商品の欠品や売り切れを多く起こし、加えて、弁当や惣菜などのデイリー商品のクーポン値下げ等に対する顧客の信頼低下等により、本件店舗を魅力のないものとしてきたこと、平成一五年九月の酒類販売免許規制緩和により近隣の複数の商業施設の酒類販売が可能になったのに原告が積極的な対応を行わなかったこと、平成一六年六月には都市高速道路の月隈・野多目間が開通し、車の流れが変わったこと、平成一八年四月に本件店舗の商圏内にある歓楽街であるg町にある風俗店がオリンピック招致のために摘発を受け、利用客や従業員等の需要が激減したことなどが、本件店舗の売上減少の要因である。

  (2) 争点(2)(被告はロイヤリティ算定方式について説明義務を怠ったか(債務不履行及び不法行為の成否))について

 (原告の主張)

   ア 説明義務の存在

 (ア) 加盟店になろうとする者は、フランチャイズ契約に関する知識・情報に乏しく、契約を締結するか否かの判断に当たっては、豊富な知識・情報を有する本部が提供する情報に頼らざるを得ないから、本部は、信義則上、契約締結の際に、加盟店になろうとする者に対して、説明義務ないし情報提供義務を負う。また、契約締結後においても、フランチャイズ契約の付随義務として説明義務ないし情報提供義務を負う。フランチャイズ契約において、ロイヤリティについて定めた条項は、加盟店の利益を大きく左右するものであり、当該条項の内容の正確な理解なしに適切な経営判断をすることはできないから、当該条項はフランチャイズ契約において重要であり、説明義務の対象となる。

ロイヤリティは、一般的な原価方式の場合、「(売上高-総売上原価)×チャージ率」との計算式で算出されるが、被告の計算方式(以下「被告方式」という。)の場合は、「(売上高-(総売上原価-廃棄ロス原価-棚卸ロス原価))×チャージ率」との計算式で算出される。このように、被告方式は、一般的な原価方式とよく似た計算方式であるが、一般的な原価方式を一部改変したものとなっており、また、被告方式で用いられている「純売上原価」、「売上商品原価」等の用語は、一般的な原価方式で用いられる用語と類似しているが、実は全く異なり、被告方式特有の使い方がされている。被告方式では、ロイヤリティの算定の基礎となる売上総利益の算出において、廃棄ロス・棚卸ロスの各原価が控除されないため、その分一般的な原価方式の場合よりも加盟店が負担するロイヤリティの金額が増加し、加盟店の最終利益が減少することになる。このように、被告方式は一般的な原価方式とは異なる特殊な算定方法であり、それによる影響が重大であるにもかかわらず、一般人の感覚からすれば、一般的な原価方式と誤解しやすいものであった。

 以上のように、被告方式の下においては廃棄ロスのリスクは全て加盟店が負うことになるが、仕入れにおいて廃棄ロスのリスクを負わない被告は、欠品を避け、機会ロスを小さくするために、仕入量を増やすよう加盟店に指導するから、欠品を防ぐために不可避的に大量の廃棄ロスのリスクを負う加盟店との間に利害対立が生じることになる。また、被告は、ロイヤリティ収入の増大・維持のため、被告が開示した標準小売価格のままできるだけ多くの商品を販売すべきであるとの経営方針をとる一方、加盟店は、廃棄ロスを少なくしようと廃棄になりそうな商品の値下げ販売(以下「見切り販売」ということもある。)を行い、原価の全部又は一部を回収したいと考えるのであり、値下げ販売に関しても利害対立が生ずる契約構造となっていた。

 さらに、被告が原告にシステムマニュアルを交付するまでの間に原告に交付した資料には、ロイヤリティ算定方式として被告方式が採用されていることや被告方式の内容についての記載はなく、逆に「売上原価」等、一般的な会計用語を用いた説明がなされており、ロイヤリティ算定方式が一般的な原価方式であるとの誤解を誘発させるものであった。原告はもともと一般的な原価方式しか頭になかったところ、それに加えて、被告から一般的な原価方式との誤解を一層深めるような資料の提供を受け続けて誤解を深めていった。

 (イ) 以上を踏まえると、契約締結の前後を通して被告が負う具体的な説明義務は以下のとおりである。

  ① 被告方式において、ロイヤリティ算定の基礎から廃棄ロスや棚卸ロスの各原価を控除することが許されていないこと。

  ② その結果、廃棄ロスや棚卸ロスが発生した場合に、加盟店の最終利益がどのような影響を受けるのかについての具体的な説明。

  ③ 被告傘下の加盟店における廃棄ロスや棚卸ロスの平均量の提示。

  ④ 縮小均衡や機会ロスの危険性の理解と同時に、仕入量の調整を図ることが重要である旨の説明。

  ⑤ 単品管理の理解と実践と同時に、見切り販売をする方策の提示とそれが禁じられていないことの積極的な説明。

   イ 被告の説明義務違反

 原告は、被告から、契約締結前、契約締結後営業開始前、営業開始後のいずれの段階においても、上記ア(イ)の各説明や提示を受けたことはなかったし、ロイヤリティ算定方式が一般的な原価方式であるという誤解を解消するための説明を受けたことはなかった。

   ウ 被告の主張について

原告は、被告から、フリップチャートによる説明を受けたことはなく、システムマニュアルも、研修の最終日に交付され、それに基づく説明はなかった。原告が以前経営していたファミリーマート店についても、ロイヤリティ算定方式について十分な説明を受けておらず、税務申告は税理士に委ねていたため、税務申告の過程でロイヤリティ算定方式を解明することもできなかった。また、損益計算書を見ても、ロイヤリティ算定方式を解明するという明確な目的意識をもった上で確認しなければ、これを解明することはできなかった。

 (被告の主張)

   ア 説明義務が存在するとの主張について

 被告方式は、原告の主張する一般的な原価方式が売上総利益の算定の基礎となる売上原価に廃棄ロス原価を含めるのに対し、売上原価に廃棄ロス原価を含めず、販売費(営業費)に含める売上総利益算定方式であるところ、企業会計原則上、被告方式及び原価方式のいずれの方式も認められ、被告方式は特殊な方式、あるいは一般的な原価方式の計算方法を一部改変したものではない。

 また、商品の仕入れは加盟店の権限で行われ、原告を含め、各加盟店は、自らの判断により商品仕入れを行うから、被告のビジネスモデルでは、欠品を避け、機会ロスを小さくするために仕入れを多くすることが強制されていることはなく、原告と被告の利害は対立しない。

 また、原告は、被告方式と同様のロイヤリティ算定方式を採用しているファミリーマート店を経営し、税務申告を行っていたのであるから、本件契約締結の前後を通して、少なくとも廃棄ロスを営業費として加盟店が全額負担することを聞けば、被告方式であることを理解できたはずであり、一般的な原価方式であるとの誤解を深めたということは不自然である。また、システムマニュアル(甲二九・「SM―10章」九ないし一四頁、乙六・六―一二ないし六―一七)記載のセブン―イレブン・チャージ(以下「チャージ」という。)計算式を見れば、廃棄ロス原価が売上原価ではなく、営業費に含まれることが明らかであるから、この点からも、原告が被告方式を原告の主張する一般的な原価方式であると誤解することはあり得ない。仮に、本件契約締結前に原告がシステムマニュアルを読んでいなかったとしても、本件店舗開店後、毎月、被告から送付されてくる損益計算書を見て、被告方式が一般的な原価方式と異なること及び営業費に廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれていることを容易に理解できたはずである。また、被告は、原告に対して、スクールトレーニングテキスト(乙一二)に記載されているとおり、「『オーナー総収入』の中に、営業費と利益が含まれていること」、「利益を増加させるためには、加盟店オーナーが全額負担する営業費の中で、特に三大経費である不良品(廃棄ロス)、品減り(棚卸ロス)及び人件費を適正にすることが重要であること」を説明した。よって、契約締結後において、原告が主張する誤解は生じていなかった。

   イ 説明義務違反がないこと

 (ア) 説明義務①(前記(原告の主張)ア(イ)①)について

 被告は、原告に対し、「売上合計から純売上原価を差し引いたものが売上総利益であること」、「加盟店オーナーは総収入の中から営業費を負担すること」(加盟店基本契約書(甲一。以下「本件契約書」という。)一七条一項一号)、「純売上原価は、月初商品棚卸高に当月商品仕入高を加え、そこから月末商品棚卸高を差し引き計算した総売上原価(原告の主張する一般的な原価方式)から仕入値引高、商品廃棄等(不良品原価率を用いて算出した不良品原価合計額)、棚卸増減(棚卸ロス)をそれぞれ差し引いて計算した金額であること」、「営業費には、棚卸ロス、不良品(廃棄ロス)各原価がそれぞれ含まれること」(本件契約書一八条四項、付属明細書(ホ)二項、同契約書二五条二項等)、「不良品(廃棄ロス)は、品減り(棚卸ロス)及び人件費と同様に、加盟店オーナーが負担する三大経費であることから、店舗の利益を増加させるためには、適正にすることが重要であること」等を説明している。そして、棚卸ロス及び廃棄ロスの各原価を売上原価及び営業費として二重に計上することは、経費の二重計上となり、税務会計上及び企業会計上許容されないことは、社会的常識として一般人も認識している事柄である。

 よって、被告は、原告が主張する説明義務①の事項について説明している。

 (イ) 説明義務②(前記(原告の主張)ア(イ)②)について

 被告は、原告に対し、本件契約締結前に損益計算書の基本的な仕組みを説明していたこと、原告が以前ファミリーマート店を経営していたこと、原告は本件契約を締結する際に知人の加盟店オーナーからセブン―イレブン店に関する話を聞いたことから、原告がセブン―イレブン店の廃棄と利益の関係について全く知らなかったということはあり得ない。また、品減り(棚卸ロス)、不良品(廃棄ロス)が、人件費とともに三大営業費として店舗の利益を上げるために適正にすることが重要であることをスクールトレーニングにおいても説明している。

 (ウ) 説明義務③(前記(原告の主張)ア(イ)③)について

 被告は、廃棄ロスや棚卸ロスの各金額が各店舗において様々であるとともに、各加盟店オーナーの経費コントロール等の経営努力により変動することから、平均量の提示をしていないのであるが、加盟店オーナー候補者から被告に対して要望があれば、被告担当者は、加盟店オーナー候補者に対し、参考としてセブン―イレブン店の全店平均や日販別に損益計算書の実績を示す等している。

 (エ) 説明義務④(前記(原告の主張)ア(イ)④)について

 仕入量の調整については、商品在庫の適正なコントロールをするという被告の単品管理の考え方そのものであり、各加盟店が自らの仮説と検証により精度の高い適切な在庫管理を達成するために、仕入量の調整が重要であることを説明している。

 (オ) 説明義務⑤(前記(原告の主張)ア(イ)⑤)について

 被告は、原告に対し、価格決定権が加盟店オーナーにあることを説明するとともに、オーナー値下げ、販促値下げ等の値下げ方法の説明をしている。

  (3) 争点(3)(被告はデイリー商品について再販売価格を拘束したか(不法行為の成否))について

 (原告の主張)

   ア 再販売価格の拘束が違法であること

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成二一年六月一〇日法律第五一号による改正前の同法。以下同じ。以下「独占禁止法」という。)一九条では不公正な取引が禁止されており、その一つとして、「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること」(同法二条九項四号)が規定されており、具体的には、「不公正な取引方法」(平成二一年一〇月二八日公正取引委員会告示第一八号による改正前の昭和五七年六月一八日公正取引委員会告示第一五号。以下同じ。)である一般指定の一二項において「再販売価格の拘束」が定められている。

 また、公正取引委員会による平成一四年四月二四日付け「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」によると、「販売価格の制限について」として、「加盟者が地域市場の実情に応じて販売価格を設定しなければならない場合や売れ残り商品等について値下げして販売しなければならない場合などもあることから、本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として一般指定の第一二項(再販売価格の拘束)に該当する。」と記載されている。

 本件契約書三〇条においても、「乙(原告)は、……甲(被告)の開示した標準小売価格で販売することを強制されるものではない。」と規定されている。

 このように、本件契約においては、原告は、小売価格を自由に設定することが許され、被告は、再販売価格を拘束することは許されず、これに違反した場合は、独占禁止法一九条及び本件契約に違反することになる。

   イ 被告の値下げ販売をさせない動機と基本的姿勢

 被告方式によると、加盟店が原価割れで値下げ販売をした場合、当該商品の原価は売上商品原価として売上高から控除され、ロイヤリティ算定の基礎から除かれるため、被告のロイヤリティは減少する。一方、廃棄ロスは全て加盟店の負担となるから、加盟店が仕入れを増やして廃棄ロスが生じても被告のロイヤリティは減少しない。そのため、被告は、加盟店に仕入れを増やすよう求めるとともに、値下げ販売をしないよう再販売価格を拘束する動機があった。

 そこで、被告は、値下げ販売について、セブン―イレブンイメージが低下する、周囲の店舗に迷惑が掛かる、縮小均衡に陥る、機会ロスが発生するなど、何ら具体的根拠のない理由を挙げ、あるいは理由すら付けずに、値下げ販売をさせないという基本的姿勢を有していた。

   ウ 被告による再販売価格の拘束

 (ア) 原告は、平成一六年一一月、本件店舗の売上げが減少傾向にあったことから、一部のデイリー商品について、販売期限到来直前に値下げ販売を行うことにし、被告に通知したところ、被告の福岡地区事務所のディストリクト・マネージャー(地区責任者。以下「DM」という。)であるB(以下「B」という。)が、同年一二月、本件店舗を訪問し、原告に対し、口頭で値下げ販売をやめるよう強く求めた。

 (イ) 原告は、平成一七年一月から値下げ販売(具体的には、陳列している商品のうち、三時間後に販売期限が到来し、廃棄することとなる商品のみ割引クーポンを添付し、顧客が同商品を購入するためレジに来た場合、顧客から値引きした代金を受領して販売し、割引クーポンを受け取ったものとしてポスレジシステムの処理を行った。なお、原告が被告に売上金の送金をする際には、割引クーポンによって値引きした分は原告が負担して加えた額を送金していたので、値引き分の損失を被告に負担させなかった。)を開始したところ、B及びオペレーション・フィールド・カウンセラー(店舗経営相談員。以下「OFC」という。)は、継続的に、本件店舗に来店して、原告に対し、値下げ販売をやめるよう要求を行った。

 (ウ) また、原告は、三割引の値下げ販売を行っても廃棄が一定量出るため、平成一七年一一月一四日から、販売期限前に売れ残った一部のデイリー商品を一円に値下げし、コンピューターに一円に値下げの登録をして、その上で廃棄する方法(以下「一円値下げ廃棄」という。)を行ったところ、BとOFCは、すぐに本件店舗に来店し、原告に対し、一円値下げ廃棄をやめるように言ってきた。また、被告は、平成一八年二月四日付けの書面(甲一七)により、値下げ販売が本件契約違反と断定し、間接的に契約解除をほのめかして、値下げ販売をやめるよう強制した。なお、被告は、上記被告の対応は一円値下げ廃棄が許されないことを指摘するものであり、値下げ販売をやめるよう指導したものではないと主張するが、値下げ販売と一円値下げ廃棄は、本質的には同じものであって、区別して論じることはできない。

 (エ) また、Bの後任のDMであるC(以下「C」という。)、OFC及びリクルート担当者の三名が、平成一九年一一月一日、本件店舗を訪問した際、値下げ販売について、原告に対して、「今の段階では口頭です。絶対にやめていただきたいという意思だけはお伝えしておきます。」などと値下げ販売をやめるよう強く要求するとともに、本件契約の解除等の不利益な取扱いをする旨を示唆した。

 (オ) また、被告のポスレジシステムは、商品に付されたバーコードをスキャナーで読み取ると、自動的に通常の小売価格で販売した処理がされるため、売上額と現金額が整合しなくなる。そこで、値下げ販売した代金を手打ちにより入力することになるが、それでは在庫管理や発注処理に支障が生じることとなる。このように、同システムは、値下げ販売をすると支障が生じるため、当該システムによって標準小売価格による販売を事実上強制していた。

 (カ) 被告は、原告以外の加盟店に対しても、原告に対するのと同様に値下げ販売をしないよう再販売価格を拘束していた。

 (被告の主張)

   ア デイリー商品については、主力商品かつ利益を稼げる商品であり、値下げをせずに売り切っていけば、店舗の利益となり、加盟店オーナーの優位性が得られるものであるため、被告は、原告が、デイリー商品の上記のような位置付けをよく考えずに安易に値下げを行おうとし、あるいは行ったことに対して、カウンセリングを行ったものである。また、原告の値下げ販売が、販売期限間近の商品が廃棄処分となることを避ける目的であるとすれば、被告は、原告の品揃え及び商品発注量の問題と考えており、商品の廃棄ロスを防ぐには、発注精度の向上と販売力と強化が有効であると考え、原告に対して、具体的なカウンセリングを行ったものである。

 加盟店が自ら発注した商品を計画を立てて売り切ることで、次回の発注が増え、また販売が増えていくという好循環が期待できることから、利益を投資に回す余裕が生まれ、店舗経営の発展に繋がる。これは単品管理というセブン―イレブン店の基本的な経営手法であり、加盟店が自らの経営努力を避けて安易な値下げに走ることは、中長期的には販売力の強化どころか低下を招き、結果として、小売店競争に勝てなくなる。

 このように、被告は、セブン―イレブン店の経営方針に基づいて、値下げ販売のデメリットについて原告に対してカウンセリングを行ったものであり、これは値下げ販売を禁止することとは次元が異なる。

 なお、原告は、少なくとも二年間以上、本件店舗において、割引クーポンによる値下げ販売を継続していたから、原告は、被告からの値引げ販売の取りやめを余儀なくさせられたといったことはなく、そもそも、原告と被告との間で再販売価格の拘束が問題となる余地はない。

 よって、被告の行為は、本件契約のみならず、独占禁止法にも違反しない。

   イ Bの原告に対する平成一七年一一月の要請、及び、平成一八年二月四日付けの書面(甲一七)については、廃棄商品の原価計算について売価還元法(廃棄商品の売価合計額に原価率を掛けて、廃棄商品の原価額を推算する方法)を採用している被告システムの下では、原告が売価を一円に値下げして廃棄登録する行為が、自ら負担すべき廃棄ロス原価の一部をチャージの減少分として被告に負担させることになり、廃棄ロス原価はオーナー負担とする本件契約に違反する行為であることを指摘したものであって、そもそも原告が主張するような、商品の販売価格を値下げして顧客に販売するという意味の値下げ販売を禁止するものではない。

   ウ 平成一九年一一月一日のCの発言については、個々の発言内容のみを取り出して値下げ販売の制限を意図的に行ったものと判断すべきではなく、むしろ、本件店舗において実施されているクーポンによる継続的な値下げ販売により、単品管理の考え方が蔑ろにされ、安易な商品発注により発注精度が落ちる結果、機会ロス及び廃棄ロスの両方を生み出す危険性があること、通常価格で販売される商品と値下げ価格で販売される商品と並んで陳列される結果、顧客が通常価格が高額に設定されているのではないかとの不信感を抱くこと、近隣の加盟店等との間で価格競争が生じ、値下げをしなければデイリー商品が販売できない状況に陥り、近隣の加盟店の収益の低下を招くことが懸念され、本件店舗の売上げが減少する可能性が高いと予測されたため、Cは、原告に対し、値下げ販売が原告の利益にならないことについて、本件契約書二八条一項一号等に基づく被告の義務履行として、カウンセリングを行ったものである。

 また、仮に、Cの発言が原告の値下げ販売に対する何らかの制限行為に該当するとしても、その発言内容は、原告に値下げ販売の取りやめを余儀なくさせるようなものではなかった。

   エ また、ポスレジシステムにおいても、レジにて直接入力すること(バーコードをスキャンせず、手打ち入力すること)により値下げ販売は可能であり、手打ち入力によって販売した数量を正確に記録し、それをストアコンピューターに反映させれば、在庫管理や発注処理に支障が生じることはないから、被告の採用するポスレジシステムは、加盟店に対し販売価格を事実上強制する仕組みとはなっていない。

  (4) 争点(4)(被告は仕入先からの仕入代金に一定金額を上乗せした金額を原告から取得したか(不当利得の成否))について

 (原告の主張)

 加盟店と商品仕入先は、直接の契約関係に立つと解されるところ、多数発生する加盟店と商品仕入先との契約関係を簡易化するために、加盟店が被告に送金する売上金の中から、被告が一括して商品仕入先への代金支払を代行している。もっとも、被告の仕入先への送金代行について手数料等の定めはないから、被告が原告の代行として商品仕入先に支払う金額と、原告が被告に支払う金額とは一致するはずである。ところが、被告が仕入先の一つであるh株式会社(以下「h社」という。)に対して支払った金額は、原告が被告に対して支払った金額より明らかに少なくなっており、被告は、仕入代金にその差額分を上乗せして原告に請求することにより、その差額を不当に利得したものである。

 (被告の主張)

 原告が主張する差額は、消費税相当分である。すなわち、h社から被告への請求データ(甲一一)は外税方式で消費税が記載されていないことから違いが生じており、被告に不当利得はない。

  (5) 争点(5)(損害ないし不当利得の有無及び額)について

 (原告の主張)

   ア 商圏侵害による損害

 d町店出店の前年である平成一六年の当期利益を基準として、平成一七年から平成一九年の当期利益の減少額は、それぞれ二三〇万八九五五円、三六七万八一一五円、五六六万二九四三円である。

 よって、損害額は、合計一一六五万〇〇一三円である。

   イ ロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反及び再販売価格の拘束による損害

 原告は、被告方式について理解していなかったため、被告が廃棄ロスの負担を全く負わない仕組みであることを知らず、被告が行う過剰仕入れや定価販売の指導に抗して値下げ販売を行い、廃棄ロスを減らすという意識が芽生えなかった。また、被告による値下げ販売の禁止行為があったため、原告は値下げ販売を思うように行うことができなかった。被告が、原告に対し、被告方式について説明を十分に行い、かつ、値下げ販売を許容していたならば、原告は、販売期限が迫った商品について値下げ販売を行ってこれを売り切り、廃棄ロスを生じさせることはなかったはずである。よって、値下げ販売を行って売り切った状態と、値下げ販売を行えず廃棄に出した状態との差額の損害が生じている。この差額には、①値下げ販売による売り切りによって生じる売上増加の分配金と、②値下げ販売による売り切りによって生じるロイヤリティ減少分の二つが含まれる。

 上記②の損害額は、「これまでに原告に生じた廃棄ロス原価相当額×ロイヤリティ割合」の計算式によって算出され、合計二六二七万九二五一円である。原告は、上記②の損害の一部である一〇〇〇万円を請求する。

   ウ 仕入先からの仕入代金に上乗せをした金額を請求したことによる不当利得

 平成一四年三月から平成一八年一二月までの間に、被告がh社に支払った金額と、原告が被告からh社に支払ったと説明を受けていた金額との差額は二五四万六三五六円であるから、同額が被告の不当利得に当たる。

 (被告の主張)

   ア 商圏侵害による損害について

 争う。

   イ ロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反及び再販売価格の拘束による損害について

 争う。

 仮に、被告に説明義務違反及び再販売価格の拘束が認められたとしても、原告は、自らの意思により継続的にクーポンによる値下げ販売を行っていたから、原告には何ら損害が生じていないし、因果関係も認められない。また、加盟店オーナーが店舗において値下げ販売をしても、商品が売り切れず、売れ残りが出ることが経験則上ほとんどであるから、常に値下げ販売による売り切りができたことを前提とする原告の主張は誤りである。

 甲二五の原告とC・DMとのやり取りは、平成一九年一一月一日のことであり、本件店舗は、その一か月半後の平成二〇年一月一〇日に閉店しているから、原告主張の損害額はそもそも値下げ販売の制限による損害額とはなり得ない。

   ウ 仕入先からの仕入代金に上乗せをした金額を請求したことによる不当利得について

 争う。

  第四 争点に対する判断

 一 認定事実

 前記前提事実、《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。

  (1) 契約締結までの経緯等

   ア 原告は、平成二年一〇月から、ファミリーマート本社との間で加盟店契約を締結し、ファミリーマートi店を経営していた。

   イ 原告は、平成八年三月頃、ファミリーマート本社が、原告に相談することなく、上記i店から直線距離で五〇〇mの場所に、ファミリーマート店を出店する計画を立てていることを知り、同社に対し不信感を抱くようになった。

   ウ 原告は、同年一〇月三日、被告の担当者であるD(以下「D」という。)との間で、加盟店契約についての交渉を開始した。

   エ Dは、同年一一月四日、六日、一一日に、本件店舗予定地(当時はファミリーマートi店)について、自動車や人の交通量等の立地調査を行った。

   オ 原告は、同月一三日午後一時五〇分頃から六時頃までの間、訪問してきたDと、妻及び母とともに面談し、Dがリクルートの際の説明のために編集した資料(以下「説明用資料」という。)を基に説明を受けた。その際、原告は、被告から、損益計算書のサンプルを示され、売上げから純売上原価を引いた額が売上総利益(粗利)となり、これを本部のチャージとして四三%、加盟店の総収入として五七%に分配すること(粗利分配方式)、営業費の中でも人件費、棚卸しの増減、不良品の三つが大きな額を占め、これらの三大営業費を上手にコントロールすることが最終的に利益を出すことにつながることなどについて説明を受けたが、チャージの計算において廃棄ロス原価が純売上原価に含まれないことについては説明を受けなかった。

   カ 原告は、同月二一日、再びDと面談し、Dから立地調査結果等についての説明を受け、本件店舗を出店する方向で話を進めることとした。そして、Dから、禀議のための書類の提出について依頼され、原告は、同月二七日及び同月三〇日に、Dに対して、資金計画表(甲九)、ファミリーマートi店の平成六年及び七年の所得税青色申告決算書(乙三一)等の書類を提出した。また、原告は、同年一二月六日、Dから、本件店舗の建築費用等について説明を受け、最終的な資金計画について話し合った。

   キ 原告は、同月二〇日、Dから、加盟店基本契約の概要について説明を受けたが、チャージの算定方法についての説明は受けなかった。

   ク 同月二八日、被告において、本件店舗についての禀議決裁がされた。原告は、同日、D及び被告のマネージャーであるEと面談し、加盟店基本契約書の用紙及び「セブン―イレブンとフランチャイズ契約の要点の概説」と題する書面(甲二)の交付を受けたが、廃棄ロス原価と純売上原価及びチャージとの関係については説明を受けなかった。

   ケ 原告は、平成九年一月四日午前九時四〇分頃から午後二時三〇分頃までの間、妻とともにDと面談し、加盟店基本契約書(本件契約書)の条項を一条ずつ読み合わせた上、被告との間で加盟店基本契約(本件契約)を締結した。セブン―イレブン店のフランチャイズ契約のタイプには、加盟店が自己資金又は借入金で店舗を改造又は新築し、被告が主な販売用設備を設置するAタイプと、被告が店舗を用意してオーナーを募集するCタイプがあるところ、本件契約はAタイプであった。

 本件契約書四一条においては、「乙(原告)は、甲(被告)に対して、セブン―イレブン店経営に関する対価として、各会計期間ごとに、その末日に、売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いたもの。)にたいし、付属明細書(ニ)の第三項に定める率を乗じた額(以下、セブン―イレブン・チャージという。)をオープンアカウントを通じ支払う。」と規定され、本件契約書一八条四項において引用されている付属明細書(ホ)二項には、原告が負担すべき費目たる営業費とされるものが列挙され、その中に「ヲ.不良・不適格品の原価相当額」、「ヘ.一定量の品べり(棚卸減)の原価相当額」との記載があり、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が営業費となることが定められているが、本件契約書中に「売上商品原価」の定義規定はない。

   コ 原告は、同年二月、ファミリーマート本社との間で、加盟店契約を合意解約した。

  (2) 契約締結後、本件店舗の閉店までの経緯

   ア 原告は、同年三月一〇日から一四日までの間、被告のスクールトレーニングに参加した。その際、原告は、スクールトレーニングテキスト(乙一二)に基づき、経営数値の見方について、粗利分配方式、すなわち売上げから売上原価を控除した売上総利益を本部のチャージ四三%と加盟店の総収入五七%に分配し、総収入から営業費を差し引いたものが利益となるという説明を受け、その計算の演習を行ったほか、人件費、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が三大営業費であり、利益を上げるためにはこれらを適正にすることなどが必要であるという説明を受けた。しかし、スクールトレーニングテキスト(乙一二)には、売上原価に廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれないという記載はなく、その旨の説明もなかった。また、原告は、最終日にシステムマニュアル(甲二九、乙六(ただし、当時のもの。))の交付を受けたが、その内容についての説明はなかった。

 平成一四年二月当時使用されていたシステムマニュアル(甲二九)第10章中の損益計算書についての項目には、「売上総利益」は、「売上合計額」から「純売上原価」を差し引いたものであること、「純売上原価」は、「総売上原価」から「仕入値引高」、「商品廃棄等」及び「棚卸増減」を差し引いて計算されること、加盟店の「総収入」は、「売上総利益」に五七%を掛けたものであり、「総収入」から「営業費」を差し引いた残額が「利益」となることなどが記載されており、原告が交付を受けたシステムマニュアルにもおおむね同様の記載があった。

   イ 原告は、平成九年三月一七日から二一日までの間、被告直営のセブン―イレブンj店でストアトレーニングを受けた。その際、原告は、商品発注業務や、店舗内での商品陳列、清掃、会計、精算、店舗運営についての指導を受けたが、廃棄商品の会計処理やチャージの計算の説明はなかった。

   ウ 原告は、同年四月一八日、セブン―イレブンa町店(本件店舗)を開店した。

   エ 原告は、本件店舗の開店から三ないし四か月を経過した頃、被告から送付された損益計算書の「2 売上原価」中の「商品廃棄等」欄と「6 営業費」中の「不良品」欄に同一の金額が記載されていることに疑問を抱き、被告に対し、その理由を質問して、被告から回答を受けた。

   オ 平成一四年五月頃、本件店舗宛てに、差出人不明者から、廃棄ロス原価がチャージの対象とされている旨記載された葉書が送られてきた。原告は、これをきっかけにチャージの算定方式について、税理士に質問したり、ウェブサイトなどで調べるようになった。

   カ 原告は、その後、ウェブサイトや書籍から得た情報を基に、損益計算書を分析して、平成一六年頃、売上原価から廃棄ロス及び棚卸ロスの各原価が差し引かれていることに気づき、利益を上げるためにはどうしたらよいかを検討した結果、値下げ販売をすることとした。原告は、同年一一月二五日付けで、被告に対して、同年一二月一日から値下げ販売を開始する旨通知したところ、博多地区のDMであるBが本件店舗に来店し、原告に対し、値下げ販売をやめるように言うとともに、少なくとも一か月間の猶予が欲しいと言った。そこで、原告は、同月からの値下げ販売をやめ、平成一七年一月から、クーポンによる値下げ販売を開始したが、デイリー商品の全部を値下げ販売の対象にすると、被告から圧力が掛かるのではないかと恐れたことなどから、一部のデイリー商品(弁当、おにぎり、サンドウィッチ)のみをその対象としていた。なお、原告は、値下げ分を自ら負担することとし、被告のポスレジシステム(レジ精算と同時に商品の販売情報を収集し、集計結果を在庫管理やマーケティング材料として用いるシステムのこと)上の処理は、通常価格による販売の場合と同様にバーコードの読取りにより行っていた。

   キ 原告が値下げ販売を開始した後、Bが毎週のように本件店舗に来店し、原告は、Bから値下げ販売をやめるように言われたが、これに応じなかった。

   ク 原告は、三割引程度の値下げ販売をしても廃棄が生じていたことから、同年一一月一四日から、販売期限前に売れ残った一部のデイリー商品を一円に値下げし、コンピューターに一円に値下げの登録をして、その上で廃棄する方法(一円値下げ廃棄)を実施した。

   ケ 原告が一円値下げ廃棄を開始した後、原告は、被告から一円値下げ廃棄をやめるように言われ、原告は、同月二六日を最後に、一円値下げ廃棄をやめた。しかし、原告は、その後も一部のデイリー商品(弁当、おにぎり、サンドウィッチ)について原価程度まで値下げをして販売する行為は続けた。

   コ Bは、平成一八年二月四日付けで、原告に対し、一円値下げ廃棄が本件契約違反になる理由について、原告の質問に対する回答を記載した書面を交付した。同書面には、「加盟店基本契約書付属明細書(ホ)において、廃棄ロス原価・棚卸ロス原価は営業費として処理されることが明記されています。営業費として処理する場合、売上総利益を算出する際の売上原価の計算上、廃棄ロス原価・棚卸ロス原価が売上原価から控除されるのは当然のことです。」、「今般の貴殿による値下げ廃棄の行為が営利目的であり、同時に加盟店基本契約に違反する行為である以上、同行為を貴殿が再び行われた場合、当社としましてもこれを看過することはできません。」と記載されていた。(甲一七)

   サ 平成一九年二月、博多地区のDMがBからCに代わった。

   シ C、OFC及びリクルート担当者は、同年一一月一日、本件店舗に来店し、原告に対し、「こちらとしても、どうしても、そういうかたちでおわかりいただけないということであれば、やっぱりチェーンとして、フランチャイズ契約していること自体が、本部としてもメリットがないというかたちで、どこかで判断させてもらいますし。」とか、「オリジナルデイリーの価格を変えて販売することについては、セブン―イレブンイメージを逸脱する行為なので、それはやめていただきたい。」とか、「いまの段階では、口頭ですが、絶対にやめていただきたいという意思だけはお伝えしておきます。」とか、「セブン―イレブンイメージを逸脱していますので、改善勧告はさせていただきますから。そのステップを経て、こちらができることはやっていきますから。」などと言い、原告に対し値下げ販売をやめるように指導するとともに、それに応じない場合には、本件契約の解除ないし解約等の不利益な取扱いをすることも検討する旨を示唆した。

   ス 原告は、その後も一部のデイリー商品について値下げ販売を継続した。

   セ 原告は、平成二〇年一月、本件店舗を閉店した。

  (3) チャージの算定方式

 被告は、原告が支払うべき毎月のチャージ金額を、次のような計算方式(被告方式)により算定し、原告は、この方法に従って被告により算定されたチャージを支払ってきた。

   ア チャージ金額は、被告から原告に毎月送付される損益計算書に記載されている「売上総利益」に対して、チャージ率を乗じて算定される。

   イ 損益計算書においては、売上総利益の金額は、「売上」の合計金額から「純売上原価」を差し引いた金額とされている。そして、純売上原価は、月初商品棚卸高に当月商品仕入高を加算した額から月末商品棚卸高を控除して算出される「総売上原価」から、「仕入値引高」、「商品廃棄等」(廃棄ロス原価(不良品として廃棄された商品の原価の合計額))及び「棚卸増減」(棚卸ロス原価(品減り、あるいは品増しの原価額))を控除した金額とされている。

   ウ 以上を計算式で表現すると、次のようになる。

 チャージ金額

 =売上総利益×チャージ率

 =(売上高-純売上原価)×チャージ率

 ={売上高-(総売上原価-仕入値引高-廃棄ロス原価-棚卸ロス原価)}×チャージ率

   エ 本件契約書四一条においては、売上総利益について、「売上高から売上商品原価を差し引いたもの」と規定されているところ、「売上商品原価」とは、上記純売上原価、すなわち実際に売り上げた商品の原価を意味し、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価を含まない(最高裁平成一九年六月一一日第二小法廷判決・集民二二四号五二一頁参照)。

 また、「総売上原価」には廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれており、このような「総売上原価」から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価等が控除されて「売上商品原価」が算出されるため、廃棄ロス及び棚卸ロスがどれだけ生じたとしてもチャージの金額には影響がないことになる。すなわち、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価そのものにチャージが課せられているわけではない。

  (4) 周辺店舗の出店と本件店舗の売上げ及び利益の推移

   ア 平成一四年にセブン―イレブンb店が、平成一五年にセブン―イレブンc町店が、平成一七年一月にd町店が、それぞれ出店された。

   イ 本件店舗の各年の売上げ及び利益の各合計は以下(上段〈右〉が売上げ、下段〈左〉が利益)のとおりである。

 (ア) 平成九年

 一億五四二四万五七三八円

 (ただし、四月以降)

 一〇〇三万七九九七円

 (同上)

 (イ) 平成一〇年

 二億四八五八万八〇〇九円

 一九三七万一八二五円

 (ウ) 平成一一年

 二億四八三七万四九二六円

 一八四四万六七七八円

 (エ) 平成一二年

 二億三八八〇万五五四五円

 一六五〇万五二四九円

 (オ) 平成一三年

 二億三六五八万五五七一円

 一五五二万三〇七二円

 (カ) 平成一四年

 二億二五二五万五一九三円

 一四三七万五五四六円

 (キ) 平成一五年

 二億一〇〇四万二三四四円

 一二七四万六九六四円

 (ク) 平成一六年

 一億八八九八万〇三八〇円

 一〇六九万八六七六円

 (ケ) 平成一七年

 一億五八六七万〇四六三円

 八三八万九七二一円

 (コ) 平成一八年

 一億四二七九万五七〇四円

 七〇二万〇五六一円

 (サ) 平成一九年

 一億二三六八万八一七八円

 五〇三万五七三三円

 二 争点に対する判断

  (1) 争点(1)(被告がd町店を出店させたことが債務不履行ないし不法行為に当たるか)について

   ア 競合店を出店させない義務について

 (ア) 本件契約書六条一項及び二項前段では、セブン―イレブン店の経営の許諾は、原告の店舗の存在する一定の地域を画し、原告に排他的、独占的権利を与えたり、固有の営業地盤を認めたりすることを意味するものではなく、被告は、必要と考えるときはいつでも、原告の店舗の所在する同一市・町・村・区内の適当な場所において、新たに別のセブン―イレブン店の経営をさせることができると規定されているから、被告は、原告の承諾を得ることなく、原告の本件店舗と商圏が重なる地域に別のセブン―イレブン店を出店させることができる。

 そうすると、たとえd町店の商圏が本件店舗の商圏と一部重なり、d町店の出店によって本件店舗の売上げが減少したとしても、そのことにより直ちに本件契約違反となるものではないし、また、不法行為が成立するものではない。

 もっとも、本件契約書前文三項が原告と被告が相協力して、事業の繁栄を図ることを本件契約の目的の一つとして掲げていること、本件契約書六条二項後段において、被告は、原告の営業努力が十分報いられるように配慮すると規定されていることの趣旨からすれば、被告が別のセブン―イレブン店を出店させることによる本件店舗の売上げや原告の生活に与える影響の程度、それに対する被告の認識ないし認識可能性の有無によっては、別のセブン―イレブン店の出店が信義則(民法一条二項)に反するものとして債務不履行を構成する場合や不法行為を構成する場合もあり得るというべきである。

 (イ) なお、原告は、原告の利益が九四万三〇〇〇円を下回るような競合店を出店させないとの特約があったと主張し、これに沿う原告本人の供述がある。

 しかしながら、原告が被告に対し契約締結前に提出した資金計画表(甲九)の月次固定費欄に九四万三〇〇〇円との記載があることは認められるものの、同欄の注には「月次固定費に見合う収入は顧客動向と経営努力に掛かっています。本部が保証できるものではありません。」と記載されており、全証拠を検討しても、この記載に反して被告担当者が月次固定費を下回ることになるような競合店を出店させないことを了解したことを裏付ける客観的な証拠はない。

 よって、原告本人の供述は信用できず、これを前提とする原告の上記主張は採用できない。

   イ 債務不履行ないし不法行為の成否

 前記前提事実(4)のとおり、平成一七年一月にd町店が出店されたところ、前記認定事実(4)イによれば、同年の本件店舗の売上げの合計を平成一六年のそれと比較すると、約三〇〇〇万円減少しており、平成一八年及び平成一九年の各売上げの合計もそれぞれ前年に比べて減少していることが認められる。

 ところで、都市部のコンビニエンスストアの商圏は、交通手段とは無関係に五分から一〇分圏内であるとされているところ、本件店舗とd町店とは、最短ルートでは五〇〇m、徒歩一〇分圏内にあることからすれば、形式的には商圏が一部重なっていると考えられる。

 しかしながら、商圏が一部重なると考えられるf町二丁目、同三丁目は、原告がファミリーマート店を出店した平成二年より前からf町二丁目に所在するローソンk駅前店の商圏でもあり、f町二丁目、同三丁目の住民は、以前から同店を利用することが多かったと推察されること、f町二丁目、同三丁目、西鉄g駅及びJR・k駅と本件店舗との位置関係や道路の状況からみて、同住民が上記各駅を利用する際に本件店舗に立ち寄ることが多かったともいい難いことを考慮すると、d町店の出店によって本件店舗の集客に大きな変動が生じたとは考え難く、本件店舗の平成一七年以降の売上げの減少に影響したとしても限定的なものにすぎないといわざるを得ない。

 また、前記認定事実(4)イによれば、本件店舗の売上げは、平成一〇年には二億五〇〇〇万円近くに上っていたが、その後、一貫して減少傾向が続き、平成一六年には二億円を下回るに至っていたものであって、平成一七年に突然本件店舗の売上げが減少に転じたものではないから、同年以降の売上げの減少については、d町店の出店以前の要因も十分に考えられるところである。このような観点からは、平成一五年九月に酒類販売免許規制の緩和により近隣の商業施設において酒類販売が可能となったこと、平成一六年秋頃には本件店舗から直線距離で三五〇m以内のa町三丁目(本件店舗と同じ町内)に所在するグルメシティg町店が二四時間営業を始めたことによる影響も見過ごすことができない(なお、原告は、酒類販売免許規制の緩和により既に売上げが落ち込んだ平成一六年の売上げと比較しているため、原告が主張する損害と上記規制緩和は何ら因果関係がないと主張するが、上記規制緩和による影響は一時的に生じるとは限らず、その後の酒類取扱店舗の増加により持続的に生じ得るものであるから、原告の当該主張は採用できない。)。

 さらに、平成一八年以降の売上げの減少については、同年四月に、本件店舗の商圏に含まれるg町の風俗店等が撤退したこと、平成一九年一月に本件店舗の商圏に含まれるJR・k駅の近くにampm・k駅前店が出店したことなどの影響も受けているものと考えられる。

 以上述べたところからすれば、平成一七年以降の本件店舗の売上げの減少の大部分については、被告がd町店を出店させたことによって生じたと評価すべき事情を認めることはできず、仮に、相当程度の影響があったとしても、被告においてこれを予測することは困難であったというべきであるから、被告の上記行為が、原告との関係で信義則(民法二条一項)に反し違法であるということはできない。

 よって、被告がd町店を出店させたことが債務不履行ないし不法行為に当たると認めることはできない。

   ウ 原告の主張について

 原告は、平成一六年一二月と平成一七年一二月のd町二丁目ほか四丁の公共料金等の振込手続委託者数を比較すると六三%減少していることを基に、平成一七年の総売上額で計算すると、九九九万六二三七円の売上減少となると主張している。

 しかしながら、原告が主張の根拠とする公共料金等の振込手続委託者の分布については、d町二丁目ほか四丁以外の委託者も七九八名から五三九名と三〇%余り減少している上、住所地が不明である者も、平成一六年一二月分については七六九名、平成一七年一二月分については八二八名おり、これら住所地不明者を含めた委託者の合計が平成一六年一二月分は一六六〇名、平成一七年一二月分は一四〇一名であるところ、これに対してd町二丁目ほか四丁の委託者の合計は平成一六年一二月分が九三名、平成一七年一二月分が三四名にすぎず、サンプルとしては少ないといわざるを得ないことからすれば、必ずしも上記統計が実態を正確に表しているとは限らない。さらに、仮に、原告の主張するように被告がd町店を出店させたことと約一〇〇〇万円の売上減少との間に因果関係が認められたとしても、原告の生活が困難になるほどの影響を生じさせたとはいえない上、前記イで述べたとおり、被告においてこれを予測することは困難であったというべきであるから、被告の上記行為が直ちに債務不履行ないし不法行為を構成することになるわけではない。

 よって、原告の上記主張は採用できないし、仮に採用できたとしても前記イの結論を左右しない。

  (2) 争点(2)(被告はロイヤリティ算定方式について説明義務を怠ったか(債務不履行及び不法行為の成否))について

   ア 説明義務について

 (ア) チャージは、加盟店に対する商号・商標等の使用の許諾やノウハウの供与に対する対価として本部に支払われるものであり、本部に対する加盟店の負担となるものであるところ、その算定方法は、加盟店がフランチャイズ店の経営によってどの程度の利益を得られるかを予測し、加盟店基本契約を締結すべきか否かや、フランチャイズ店をどのように経営すべきかを的確に判断するために重要な事項といえる。したがって、当該契約の契約内容、契約締結前後の経緯、加盟店となろうとする者又は加盟店の知識及び経験等の事情によっては、本部は、当該契約に付随する信義則上の義務として、加盟店となろうとする者又は加盟店に対し、チャージの算定方法について説明すべき義務を負う場合があるというべきである。

 前記認定事実(1)ケ及び(3)のとおり、被告におけるチャージ金額は、「{売上高-(総売上原価-仕入値引高-廃棄ロス原価-棚卸ロス原価)}×チャージ率」との計算式(被告方式)で算定され、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価は、売上高から控除される原価(売上商品原価)に含まれず、営業費とされている。ところで、企業会計原則注解一〇(3)によれば、「品質低下、陳腐化等の原因によって生ずる評価損については、それが原価性を有しないものと認められる場合には、これを営業外費用又は特別損失として表示し、これらの評価損が原価性を有すると認められる場合には、製造原価、売上原価の内訳科目又は販売費として表示しなければならない。」とされ、原価性を有するとは、販売又は保管等に関連して経常的に発生するものをいうところ、コンビニエンスストアにおいては、消費期限切れのデイリー商品の廃棄や品減りは、販売や保管に関連して日常的に発生するものであるから、原価性を有するものと考えられ、上記基準に従えば、売上原価の内訳科目又は販売費(営業費に含まれる。)として表示すべきこととなる。そして、原価性を有すると認められる場合、商品・製品については、販売に関連して発生したものであれば販売費とし、それ以外であれば売上原価の内訳科目として表示するとされているが、企業会計の専門家においてすら、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価を売上原価の内訳科目又は販売費のいずれとして表示すべきかの基準について、見解が定まっていない。コンビニエンスストアの業態においては、廃棄ロスや品減りは、販売活動に関連して生じるものとみて、販売費として表示することも許容されていると解される。もっとも、企業会計上、一般には、売上原価に廃棄ロス原価や棚卸ロス原価が含まれるものとして理解され、そのように学習されている。

 さらに、本件契約書においてチャージについて定めている四一条によれば、チャージ金額は、売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いたもの)に対してチャージ率を乗じた額とされているところ、そこでいう「売上商品原価」について定義した条項は存在せず、本件契約書から一義的にその意味を理解することはできない。もっとも、本件契約においては廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が営業費に含まれる以上、これらを売上原価の内訳科目として二重に計上することはできないのであり、前記認定事実(1)オ及びケのとおり、原告は、被告の担当者からこれらが営業費とされていることについて説明を受け、そのことが記載された本件契約書の内容を認識した上で本件契約を締結したのであるから、原告が上記のような企業会計に関する知識を有していたとすれば、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が「売上商品原価」に含まれないことを認識することは可能であったといえるが、そのような知識が一般常識に属するとはいい難い(そうであるからこそ、被告は、損益計算書の見方等について研修を実施しているものと思われる。)。原告は、過去にファミリーマート店を経営していた経験があるものの、そのことから直ちに原告に上記のような知識があったということはできず、前記認定事実(2)エのとおり、原告が損益計算書の記載内容を十分に理解していなかったこと(なお、損益計算書の「2 売上原価」の各項目には、加算、減算の記載がなく、これを見ただけでは、純売上原価が総売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価等を差し引いて計算されることを理解することは困難である。)に照らしても、原告が、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が「売上商品原価」に含まれないことを認識していたとはうかがわれない。

 そして、被告方式においては、チャージ算定の基礎となる売上総利益の算出において、総売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が控除されるため、一般的な方式、すなわち売上総利益の算出において売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価を控除しない方式と比較して、加盟店が負担するロイヤリティの額が高くなり、加盟店にとって不利な方式となっている。このように、一般的な方式と比較して廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価に相当する額の分だけロイヤリティの額が高くなることについては、本件契約書から明確に読み取ることができず、加盟店となろうとする者が自らこのことを理解するのは容易でないといわざるを得ないから、被告としては、上記のように被告方式が一般的な売上総利益の算定方式とは異なることについて、加盟店となろうとする者が理解できるように配慮する必要があるといえる。

 以上述べたところからすれば、被告は、原告に対し、チャージの算定方法(被告方式)について、チャージ算定の基礎となる売上総利益の算出において売上高から控除される「売上商品原価」には廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれないことを明確に説明すべき義務を負うものというべきである。

 (イ) 原告の主張するその余の説明義務について

 原告は、被告には前記(ア)以外の説明義務(前記第二の三(2))(原告の主張)ア(イ)②ないし⑤の説明義務)もあると主張する。

 しかしながら、被告が前記(ア)の説明義務を尽くしていれば、売上高から実際に売り上げた商品の原価を控除した売上総利益がチャージ算定の基礎となるものであって、廃棄ロスや棚卸ロスがどれだけ生じたとしてもチャージの金額には影響がないことを理解することができるし、営業費に廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれることについては原告が被告の担当者から説明を受けている上、本件契約書(付属明細書(ホ)二項)上も明らかであるから、廃棄ロスや棚卸ロスが発生した場合に、加盟店側の最終的な利益がどのような影響を受けるか(前記第二の三(2)(原告の主張)ア(イ)②)、及び仕入量の調整を図ることが重要であること(同④)については、原告において、被告から直接説明を受けるまでもなく理解することができるというべきである。また、加盟店における廃棄ロスや棚卸ロスの平均量の提示(同③)については、チャージの算定方法に直接関連するものではないし、営業費には関連があるものの、結局のところ各加盟店による仕入量の調整や販売促進等の経営努力によって左右される面が大きいと考えられ、一般的に経営判断をするに当たって重要な事項であるとはいい難いから、被告としては、加盟店から求められたときに提示すれば足りるというべきであって、自ら積極的に説明すべき義務があるとまで認めることはできない。さらに、見切り販売をする方策の提示とそれが禁じられていないこと(同⑤)については、商品販売価格の決定権が原告にあることは本件契約書(三〇条、三一条一項)上明らかであるし、どのような場合にどのような方法で見切り販売をするかも加盟店の自主的な判断に委ねられているというべきであり、加盟店が被告から説明を受けなければ理解できないという性質の事柄ではないから、被告に説明義務があると認めることはできない。

 よって、原告の主張する前記(ア)以外の説明義務(前記第二の三(2)(原告の主張)ア(イ)②ないし⑤の説明義務)については、被告がこれらの義務を負っていると認めることはできない。

   イ 説明義務違反について

 前記認定事実(1)オ及びケ並びに原告本人の供述によれば、原告は、契約締結前である平成八年一一月一三日及び契約締結日である平成九年一月四日に、Dから、チャージの算定方法について、売上高から売上商品原価を差し引いた売上総利益にチャージ率を乗じてチャージを算定する旨の説明を受けるにとどまり、本件契約書四一条の「売上商品原価」ないし損益計算書上の「純売上原価」に廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれていないことについては説明を受けなかったものと認められるし、前記認定事実(2)及び原告本人の供述によれば、契約締結後においても、原告がBから上記の点が記載された平成一八年二月四日付け書面の交付を受けるまで、被告が開催したスクールトレーニングの際や、DM、OFCなどの担当者の訪問の際などに、売上原価に廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれていないことについて明確な説明を受けたことはなかったものと認められる。

 そして、上記事実は、本件契約書中に「売上商品原価」の定義規定がないこと、Dが用いた説明用資料には、売上総利益の算出において、売上高から差し引くものが実際に売り上げた商品の原価であることを端的に示す記載はないこと、スクールトレーニングテキストにも、売上高から売上原価を差し引いたものが売上総利益であり、それを本部と加盟店に分配することを示す記載しかなく、売上原価の内容を説明する記載はないことによって裏付けられているというべきである。

 よって、被告は、売上高から差し引く売上商品原価には廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれないことを説明すべき義務を怠ったものであり、前記ア(ア)の説明義務に違反したものと認められる。

   ウ 被告の主張について

 (ア) 被告は、原告に対し、売上総利益は売上高から実際に売り上げた商品の仕入原価(純売上原価)を控除して算定すること、純売上原価は、月初商品棚卸高に当月商品仕入高を加え、そこから月末商品棚卸高を差し引き計算した総売上原価から、仕入値引高、商品廃棄等(廃棄ロス原価)、棚卸増減(棚卸ロス原価)をそれぞれ差し引いて計算した金額であることを説明していると主張し、これに沿う証人Dの証言がある。

 しかしながら、Dが説明用資料(乙五一。なお、説明用資料は随時差し替えられており、乙五一は当時のものではないが、内容的には当時も同様のものであった。)中の平均日販の異なる複数の損益計算書の例を説明に用いた目的は、売上高と営業費の額によって最終的な利益が変わることを説明する点にあったと認められることや、前記イで述べた本件契約書、説明用資料及びスクールトレーニングテキストの各記載内容からすれば、Dが損益計算書の「2 売上原価」の各項目に逐一触れて、総売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価等を差し引いたものが純売上原価であることを説明したとは考え難く、この点の説明をしたという証人Dの証言は信用することができないから、これを前提とする被告の上記主張は採用することができない。

 (イ) また、被告は、「加盟店オーナーは総収入の中から営業費を負担すること」、「営業費には、棚卸ロス、不良品(廃棄ロス)各原価がそれぞれ含まれること」、「不良品(廃棄ロス)は、品減り(棚卸ロス)及び人件費と同様に、加盟店オーナーが負担する三大経費であることから、店舗の利益を増加させるためには、適正にすることが重要であること」等を説明しており、棚卸ロス及び廃棄ロスの各原価を売上原価及び営業費として二重に計上することは、経費の二重計上となり、税務会計上及び企業会計上許容されないことは、社会的常識として一般人も認識している事柄であるから、説明義務を尽くしていると主張する。

 しかしながら、一般的に、一般人はおろか、小売店を経営する者が企業会計の基本といえども正確に理解しているということはできず、原告においてこれを理解していたこともうかがわれないことから、被告が営業費に棚卸ロス原価及び廃棄ロス原価が含まれているとの間接的な説明をしただけではチャージの算定方法についての説明義務を免れないことは、前記ア(ア)で述べたとおりである。

 よって、被告の主張する上記説明によっては、前記ア(ア)の説明義務を尽くしたことにはならず、被告の上記主張は採用できない。

 (ウ) さらに、被告は、システムマニュアル記載のチャージの計算式を見れば、廃棄ロス原価が売上原価ではなく、営業費に含まれることが明らかであるなどと主張する。

 しかしながら、前記認定事実(2)アのとおり、原告がシステムマニュアルの交付を受けたのは、契約締結後に参加したスクールトレーニングの最終日である平成九年三月一四日であるところ、スクールトレーニングにおいてはシステムマニュアルを用いた説明はなく、また、システムマニュアルは大部にわたるもので、加盟店がこれを精読することを期待することはできず、店舗を経営する中で疑問が生じたときに参照するものにすぎないと考えられるから、原告が交付を受けたシステムマニュアルに純売上原価は総売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価等を差し引いて計算される旨が記載されているからといって、被告が前記ア(ア)の説明義務を尽くしたということはできない。

 以上からすれば、被告の上記主張は採用できない。

  (3) 争点(3)(被告はデイリー商品について再販売価格を拘束したか(不法行為の成否))について

   ア 拘束条件付取引(「不公正な取引方法」一三項)該当性について

 (ア) 前記認定事実(2)カ、キ及びシによれば、原告が平成一六年一一月に翌一二月から値下げ販売を開始すると通知した際に、DMのBが本件店舗に来店し、原告に対し、値下げ販売をやめるように指導するなどしたため、原告が同月からの値下げ販売をやめ、平成一七年一月から一部のデイリー商品に限ってクーポンによる値下げ販売を開始したこと、それ以降、Bが毎週のように本件店舗に来店し、値下げ販売をやめるように指導したこと、平成一九年一一月一日に当時のDMのC、OFC及びリクルート担当者が本件店舗に来店し、原告に対し、値下げ販売をやめるように強く指導するとともに、それに応じない場合には、本件契約の解除ないし解約等の不利益な取扱いをすることも検討する旨を示唆したことが認められる。これらの事実によれば、被告は、原告に対して値下げ販売をやめるように指導することで、原告に対してその販売する商品の販売価格を標準小売価格に維持させようとし、原告の商品の販売価格の自由な決定を拘束したものというべきであり、相手方とその取引の相手方との取引を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引を行っているものと認められ、かつ、上記拘束条件が原告の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないといえないことは明らかで、被告の上記行為に正当な理由があるということはできないから、「不公正な取引方法」一三項の拘束条件付取引に該当する(なお、原告は、被告の行為が「不公正な取引方法」一二項に該当する旨主張するが、同項は、商品の供給者を対象とするものであるところ、被告が商品の供給者でないことは明らかであり、同項に規定する行為と同様の行為で同項の要件を満たさないものは同一三項の対象となるから、原告は、不公正な取引方法として、同一三項に該当する行為をも主張しているものと解する。)。

 (イ) なお、前記認定事実(2)クないしコのとおり、原告が一円値下げ廃棄を開始した後、被告が原告に対して一円値下げ廃棄をやめるように言ったために、原告がこれをやめたこと、Bは、平成一八年二月四日付けで、原告に対し、一円値下げ廃棄が本件契約違反になる理由について、原告の質問に対する回答を記載した書面を交付し、同書面には、「同行為を貴殿が再び行われた場合、当社としましてもこれを看過することはできません。」と記載されていたことが認められるところ、原告は、一円値下げ廃棄を値下げ販売と同視して、被告のこれらの行為が原告に対して値下げ販売をやめるように強制するものであると主張する。しかしながら、商品の売価を一円として廃棄すると、チャージの算定において、一円に原価率を乗じた金額のみが廃棄ロス原価として総売上原価から控除され、その余の実際の廃棄ロス原価が売上商品原価に含まれてしまうため、これにチャージ率を乗じた金額を被告に負担させる一方で、原告は、その負担を免れることになる。すなわち、一円値下げ廃棄は、本件契約上原告が営業費として全額負担すべき廃棄ロス原価の一部をチャージの減少分として被告に負担させ、本件契約に反する結果をもたらすものであることから、被告は、「商品を一円に値下げし、そのまま廃棄登録する行為」をやめるように求めたにすぎない。廃棄の際に商品の売価を一円としてコンピューターに登録する行為と、廃棄を減らすために行う値下げ販売とが異なることは明らかであり、被告の上記行為は、値下げ販売をやめるように強制するものであるとはいえない(なお、商品の値下げをしたものの、販売できずに廃棄する場合は、仕入伝票記載の売価(値下げ前の売価)をコンピューターに登録するものとされている(甲二八)。)。

 また、原告は、被告がポスレジシステムを採用していたことが、商品の販売価格を事実上拘束していると主張するが、セブン―イレブン店においては、レジにてバーコードをスキャンせずに販売価格を手打ち入力することにより値下げ販売をすることは可能であるところ、直接入力によって販売した数量を正確に記録し、これをコンピューターに反映させれば、通常の場合と同様に在庫管理や発注処理を行うことが可能であることが認められ、被告の採用するポスレジシステムが値下げ販売を不可能にするものとはいえないから、被告がポスレジシステムを採用していたこと自体が、原告の商品の販売価格を拘束するものということはできない。

 (ウ) 以上のとおり、被告が原告に対して値下げ販売をやめるように指導した行為は、拘束条件付取引という不公正な取引方法を用いたものというべきであり、独占禁止法一九条に違反するものと認められる。

   イ 被告の主張について

 被告は、被告の経営方針に基づいて、値下げ販売のデメリットについてカウンセリングを行ったものであって、値下げ販売を禁止したものではないし、平成一九年一一月一日のCの発言についても、Cの個々の発言内容のみを取り出して、値下げ販売の制限を意図的に行ったものと判断すべきではなく、むしろ、クーポンによる継続的な値下げ販売により、本件店舗の売上げが今後も減少する可能性が高いと予測されたため、Cは、原告に対し、原告にとっても利益にならないとのカウンセリングを行ったものであり、また、原告は二年間以上もクーポンによる値下げ販売を継続していたから、被告から値下げ販売の取りやめを余儀なくさせられたということはなく、被告の行為は独占禁止法に違反するものではないと主張し、これに沿う証人Cの証言がある。

 しかしながら、原告が値下げ販売を開始した後、Bが毎週のように本件店舗に来店するという態様自体からみても、Bがカウンセリングを行うにとどまっていたとは考え難い上、Bが原告に対して値下げ販売をやめるように言った旨の原告本人の供述を覆すに足りる証拠もないから、Bは、原告に対し、値下げ販売をやめるように指導したものというべきである。

 また、前記認定事実(2)シのとおり、Cらが本件店舗に来店した平成一九年一一月一日、被告側から、デイリー商品の値下げ販売はセブン―イレブンイメージを逸脱しているので、やめてもらいたいとの発言が繰り返しされており、これが値下げ販売をやめるように指導したものではなく、カウンセリングの域にとどまるものであるとは到底いえない。証人Cは、「絶対にやめていただきたいという意思」とは周囲の加盟店の意思である旨述べているが、その前後の会話の内容をみても、上記発言が、自らの意思ではなく、周囲の加盟店の意思を伝える趣旨であることは何らうかがわれないし、証人Cは、上記発言が一面では被告のチャージを上げることをも目的とするものであることを認めているから、上記発言は、被告の意思を表すものというべきである。さらに、証人Cは、「改善勧告」とはクーポンによる値下げ販売によって損なわれていた本件店舗における商品の鮮度等に対するイメージを改善するために販売方法を変える必要があるという趣旨であるとして、これが値下げ販売をやめるように求める趣旨ではないかのように述べているが、「販売方法を変える」というのは、イメージを損なった値下げ販売をやめることを意味するとしか考えられないから、「改善勧告」との発言は、正に値下げ販売をやめるように勧告するという趣旨であるというほかない。

 そして、前記認定事実(2)カ、キ、ケ、シ及びスによれば、原告は、当初、平成一六年一二月から値下げ販売を実施する予定であったが、Bから値下げ販売をやめるように指導を受けたことから、平成一七年一月までその実施を遅らせ、かつ、被告からの圧力を恐れて値下げ販売の対象を一部のデイリー商品のみとし、その後も被告から執拗に同様の指導を受けたため、一部のデイリー商品についてのみ値下げ販売を継続していたものと認められ、原告は、被告の指導がなければ、より多くのデイリー商品についても値下げ販売を行っていたものと考えられるから、原告が被告の指導後も結果的に値下げ販売を続けていたことを理由に、被告から商品の販売価格の自由な決定を拘束されたことがなかったとはいえない。

 よって、被告の上記主張はいずれも採用できない。

  (4) 争点(4)(被告は仕入先からの仕入代金に一定金額を上乗せした金額を原告から取得したか(不当利得の成否))について

 証拠によれば、例えば、原告が被告に対して支払った平成一四年三月分のh社からの仕入れ(酒類関係のみ。以下同じ。)に係る代金額は合計二三四万六〇四五円である(甲一二の一)一方、同月分のh社の請求金額(「今回値引・容器・金券」分による控除前の金額。なお、原告が被告に対して支払うべき上記代金額には、同控除分は含まれていない。)は二二三万六二六〇円であることが認められる(甲一一の一)。

 もっとも、全証拠を検討しても、被告が平成一四年三月から平成一八年一二月までの間にこれらの金額の差額を利得していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって、h社酒類福岡支店長の甲一一は外税方式で消費税を含まない請求である旨の説明、並びに、請求書(甲一一)の記載内容及び仕入日報(甲一二)のh社からの仕入れに関する記載内容(例えば、上記h社の請求金額二二三万六二六〇円から非課税の仕入原価四万〇二六〇円(甲一二の一)を除くと二一九万六〇〇〇円となり、これは仕入日報における税抜きの仕入原価(甲一二の一)と一致する。)からすれば、被告の主張するように、h社の請求書の金額には消費税が含まれておらず、それゆえ上記差額が生じたものとうかがわれる。

 よって、原告の主張を採用することはできない。

  (5) 争点(5)(損害ないし不当利得の有無及び額)について

 ロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反(争点(2))及び商品の販売価格の拘束(争点(3))による損害の有無及び額について検討する。

   ア 損害の有無について

 (ア) ロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反(争点(2))について

 原告は、被告から被告方式について説明を受けていなかったことから、被告が廃棄ロスの負担を全く負わない仕組みであることを知らず、契約当初から廃棄ロスを減らすために値下げ販売を行う動機を形成し得なかったかのように主張する。

 しかしながら、前記認定事実(1)オ及びケ並びに(2)アのとおり、原告は、契約締結前に、被告の担当者から廃棄ロス原価が営業費の一つとされ、これをコントロールすることが利益につながることについて説明を受け、廃棄ロス原価が原告の負担すべき営業費とされていることが記載された本件契約書の内容を認識した上で本件契約を締結したものであり、その後も、被告のスクールトレーニングにおいて、総収入から営業費を差し引いたものが利益となるとして、上記と同様の説明を受けたものであるから、原告は、本件契約上、廃棄ロス原価は原告が負担すべきものであり、これを減らすことによって利益を上げることができることを認識していたものと認められる。加えて、本件契約書三〇条においては、原告が標準小売価格で販売することを強制されるものではないと規定されており、原告は、契約締結当時から、値下げ販売をすることができることも認識していたものと認められる。したがって、原告が被告から廃棄ロス原価を総売上原価から控除するという被告方式について説明を受けていなかったからといって、廃棄ロスを減らすために値下げ販売を行うことに思い至らなかったということはできない。

 この点、原告は、被告のスクールトレーニングにおいて、廃棄ロスが営業費との関係でどのように処理されているかについて説明を受けなかった旨供述するが、スクールトレーニングテキスト(乙一二)においては、「利益を上げるためには」と題する頁に「営業費を適正にする」との項目があり、その下に「三大経費」と記載されて、参加者が三大営業費(人件費、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価)を書き込む欄が三つ設けられていること、原告自身、「三大経費」について説明を受けたことを認めていることに照らし、原告の上記供述は信用することができない。また、原告は、契約締結前から経費は自分の責任であると認識していたこと、ファミリーマート店を経営していた際、経費の削減については廃棄ロスを出さないように心掛けていたこと、平成一九年一一月一日に不良品(廃棄ロス原価)については本件契約書で原告が負担するものと定められているから、それは仕方がないという趣旨の発言をしたことからも、原告は、契約締結当時から、廃棄ロス原価が原告の負担となることを認識していたものということができる。

 よって、原告の上記主張は採用できず、被告のロイヤリティ算定方式に関する説明義務違反によって、原告が値下げ販売を行うことができなかったために損害が発生したということはできない。

 (イ) 商品の販売価格の拘束(争点(3))について

 証拠によれば、原告が値下げ販売を始めた平成一七年一月以降の各月の廃棄ロス原価は、平成一六年の各月における廃棄ロス原価に比べて、小さくなっており、値下げ販売により廃棄ロスが少なくなったこと、原告は、値下げ販売を行ったのは一部のデイリー商品についてのみであり、上記のとおり、被告による値下げ販売の制限行為があったことから、控えめに値下げ販売を行っていたこと、他の加盟店の実績を見ても、継続的な値下げ販売により、廃棄ロスを大幅に減らすことに成功していることが認められ、これらの事実からすれば、被告による値下げ販売の制限行為がなければ、原告は、値下げ販売を始めようとした平成一六年一二月からより多くのデイリー商品を対象として値下げ販売を行うことにより、より多くの廃棄ロスを減らすことができたものと認められる。

 そして、デイリー商品の継続的な値下げ販売によって当然に売上げが減少するという理解が一般的であるわけではないし、実際に、値下げ販売によって大幅に廃棄ロスを減らすことに成功した店舗においても、売上げや利益に影響がない店舗やむしろ売上げや利益が伸びている店舗もあるから、値下げ販売により当然に売上げないし利益の減少を招くものとはいえない。そうすると、廃棄ロスを減らすことにより、加盟店の最終的な利益が増えるという関係を認めることができる。

 以上からすれば、原告は、平成一六年一二月以降、被告による前記(3)の商品の販売価格の拘束がなければ、より広範な値下げ販売によって廃棄ロスを減らすことができ、実際よりも利益を上げることができたものというべきであるから、原告には、その差額分について損害が発生しているといえる。

   イ 損害額について

 商品を廃棄した場合には、被告方式においては、当該商品の原価を売上高から差し引くことはできず、売上総利益の額には影響を与えないから、被告に対するチャージ金額及び原告の総収入には影響を与えず、営業費の不良品科目として当該商品の原価が総収入から差し引かれる結果、原告が当該商品の原価を全額負担することとなる。これに対し、商品を販売した場合には、当該商品の販売額が売上げとして計上され、当該商品の原価相当額を売上高から差し引いた売上総利益を、チャージ率に従って原告と被告に案分することとなる。そのため、原価以上で販売した場合には、原告の総収入及びチャージ金額がともに増加し、一方、原告は原価相当額の営業費としての負担を免れることとなる。また、原価未満で販売した場合には、計算上、その売上高から当該原価を控除した金額がマイナスとなる結果、これにチャージ率を乗じたチャージ金額もマイナスとなり、契約上原告が全額負担すべき商品の原価の一部を被告が負担することとなってしまうため、これを避けるために、当該マイナスチャージ分が営業費の「その他非課税雑費」に計上され、結果として原告が営業費として当該マイナスチャージ分を負担することとなる(甲二八)。このように、原価以上で販売した場合には、商品を廃棄した場合と比べてチャージ金額が増えるものであるし、原価未満で販売した場合には、商品を廃棄した場合と比べて計算上はチャージが減少するものの、原告がその減少分を営業費として負担することになるため、原告のチャージの負担額は、商品を廃棄した場合と実質的に変わらず、原価未満での販売と商品廃棄との違いは、原価負担が売上げの分だけ減少するか否かの点にしかないから、チャージの減少分を原告の損害と捉えることはできず、原価未満で販売した場合には、売上げによって原価負担が減少した分のみが原告の損害となる(例えば、原価六〇円の商品を四〇円で販売した場合には、売上総利益が-二〇円となり、これにチャージ率四三%を乗じたチャージ金額は-八・六円となって、商品を廃棄した場合と比べて計算上は八・六円分チャージが減少することになるが、営業費の「その他非課税雑費」に八・六円が計上され、原告が上記チャージの減少分を営業費として負担することになるため、原告のチャージの負担額は、商品を廃棄した場合と実質的に変わらないこととなる。そうすると、原告の最終的な利益は、総収入-一一・四円と営業費-八・六円との合計の-二〇円となるから、四〇円の売上げによって、原価六〇円全額を負担することになる商品廃棄の場合と比べて、その負担が二〇円となっており、その減少分である四〇円のみが原告の損害となる。)。

 以上からすれば、商品を原価以上で販売した場合には、原告の総収入の増加分と原価相当額が、原価未満で販売した場合には、原告の原価負担の減少分が、それぞれ原告の損害と捉えられるべきこととなる(なお、厳密には、値下げ販売を行うために宣伝費等の営業費が生じることも考えられるが、ここでは除いて検討する。)。

 そうすると、原告が値下げ販売を行って商品を販売することによって廃棄ロスを減らした場合、販売額が幾らかによって原告の最終的な利益は変わることになるし、また、値下げ販売を行ったとしても、常に商品を全て売り切って廃棄ロスをなくすことは現実的には困難であるところ、どの程度廃棄ロスを減らすことが可能であったか、どの商品を幾らで何個売ることが可能であったかを立証することは困難であるといわざるを得ない。

 したがって、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるというべきであるから、民事訴訟法二四八条を適用し、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、原告の原価負担の減少分について、相当な損害額を認定することとする(原告は、①原価以上で販売した場合の総収入の増加分については損害として主張していない。なお、原告は、上記のとおり原告の損害と捉えることのできない②ロイヤリティ減少分を損害として主張しているものの、その前提として、値下げ販売を行った場合とこれを行わずに商品を廃棄した場合との差額の損害が生じていると主張している上、②は、値下げ販売(原価以上か原価未満かを問わない。)をした場合に原告の原価負担が減少することに伴ってロイヤリティが減少すると主張するものと解されるから、②については原価負担の減少分を損害として主張する趣旨を含むと解する。)。

 そこで検討すると、原告が値下げ販売を開始しようとした平成一六年一二月から平成二〇年一月の閉店までの廃棄ロス原価(損益計算書の「営業費」の内訳科目である「不良品」の額)の合計額が一一〇七万〇六八四円であること、原告は平成一七年一月以降、デイリー商品の主力商品と考えられる弁当、おにぎり、サンドウィッチについて、クーポンによる値下げ販売を行っていたこと、販売額が原価未満となることもあり得るが、なるべくこれを避けようとするのが通常であると考えられること、値下げ販売を継続的に行うと売上げの減少を招く可能性もあることなどを考慮し、原告の損害額を二〇〇万円であると認定するのが相当である。

  (6) 被告の責任

 以上述べたことからすれば、被告は、原告に対し、デイリー商品についての販売価格の拘束を行ったことによって上記(5)の損害を被らせたことについて、少なくとも過失があったものというべきであるから、不法行為責任を負う。

  (7) 弁護士費用

 本件事案の性質及び経過、被告の違法行為の態様、原告が受けた損害額、その他本件で現れた一切の事情を総合的に考慮すると、被告の上記不法行為と相当因果関係がある弁護士費用の額としては、二〇万円と認めるのが相当である。

第五 結論

 以上によれば、原告の請求は、二二〇万円及びこれに対する平成二〇年六月一二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。