(参考判例)最高裁第三小法廷平成15年10月21日判決〔サブリース訴訟上告審判決〕

サブリース契約において借地借家法32条に基づく賃料減額請求をした事案。

■判例 東京地裁平成25年10月9日判決〔ラグジュアリーホテルの賃料減額請求事件〕

審級関係

東京地裁平成10年 8月28日判決(第一審)

東京高裁平成12年 1月25日判決(控訴審)

東京高裁平成16年12月22日判決(差戻後控訴審)

主文

 原判決を破棄する。

 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 

 

理由

第1 事案の概要

 1 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

  (1) 平成一二年(受)第五七三号上告人・同第五七四号被上告人(以下「第一審被告」という。)は,不動産賃貸等を目的とする資本金八六七億円余の株式会社であり,我が国不動産業界有数の企業である。平成一二年(受)第五七三号被上告人・同第五七四号上告人(以下「第一審原告」という。)は,不動産賃貸等を目的とする資本金約二億六〇〇〇万円の株式会社である。

  (2) 第一審原告は,昭和六一年ころ,三井不動産株式会社からの勧めもあって,東京都文京区本郷〈番地略〉外の土地上に賃貸用高層ビルを建築することを計画し,同年一一月ころ,著名な建築家であるノーマン・フォスターに建物の設計を依頼し,同年一二月ころ,フォスター設計事務所との間で覚書を交わした。第一審原告は,昭和六二年六月,第一審被告から,上記の土地上に第一審原告が建築したビルで第一審被告が転貸事業を営み,第一審原告に対して長期にわたって安定した収入を得させるという内容の提案を受け,第一審被告とも交渉を進めることとした。

 そして,第一審原告は,昭和六三年一〇月,第一審被告から,①第一審被告が,第一審原告使用部分を除き,ビル全館を一括して賃借し,第一審被告の責任と負担でテナントに転貸する,②賃料は,共益費を含め,年額二三億一〇七二万円とし,この賃料額は,テナントの入居状況にかかわらず変更しない,③賃料のうち一九億九二〇〇万円については,三年経過するごとに,その直前の賃料の一〇%相当額を値上げするとの提案を受け,第一審被告との間で契約を締結することとし,契約内容の具体化を進めた。

  (3) 第一審原告は,昭和六三年一二月一三日,第一審被告との間で,原判決別紙物件目録一記載の建物(通称「センチュリータワービル」。以下「本件建物」という。)のうち同目録二記載の部分(以下「本件賃貸部分」という。)を下記(4)の内容で第一審被告に賃貸する旨の予約をした。

 第一審原告は,同月一四日,上記予約で約定した敷金額四九億四三五〇万円のうち一六億五五〇〇万円の預託を受けた。第一審原告は,株式会社大林組との間で本件建物の建築請負契約を締結し,同社に対し請負代金等合計二一二億円余を支払い,また,フォスター設計事務所に対しても設計料一八億円余を支払ったが,これらの支払のうち上記の敷金で賄いきれなかった一八一億円余については,銀行融資を受けた。

  (4) 本件建物は,平成三年四月一五日に完成し,第一審原告は,同月一六日,上記予約に基づき,第一審被告との間で,次の内容の契約(以下「本件契約」という。)を締結し,本件賃貸部分を第一審被告に引き渡した。

 ア 第一審原告は,第一審被告に対し,本件賃貸部分を一括して賃貸し,第一審被告は,これを賃借し,自己の責任と負担において第三者に転貸し,賃貸用オフィスビルとして運用する。第一審被告は,転借人を決定するには,事前に第一審原告の書面による承諾を得る。

 イ 賃貸期間は,本件建物竣工時から一五年間とし,期間満了時には,双方協議の上,更に一五年間契約を更新する。賃貸期間中は,不可抗力による建物損壊又は一方当事者の重大な契約違反が生じた場合のほかは,中途解約できない。

 ウ 賃料は,年額一九億七七四〇万円,共益費は,年額三億一六四〇万円とし,第一審被告は,毎月末日,賃料の一二分の一(当月分)を支払う。

 エ 賃料は,本件建物竣工時から三年を経過するごとに,その直前の賃料の一〇%相当額の値上げをする(以下,この合意を「本件賃料自動増額特約」という。)。急激なインフレ,その他経済事情に著しい変動があった結果,値上げ率及び敷金が不相当になったときは,第一審原告と第一審被告の協議の上,値上げ率を変更することができる(以下,この合意を「本件調整条項」という。)。

 オ 第一審被告は,第一審原告に対し,敷金として,総額四九億四三五〇万円を預託する。

 カ 第一審被告が賃料等の支払を延滞したときは,第一審原告は,通知催告なしに敷金をもって弁済に充当することができ,この場合,第一審被告は,第一審原告から補充請求を受けた日から一〇日以内に敷金を補充しなければならない。

  (5) 第一審被告は,第一審原告に対し,本件賃貸部分の賃料について,平成六年二月九日に,同年四月一日から年額一三億八一九四万四〇〇〇円に減額すべき旨の意思表示をしたのを最初として,同年一〇月二八日に,同年一一月一日から年額八億六八六三万二〇〇〇円に減額すべき旨の意思表示を,平成九年二月七日に,同年三月一日から年額七億八九六七万二〇〇〇円に減額すべき旨の意思表示を,平成一一年二月二四日に,同年三月一日から年額五億三三九三万九〇三五円に減額すべき旨の意思表示を,それぞれ行った。

 なお,第一審被告がテナントから受け取る本件賃貸部分の転貸料の合計は,平成六年四月当時,平成九年六月当時のいずれも月額一億一五一六万二〇〇〇円であり,平成一一年三月当時は約四五八一万円となり,同年四月以降は六〇〇〇万円前後で推移している。

  (6) 第一審被告は,第一審原告に対し,平成六年四月分から平成九年三月分まで賃料として月額一億四五七七万四五二七円を支払い,平成九年四月分から平成一一年一〇月分まで賃料として月額一億四八六〇万五〇九九円(ただし,平成九年四月分及び平成一〇年四月分については,月額一億四八六〇万五一一一円)を支払った。

  (7) 第一審原告は,平成六年四月分から平成九年一二月分までの約定賃料等と支払賃料等との差額分及びこれに対する遅延損害金を敷金から充当することとし,第一審被告に対し,敷金の不足分の補充を請求した。

 2 本件本訴請求事件は,第一審原告が,第一審被告に対し,主位的に,本件賃料自動増額特約に従って賃料が増額したと主張して,上記敷金の不足分と平成一〇年一月分から平成一一年一〇月分までの未払賃料との合計五二億六八九九万五七九五円とこれに対する年六%の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,第一審被告の賃料減額請求の意思表示により賃料が減額されたことを前提として,借地借家法三二条一項の規定により賃料が減額される可能性があることについて第一審被告に説明義務違反があるなどと主張して,不法行為又は債務不履行に基づき上記金額と同額の損害賠償を求めるものである。

 そして,本件反訴請求事件は,第一審被告が,第一審原告に対し,借地借家法三二条一項の規定に基づき第一審被告の賃料減額請求の意思表示により賃料が減額されたことを主張して,本件賃貸部分の賃料が平成六年四月一日から同年一〇月末日までの間は年額一三億八一九四万四〇〇〇円,同年一一月一日から平成九年二月末日までの間は年額八億六八六三万二〇〇〇円,同年三月一日から平成一一年二月末日までの間は年額七億八九六七万二〇〇〇円,同年三月一日以降は年額五億三三九三万九〇三五円であることの,それぞれ確認を求めるものである。

第2 平成一二年(受)第五七三号上告代理人遠藤英毅,同今村健志,同戸張正子,同奈良次郎,同伊藤茂昭,同進士肇,同岡内真哉,同田汲幸弘,同奈良輝久の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

 1 原審は,前記の事実関係の下で,次のとおり判断して,第一審原告の主位的請求を,三五億二三二三万二四四五円とこれに対する年六%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の主位的請求及び予備的請求を棄却し,第一審被告の反訴請求を棄却すべきものとした。

  (1) 本件契約は,建物賃貸借契約の法形式を利用しているから,建物賃貸借契約の一種がその組成要素となっていることは否定できないが,典型的な賃貸借契約とはかなり異なった性質のものと認められ,その実質的機能や契約内容にかんがみると,建物賃貸借契約とは異なる性質を有する事業委託的無名契約の性質を持ったものと解すべきである。したがって,本件契約について,借地借家法の全面的適用があると解するのは相当ではなく,本件契約の目的,機能及び性質に反しない限度においてのみ同法の適用があるものと解すべきである。

 本件契約は,その内容や交渉経過に照らせば,取引行為者として経済的に対等な当事者双方が,不動産からの収益を共同目的とし,それぞれがより多額の収益を確保するために,不動産の転貸から得られる収益の分配を対立的要素として調整合意したものであり,第一審原告は,収益についての定額化による安定化と将来にわたる確実な賃料増額を図るために,本件賃料自動増額特約を付し,本件賃貸部分を一括して賃貸することとして本件契約を締結したのであるから,その限りにおいて,本件契約においては賃料保証がされているものと解される。そして,本件契約においては,本件賃料自動増額特約による賃料と現実の転貸料とのかい離が著しく不合理となったときに対処するために,本件調整条項が設けられているのであるから,本件契約にあっては,借地借家法三二条一項所定の賃料増減額請求権の制度は,本件調整条項によって修正され,上記規定は,その手続や請求権の行使の効果など限定された範囲でのみ適用があると解するのが相当である。

  (2) 第一審被告が平成六年二月九日及び平成九年二月七日にした賃料減額請求は,賃料自動増額の時期の到来に対抗してされたものであり,本件調整条項に基づく値上げ率を変更する旨の意思表示を含むものと解するのが相当である。そして,不動産市場や賃貸ビル市場の著しいマイナス変動により,賃料と転貸料との間に不合理な著しいかい離が生じていると認められるから,第一審被告が平成六年二月九日及び平成九年二月七日に本件調整条項に基づいて行った賃料の減額請求により,それぞれの時期の値上げ率が〇%に変更されたものと認めるのが相当である。

 以上によれば,本件契約の賃料は,平成六年四月以降も従前どおりの金額であるから,第一審原告の主位的請求に係る敷金の不足額と未払賃料との合計は,三五億二三二三万二四四五円となる。

 したがって,第一審原告の主位的請求は,三五億二三二三万二四四五円とこれに対する年六%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。また,第一審被告の反訴請求も,理由がない。

  (3) 第一審原告の予備的請求については,第一審被告に説明義務違反等があるとは認められないから,理由がない。

 2 しかしながら,原審の上記(1),(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

  (1) 前記確定事実によれば,本件契約における合意の内容は,第一審原告が第一審被告に対して本件賃貸部分を使用収益させ,第一審被告が第一審原告に対してその対価として賃料を支払うというものであり,本件契約は,建物の賃貸借契約であることが明らかであるから,本件契約には,借地借家法が適用され,同法三二条の規定も適用されるものというべきである。

 本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが,借地借家法三二条一項の規定は,強行法規であって,本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから(最高裁昭和二八年(オ)第八六一号同三一年五月一五日第三小法廷判決・民集一〇巻五号四九六頁,最高裁昭和五四年(オ)第五九三号同五六年四月二〇日第二小法廷判決・民集三五巻三号六五六頁参照),本件契約の当事者は,本件賃料自動増額特約が存するとしても,そのことにより直ちに上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。

 なお,前記の事実関係によれば,本件契約は,不動産賃貸等を目的とする会社である第一審被告が,第一審原告の建築した建物で転貸事業を行うために締結したものであり,あらかじめ,第一審被告と第一審原告との間において賃貸期間,当初賃料及び賃料の改定等についての協議を調え,第一審原告が,その協議の結果を前提とした収支予測の下に,建築資金として第一審被告から約五〇億円の敷金の預託を受けるとともに,金融機関から約一八〇億円の融資を受けて,第一審原告の所有する土地上に本件建物を建築することを内容とするものであり,いわゆるサブリース契約と称されるものの一つであると認められる。そして,本件契約は,第一審被告の転貸事業の一部を構成するものであり,本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定は,第一審原告が第一審被告の転貸事業のために多額の資本を投下する前提となったものであって,本件契約における重要な要素であったということができる。これらの事情は,本件契約の当事者が,前記の当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから,衡平の見地に照らし,借地借家法三二条一項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合に,重要な事情として十分に考慮されるべきである。

 以上により,第一審被告は,借地借家法三二条一項の規定により,本件賃貸部分の賃料の減額を求めることができる。そして,上記のとおり,この減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,本件契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情,とりわけ,当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無,程度等),第一審被告の転貸事業における収支予測にかかわる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等),第一審原告の敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも十分に考慮すべきである。

  (2) 以上によれば,本件契約への借地借家法三二条一項の規定の適用を極めて制限的に解し,第一審原告の主位的請求の一部を認容し,第一審被告の反訴請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中第一審被告敗訴部分は破棄を免れない。そして,第一審被告の賃料減額請求の当否等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき,本件を原審に差し戻すこととする。

第3 平成一二年(受)第五七四号上告代理人升永英俊,同松添聖史の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

 本件契約に借地借家法三二条一項の規定が適用されることは,前記第2の2において説示したとおりであるから,論旨は採用することができない。しかしながら,前記のとおり,上記規定に基づく減額請求の当否等について審理しないまま第一審原告の主位的請求の一部を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから,原判決中第一審原告敗訴部分は破棄を免れない。そして,第一審被告の賃料減額請求の当否等について更に審理を尽くさせるため,上記部分についても,本件を原審に差し戻すこととする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官藤田宙靖の補足意見がある。

 裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりである。

 私は,法廷意見に賛成するものであるが,本件契約につき借地借家法三二条が適用されるとする理由につき,若干の補足をしておきたい。

 本件契約のようないわゆるサブリース契約については,これまで,当事者間における合意の内容,すなわち締結された契約の法的内容はどのようなものであったかという,意思解釈上の問題がしばしば争われており,本件においても同様である。そして,その際,サブリース契約については借地借家法三二条の適用はないと主張する見解(以下「否定説」という。本件における第一審原告の主張)は,おおむね,両当事者間に残されている契約書上の「賃貸借契約」との表示は単に形式的・表面的なものであるにすぎず,両当事者間における合意の内容は,単なる建物賃貸借契約にとどまるものではない旨を強調する。

 しかし,当事者間における契約上の合意の内容について争いがあるとき,これを判断するに際し採られるべき手順は,何よりもまず,契約書として残された文書が存在するか,存在する場合にはその記載内容は何かを確認することであり,その際,まずは契約書の文言が手掛りとなるべきものであることは,疑いを入れないところである。本件の場合,明確に残されているのは,「賃貸借契約書」と称する契約文書であり,そこに盛られた契約条項にも,通常の建物賃貸借契約の場合と取り立てて性格を異にするものは無い。そうであるとすれば,まずは,ここでの契約は通常の(典型契約としての)建物賃貸借契約であると推認するところから出発すべきであるのであって,そうでないとするならば,何故に,どこが(法的に)異なるのかについて,明確な説明がされるのでなければならない。

 この点,否定説は,いわゆるサブリース契約は,①典型契約としての賃貸借契約ではなく,「不動産賃貸権あるいは経営権を委譲して共同事業を営む無名契約」である,あるいは,②「ビルの所有権及び不動産管理のノウハウを基礎として共同事業を営む旨を約する無名契約」と解すべきである,等々の理論構成を試みるが,そこで挙げられているサブリース契約の特殊性なるものは,いずれも,①契約を締結するに当たっての経済的動機等,同契約を締結するに至る背景の説明にとどまり,必ずしも充分な法的説明とはいえないものであるか,あるいは,②同契約の性質を建物賃貸借契約(ないし,建物賃貸借契約をその一部に含んだ複合契約)であるとみても,そのことと両立し得る事柄であって,出発点としての上記の推認を覆し得るものではない。

 もっとも,否定説の背景には,サブリース契約に借地借家法三二条を適用したのでは,当事者間に実質的公平を保つことができないとの危惧があることが見て取れる。しかし,上記の契約締結の背景における個々的事情により,実際に不公平が生じ,建物の賃貸人に何らかの救済を与える必要が認められるとしても,それに対処する道は,否定説を採る以外に無いわけではないのであって,法廷意見が,借地借家法三二条一項による賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額の判断に当たり賃料額決定の要素とされた事情等を十分考慮すべき旨を判示していることからも明らかなように,民法及び借地借家法によって形成されている賃貸借契約の法システムの中においても,しかるべき解決法を見いだすことが十分にできるのである。そして,さらに,事案によっては,借地借家法の枠外での民法の一般法理,すなわち,信義誠実の原則あるいは不法行為法等々の適用を,個別的に考えて行く可能性も残されている。

 いずれにせよ,否定説によらずとも,実質的公平を実現するための法的可能性は,上記のとおり,現行法上様々に残されているのであって,むしろ,個々の事案に応じた賃貸借契約の法システムの中での解決法や,その他の上記可能性を様々に活用することが可能であることを考慮するならば,一口にサブリース契約といっても,その内容や締結に至る背景が様々に異なり,また,その契約内容も必ずしも一律であるとはいえない契約を,いまだ必ずしもその法的な意味につき精密な理論構成が確立しているようには思えない一種の無名契約等として,通常の賃貸借契約とは異なるカテゴリーに当てはめるよりも,法廷意見のような考え方に立つ方が,一方で,法的安定性の要請に沿うものであるともに,他方で,より柔軟かつ合理的な問題の処理を可能にする道であると考える。