第三回目 やさしい手形・小切手のお話

                         営業 秘書 田村 司
いつもお読み頂き有難うございます。
前回は「手形が使われる理由と注意(手形の流れ)について」説明いたしました。
第三回目の今回は,「法律(手形法・小切手法,他)と契約(当座勘定規定,他)」の関係が実務にどのように影響(効果)を及ぼしているのかという観点から説明致します。

1,手形法・小切手法 と 当座勘定規定・手形交換所規則との関係について
       イメージ図

2,大別すると,①法律と②契約と③その効果の3つに分けて考える必要があります。
⑴ 用紙について
① 法律上・・・手形用紙・小切手用紙については法律では規定はありません。
そのために,どのような用紙で書いても手形要件,小切手要件を満たすものは,手形・小切手(有価証券)としての法律の効力が発生します。
銀行の発行する統一手形用紙になる前は,手形用紙や小切手用紙は文具店で市販されていました。銀行に入ったときに数年前の伝票を見ましたら,市販の手形用紙と小切手用紙が使われていました(縦書き,今は横書き)。
② 契約(実務)上・・・昭和39年の東京オリンピック後に大量の不渡手形が発生して,経済混乱が起きました。その経済混乱を治めるために,昭和41年7月1日から統一手形用紙制度が全面実施されました。そして,手形交換所規則,当座勘定規則,手形用法,小切手用法,統一手形用紙が利用されるようになりました。
③ 効果・・・「支払場所が決済銀行となる市販の用紙で振出された手形」は用紙相違として不渡になる規則になりました。法的に有効な手形を振出しても,支払決済はしないのです。
結果として,統一手形用紙でない手形は淘汰されて市販手形は流通しなくなったのです。

⑵ 振出人,引受人について
① 法律上・・・手形交換所規則,当座勘定規則に従わない振出も手形要件を満たすものは,法律上有効なものとなります。
記名捺印については,実印であろうが,認め印であろうが規制はありません。
法律上,有効になります。(ただし,真偽の争いの原因にもなります。)
② 契約(実務)上・・・加盟金融機関すべてがその規則に拘束されています(自由契約)。手形交換所規則,当座勘定規則により,振出人や引受人が規則に従う約束になっています。
③ 効果・・・その規則に従わない手形・小切手は「不渡り」になります。
銀行に決済用の口座を開設し,届出印でないと決済しないのです。
「口座がない」,「届出印でない」と「不渡り」になります。
「不渡り」とは,「支払い拒絶される」ことをいいます。
⑶ 受取人又は裏書人について
① 法律上・・・銀行との契約で拘束されていないので,手形法・小切手法に定められた規定によって権利を主張できることになります。
(裏書による資格授与的効果,権利移転的効果)
適法と推定される所持人(受取人・裏書連続のある手形所持人)からの呈示があった場合は振出人・引受人は支払いに応じなければならないのです。
適法な支払いのための呈示がなされたのに,支払い拒絶された所持人は裏書人に対して遡求権を行使できることになります。

② 契約(実務)上・・・受取人や裏書人,所持人は契約の当事者ではないので,法律で判断しなければなりません。
支払委託を受けた金融機関は当然支払いに応じることになります。

③ 効果・・・・適法な支払いのための呈示がなされたら支払われます。法律の規定通りに取扱となります。
適法な支払いのための呈示がなされたのに,支払い拒絶された場合は振出人や引受人にたいしての処分があります。
「不渡手形」を6ヶ月間で2回だすと,の振出人・引受人へは取引停止処分がなされます(2年間)。
手形交換所規則は,この規則により,手形・小切手の簡易,円滑な取立を可能にし,あわせて信用取引の秩序維持を図ることを目的にしています。
金融機関は不渡異議申立「預託金」を預かって2年間以内での決着を待ちます。
そして,不渡異議申立「提供金」は金融機関が手形交換所に提出するものです。

*預託金(よたくきん)は,供託金(きょうたくきん)と発音が似ているので勘違いされる方がおりますがご注意ください。

3,金融機関の義務については善管義務が課せられます。
金融機関は当座勘定契約で振出人からの委任契約(支払委託)を受けていますので「善良なる管理者としての注意義務」は当然課せられています。詳細については省略します(手形法40条③)。

4,手形振出の法的解釈論はについては,交付契約説,創造説,発行説(純正発行説・修正発行説)などの考え方があります。交付契約説或いは発行説に権利外観説を結びつけるのが多数説のようであります。もっとお知りになりたい方は専門書でご確認ください。

5,特殊な手形について(要注意事項)ご説明いたします。
融通手形には,空手形(馴合手形),書合い手形,見せ手形,前渡手形などがあり,
他人に自己の信用を利用させて金融を得させる目的で振出されるもので,現実の商取引の裏付けがないものです。
金融機関はこのような手形は回避しています。

オレンジ法律事務所は,埼玉県内では知的財産に強みを持ち,企業法務の予防法務として,法律相談にも力をいれて,法人の顧問契約も推進しています。
上記の知的財産以外に「債務整理,破産事件」の取扱実績のある辻本弁護士がおります。企業法務や,手形上の法的対立関係(支払請求)でお悩みの場合はぜひご相談ください。

次回の第四回目は「実務上の『異例な事例・事態』の注意すべきこと」について説明します。

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